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ウェルメン


それから少し歩いてギルドの裏に着くと、巨大なゲイルホースを連れたギルドマスターがこっちに向かって歩いてきた。


「おぉ、やっと来たか。遅かったから迎えに行こうとしたところだ。」


「でっっかぁ……」


「どうだ凄いだろ俺の馬。」


 俺の視線がゲイルホースに注がれる。全体的に白で、頭やしっぽに生えている白色の毛にところどころ緑色が混じっている。


「名前はウェルメンと言うんだ。頭もいいから今回ツキモトをミラン村まで送っていくように言っているからちゃんと連れていってくれるだろう。」


「おう、ガローから聞いたぜ。なんでもガールフレンドを助けるために1人で化け物共が蔓延る死地に行こうとしてるみてぇじゃねえか。そんな男気を見せられたらこのウェルメンも協力するしかねぇじゃねぇか、へへっ!」


 渋い声でそう言わ…………ん?


「今喋ったのって誰だ?」


 ここにはギルドマスターとアイオンと俺しかいない。そして今聞こえた声はギルドマスターでもアイオンの声でもない。そしてもちろん俺でも無い。


「おいおい、俺だよ俺、目の前にいる俺だよ。」


 俺の目の前にはウェルメンしかいない。まさか馬が喋るわけが無いし……


「おい俺だって!」


 ぐいっと、俺の目の前にウェルメンが顔を伸ばしてきた。あれ、ウェルメンが喋る度に口が動いてる?


「…………まじ?」


「Yes」


「…………しゃ……」


「しゃ?」


「しゃべったぁぁぁぁ!?」


「あえて一番驚くであろう馬が喋るということを教えなかったが、やっぱり皆初見だといいリアクションをするな。」


「懐かしいな。冒険者として働いていた頃、皆いいリアクションをしてくれて楽しかったもんだ。」


 驚く俺を見てしみじみとアイオンとギルドマスターは満足気に頷いていた。


「おいおいアイオン、ガロー、俺が喋るってこと言ってないのかよ?」


「悪いなユウキ」


「あぁ、うん、もうなんか疲れた。まぁ疲れている暇なんてないが。」


「確かにそうだな。さっきも言った通りウェルメンにはあらかた事情は説明している。お前が危なくなった時は助けるようにも言っているから遠慮なく使ってやってくれ。一応こいつはSランクの魔獣でめっちゃ強いからな。」


「それは心強いな。」


 他のゲイルホースよりもでかいと言うだけで戦力にちょっと期待していたが予想以上だったようだ。


「さて、こいつは色々と人目を集めるから俺も街の外まで一緒に行きたいが、ギルドに戻らないといけない。アイオン、街の外まで一緒に行ってやってくれ。」


「もちろんだ。」


「助かる。ツキモト、無事に帰ってこいよ。」


 ウェルメンの手網を俺に渡しながら真剣な表情でギルドマスターはそう言って、ギルドの中へと戻って行った。


「俺達も行くか。こうしている間にもリーフが大変な目に遭ってるかもしれないしな。」


「そうだな。」


「兄ちゃん!」


 その場を去ろうとすると、物陰からリーエンを除いた、さっきまで一緒に行動していた子ども達が飛び出してきた。


「やっぱりリーフさんが大変なんでしょ!?俺達も戦うよ!」


「そうです、私達はツキモトさんと、クレインさんに命を助けてもらいました!今が恩返しする時です!」


 ドリバーが張り切った様子で言い、それに続いてリリィもこくりと頷き、ドリバーに同意する。

 その他の子達も2人に同意見なのか、自分達も戦うと言って、武器を握りしめている。


「おいおい、ガキ共これから行くところはやばいところなんだ。お前達が行ったらすぐに死んじまう。やめとけ。」


 子ども達を見たウェルメンが溜息をつき、同行を拒否させようと口を開く。


「馬が……喋った!?」


 口を開いたウェルメンに子ども達はびっくりするも、表情を引締め直してさらに口を開く。

 

「でも、俺達――」


「皆、今回は俺1人で行かせてくれ。」


 子ども達に俺が割って入る。


「に、兄ちゃん……でもいくら兄ちゃんでも1人だと危ないよ。」

 

「大丈夫だ、別に戦いに行くってわけじゃない。リーフを見つけたら回収して離脱するってだけだ。これは逆に人数が多ければ多いほどやりずらくなるんだ。」


「うっ……」


 それを聞いたリリィが悔しげに拳を握る。


「皆の気持ちは嬉しい。だけど俺やリーフのことを思ってくれるのなら、今回は引いてくれ。この前の借りはまた今度なんらかの形で返してくれればいい。」


 別に助けた借りなんていらないのだが皆は納得しないだろう。あえてそういうことで、皆は渋々了承する。


「分かった、兄ちゃん頑張ってね!」

 

 ドリバーの応援に手網を握った手に力が入る。俺は装備品を確認し、こくりと頷き、アイオンとウェルメンと共に街の外まで歩き出した。





「俺はここまでだな。本当に俺も行かなくて大丈夫か?」


 街の中でウェルメンを連れ歩いていると、町中の人から見られたがアイオンがいたおかげで野次馬達に絡まれず、スムーズに外まで来ることが出来た。


「あぁ。それにもし俺がやられてビギシティにヒューデットが侵攻してきた時、アイオンは必要だろ?」


「それはそうだが……お前がそう言うなら仕方ないな。ただ、絶対に帰ってこいよ……リーフと一緒に。あの子達もそう願ってる。」


「もちろんだ、必ずリーフと共に帰ってくるさ。」


 アイオンの差し出した拳に俺も拳を当て、アイオンは満足気に頷き、背を向け街へと帰って行った。


「さて、俺達も行こうぜ。ほれ、乗るといい。」


 ウェルメンが足を折り畳み、俺は鞍に乗る。


「やばい、高い、怖い」


流石に3mもあるウェルメンに乗ると、地面が遠くなったかのように感じ、恐怖を感じる。


「ここまで来て何言ってやがる。行くぞ!」


 勢いをつけるため、前足を上げてとんでもないスピードで走り出す。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?……ん?」


 走り出すと同時に絶叫するが、衝撃が全く来ない。


「ゲイルホースはEXスキルの風の友を持ってる。これがあれば、風の抵抗を受けずに逆に風を利用して加速することができるんだよ。」


 こっちを見ずに正面を向いて走りながらウェルメンがそう口にする。


「な、なるほど……」


「だが、ちゃんと手網は握っておくといいぞ。吹っ飛んでいっちまうこともあるからな。」


 その言葉を受け俺は青ざめながら手網を強く握り直した。





「あ……グレイウルフ……」


 街から離れて3時間ほどだっただろうか。ウェルメンはとんでもないスピードと底なしの体力で一度も休憩せずに走り続けてくれた。ウェルメンによるとあと3時間もあればミラン村に着くとのことだ。

道中ゴブリン達と接触し、襲いかかろうとしてきたがウェルメンが速すぎて追いつけず戦闘にすらならなかったが、今回は数十メートル先のウェルメンの進行方向にグレイウルフが3体おり、俺達に気づいて歯を剥き出しにし唸っている。


「うるっせぇわ、犬カス共!」


「わーお」


 流石Sランクと言うべきか微塵も億さず、その足でグレイウルフ3体をまとめて蹴飛ばし、一瞬で死体に変えた。


「ウェルメンって強いんだな。」


「ふっ、なに当然の事言ってんだ?」


 素直に感想を伝えたところ、鼻で笑われてしまった。


「さぁ、もう折り返しだ。このまま突っ走るぜ!」





「ウェルメン、ヒューデットだ!」


 それから2時間以上走り、ウェルメンによるともうすぐミラン村に到着すると言われ、心の準備をしていると道中にヒューデットを発見した。


「あれがヒューデットか?気持ちわりぃな!ふんっ!」


 そう言ってウェルメンが首を軽く振ると、風を操りまるでディスクのような薄い円状にし、ヒューデットに向かって放つ。


「ガァ!?」


 ヒューデットが叫び声をあげるが、既に首と胴体が離れ離れになり息絶えた。


「一撃かよ。」


「おうよ、風属性魔法なら上級魔法まで無詠唱で出来るからこの程度なら大丈夫だが、流石に大勢に囲まれるとめんどくなりそうだな。」


「無詠唱なんて凄いな。どうやったらできるようになるんだ?」


「魔法制御力を上げてみろ。そしたらいつかできるはずだ。……と、着いたぜ。」

 

 ウェルメンが立ち止まり正面を見る。俺も見てみると、門は盛大に壊されており、村の中からはヒューデット達の唸り声が聞こえてくる。


「結構な数いそうだな。覚悟は出来てるか?」


「そんなものとっくに出来てる。」


 覚悟を問うてくるウェルメンに当たり前の返しをすると、ウェルメンは軽く笑った。


「OKだ!それじゃ、突撃するぞ!」










 今回使用した魔法

 エアスピン 上級風属性魔法(27)

魔法攻撃力 C+(24)

魔法制御力 B+ (29)

消費魔力量 C(23)

射程 B(28)

魔法発動速度 A-(32)

詠唱

回れ風・鋭く・速く・円となり・阻む敵を切り刻め

説明

風を操り、鋭利な薄い円状に変形させ、敵に放つ。

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