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魔力昇華


チラリと脳内でステータスを確認する。

 Dランクなのは変わらずだが、神気解放により全体的にステータスが伸び、魔法に常時魔物や悪魔に対し有利に働く神属性の付与、さらに新しく器の権能『魔力昇華』が使えるようになっている。


「くそっ、行け!あいつを殺せ!」


 フロウアが一緒に連れてきたAランクのヒューデットに命令する。


「アァァァァッッ!」


 ヒューデットは威圧するように叫び、大剣を担ぎ巨体を揺らしながらこっちに向かって走ってくる。見た目も体格もえげつないため軽く恐怖心に心が負けそうになるが、それを押しのけ『魔力昇華』を使用しながら詠唱を開始する。


『魔力昇華』は魔法の消費魔力量の制限を無くす権能みたいだ。多めに魔力を込め、魔法の効果を高めるという方法もたまにとっていたが、あまりにも込める魔力量を多くしすぎると制御不能となり逆に暴発する。そのため、魔力量を調整しないといけなかったが『魔力昇華』があれば――


「〈集いし魔力よ〉!」


 現在の俺の魔力量B++の半分を魔法攻撃力の上昇に注ぎ込み『マジックショット』を放った。


 ドゥバンッ!という『マジックショット』を撃ったとは思えないえげつない音を鳴らしながら、ヒューデット目掛けて『マジックショット』が飛んでいき……恐らく急所である心臓に直撃した。


「ァァッッ!?」


『マジックショット』を受けたヒューデットはあまりの衝撃にその巨体を持ってしても数メートルほど後ろに吹き飛ばされ、痛みを感じるのか絶叫した。


「馬鹿な……これが神の使徒の力なのかっ!?お、俺は逃げるぞ!ヒューデットあとは任せる!」


それを見てありえないものを見たかのようにフロウアは驚愕し、魔石のような物を手に持ちそれを砕くと、まるでテレポートでもしたかのようにどこかへと消えていった。


「くそっ、逃がしたか!」 

 

「アァァァァッ!!」


 悔しいが、心のどこかで安堵している自分がいた。

 だが、消えた主の命令をこなすべく攻撃を受けたヒューデットは体制を立て直し、目の中の青い炎が大きく揺らいだ。


「っ、〈守りし水膜よ〉!」


 それを見た途端俺は僅かに魔力を残し、それ以外の体内に残っている魔力を全て使用し『ウォーターフィルム』を発動する。


「アァァァァッッ!!」


「ぐっ……ヒューデットが戦技を使う……だと!」


 アイオンが使っていた戦技『ダッシュストライク』を使用し、走りながらヒューデットは大剣の先を俺に突き刺そうとしてきた。Aランク上位の力があるとフロウアは言っていたが、どうやら本当らしく俺のほぼ半分の魔力を使用して作り出した『ウォーターフィルム』でぎりぎり耐えられるほどだ。


「グゥッ!アァァァァッ!!」


 ぎりぎりで耐えている『ウォーターフィルム』を突き破ろうと、更にヒューデットは力を込め『ウォーターフィルム』が破られそうになる。


「〈輝け光よ〉!」

 

 このままでは押し切られると思い、俺は腰袋から上級魔石を取り出して砕き、ほぼ回復した魔力を使用し、至近距離で『魔力昇華』を使用せずに『フラッシュアウト』を発動させる。


「ッ!」


「もらった、〈集いし魔力よ〉!」

 

 至近距離の急な光に僅かにヒューデットは怯むが、その僅かな時間を利用し、『ウォーターフィルム』を解除し、体を横にずらして『ダッシュストライク』を回避する。

 俺がいなくなったことで急に前に倒れ込む形に体制を崩したヒューデットの後頭部に一撃で決めるため、90%以上の魔力を込めた『魔力昇華』で攻撃力を底上げした『マジックショット』を放つ。

 魔石の使用で攻撃力が下がっているとはいえ、さっきよりも遥かに攻撃力がある。


「アアァァァァッ!!」


「嘘だろ!?」


 だがそんな不安定な態勢でヒューデットは左足に力を込め、体をほんの少し左にずらし『マジックショット』を紙一重で避ける。地面に向かって放たれた『マジックショット』はその場で大きな衝撃を起こし、俺とヒューデットは数mほど吹き飛んだ。


「いっ……てぇ……」


 地面に叩きつけられ、衝撃で脳が揺さぶられる。

 

「くそっ……まさか……避けるなんて!」


 一気に魔力を消費しすぎたせいで神気解放中とはいえ、倦怠感が身体中を覆う。


「アアァァァァッッ!」


「ッ……!!」

 

 ヒューデットも俺と同じく吹き飛ばされたはずだが、魔力低下による倦怠感がある俺とは違い、スムーズに動けるヒューデットは目の中の炎を大きく揺らし、再び『ダッシュストライク』を使用しながら大剣を突き出してきた。


「〈守りし水膜よ〉!……げほっ!?」


 咄嗟に『ウォーターフィルム』の詠唱をするが、地面に叩きつけられた時に脳が揺らされ魔法の構成に集中出来ず、いつもよりも歪で不完全なものとなってしまい、『魔力昇華』すら使用していない『ウォーターフィルム』はあっさりと破れ、よりにもよってロングコートで防御できていない腹に大剣が突き刺さる。


「ァァッ!」


 そしてヒューデットは俺が突き刺さったままの大剣を空に掲げ、大剣を大きく振って突き刺さっていた俺は大量の血を撒き散らしながら地面に投げ出される。


「……っ」

 

 腹に大穴が空いて悲鳴をあげることすら叶わず、受け身も取れないまま地面に衝突する。激痛で意識が薄れる中、さらに力がなくなっていくのを感じる。

 ヒューデットが俺の数mほど前でしゃがみこみ何かを指先につまむ。


(器の欠片が排出された!)


 神気解放時に大ダメージを受けると、ランダムで欠片が体から排出することがある。まさかそれが今起こるなんて……。しかもリーフを助けるのに絶対に必要な『マジックシェア』の効果が入っている欠片が奪われるとは。


「ぐっ……ぅ」


 大量出血と激痛で意識が飛びそうになるのを堪えながら、腰袋にある上級ポーションに手を伸ばす。しかし、手は思うように素早く動かせず、さらに俺に追撃しようとこっちに向かってくるヒューデットに焦りながら上級ポーションを必死に掴み、腹に振りかけた。


 焦っていたせいか、上級ポーションは半分ほどは傷にかかったが、半分ほどは地面に吸われてしまった。だが、さすがは上級ポーションと言うべきか、痛みが引いていくのが早く、数秒でなんとか動けるまで回復した。


「アァァァァッ!」


 ヒューデットが俺に向かって拳を振り下ろす。

 動けるまで回復した俺はぐるりと一回転してヒューデットの拳を回避し、ヒューデットの拳は地面に突き刺さった。

 その隙に上級ポーションを1本飲み干し、さらに回復する。


「アアァァッ!?」


「なんだ!?」


 地面に突き刺さった拳をヒューデットは焦ったように引っこ抜いた。その拳を見ると、ジューと音を立ててまるで火傷したかのように皮膚が焼けていた。


「まさか……ポーションのせい?」


 ヒューデットが拳を振り下した地面はさっきポーションをこぼした場所だ。

 

 (ラノベやゲーム等ではアンデットは回復魔法やポーションに弱い場合がある。……もしかして)


「〈安らぎ与えよ〉!」


 僅かに魔力を残し、残った魔力全部をヒューデットに向けて放つ。


「アァァァ!?」


「やっぱり効いてる!」


 『ヒール』を発動しそれを受けたヒューデットは苦しそうに悶えた。


「ちょっと勿体ないけど……仕方ない。くらえっ!

 そして『有は無に(マジックチェンジ)』、〈魔を穿つ剣よ・光を纏え〉!」


 ヒューデットが隙を見せている今がチャンスと思い、上級魔石を1つ砕き、上級ポーションをヒューデット目掛けて投げつける。さらに『有は無に(マジックチェンジ)』で無属性を光属性に変更し、『魔力昇華』で半分程の魔力を注ぎ込み、『ライトソード』でヒューデットが器の欠片を持っている方の手を狙い、『ライトソード』を振り抜いた。


「アァァァァッッ!!」


 ヒューデットの右腕から先が切断され、その際に飛んできた器の欠片をキャッチする。


「よし!これでまだ互角にたたか……ぇ……る?」


 器の欠片をキャッチし、再び砕こうとすると神気解放時の防具が紫色の粒子へと変化し、俺の目の前で元の形へと戻り、俺の体内に戻っていった。その瞬間、ガクッと力が抜け、体が重くなり神気解放の制限時間が経ったことを理解した。


「まだ4分30秒経ってないはずなのに……いや、途中で1つ奪われたから制限時間が3分になったのか!?くっ……」


 最初の計画では最初の神気解放でヒューデットを倒し、2回目の神気解放でリーフに魔力を渡す。そういう計画を練っていたが、ヒューデットはかなりダメージを与えられているとはいえ倒しきれていない。

 とりあえず今取り返した『マジックシェア』の器の欠片を砕き、脳裏にステータスを映し出す。


ユウキ・ツキモト (17)

魔法使い 得意属性【無】


魔法攻撃力 F

魔法防御力 F

魔法回復力 F-

魔法制御力 F++

魔力回復速度 F

魔力量 E-


Fランク


スキル欄(2)

詠唱省略(小)

デュアルアクション


 

EXスキル

無の加護(真・無属性)


器の欠片(3)

器の加護

マジックシェア

魔力昇華


「やっぱり下がってるか……!」


 神気解放は1回使用すると6時間の間ステータスが半減する。そして2回目使用すると3日間ステータスが5分の1となり、連続して3回使用すると死亡する。

 次に神気解放をしたら3日間ステータスが5分の1となるが……。


「アァァァァッ!」


 右腕を抑えながらヒューデットは吠え、落とした大剣を持って斬りかかってくる。


「くっ……危なっ!」


「アァァァァッッッ!!?」

 

 片腕を失ったからか、ヒューデットの剣がかなり大振りになり、重たい体を動かし回避に意識を集中すると俺の頭を叩き割るところだった大剣をギリギリで回避することが出来た。大振りのため剣を振った直後のヒューデットの顔面に上級ポーションを投げつけると、再び肉を焼くような音を立てヒューデットの顔面がめちゃくちゃになっていた。さらに、青い炎を宿した眼球にもポーションがかかったのか、右目が蒸発し絶叫する。


「今だ……来い、器!」


 隙を見つけ再び器の欠片を呼び出す。ステータスが低下してるため、『魔力昇華』と神気解放による魔法への神属性の付与の効果がなければ対抗できない。制限時間は4分30秒。

 いや、リーフを助けるために4分以内で決着をつけなければいけない。


 手の平を目の前に差し出すと俺の周りを回っていた器の欠片が1つ手のひらに納まる。


「神気、解放っ!」


 器の欠片を握り潰して再度、神気解放を発動する。

 粒子となった器の欠片がまた装備品となって俺に纏い付く。

 

 神気解放でステータスは上昇するが、神気解放前のステータスが半減しているためさっきよりもステータスはかなり低くなっている。


「それでも、やるしかない!」


「アァァァァッ!」


 残った左の青い炎の目を揺らしながら、大剣を振り被るヒューデットに右手を突き出し、詠唱を開始した。

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