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ミラン村の情報


――10時間前――


 ミラン村が襲撃された?

 目の前を冒険者が通り過ぎる際に確かにそう言った。


「リーフが危ない!」


 ギルドの扉へ向かってかけ出そうとすると、アイオンが俺の腕を掴み、それを阻止する。


「アイオン!?」


「ユウキ、お前の気持ちは分かるが、まずはガローのところに行こう。何があったか情報を得ないと行けないだろ?」


 アイオンの言葉にハッとする。


「あ、あぁそうだな。すまない、頭が真っ白になってつい」


「気持ちは分かる。とりあえずガローに聞かないとな。情報はあいつの元に集まっているはずだ。ちょっといいか?ガローはいるか?」


「――っ、はいガローギルドマスターは今部屋にいます。アイオン様が帰還した際、ギルドマスターの部屋に呼んでくれと言われています。……それと、ツキモト様もお呼びになっています。」

 

 アイオンは近くにいたギルド職員に話しかけた。声をかけられたギルド職員はアイオンを見て僅かに目を見開き、そう言った。


「確実にヒューデットのことだよな。よし、ドリバー達は先にクエストを達成したことを受付で報告しておけ。リーエンもクエスト達成を報告したあと母親に顔を出してくるといい。ユウキは俺と一緒に来るだろ?」


「あぁ、もちろん」


「兄ちゃんがさっき言ってたリーフって人、この間俺達を助けてくれた人……だよね?なにかあったの?」


 ギルド職員とアイオンと一緒にギルドマスターの部屋に向かおうとすると、ドリバーが俺を見ながら確認するように言ってきた。


「リーフはミラン村に住んでるんだ。この前までこの街に滞在していたが、3日前にミラン村に戻るためにこの街を出たんだ。」


「えっ、じゃあ……」


「……生きてる、あいつもヒューデットを何度も倒してきた。……だから、大丈夫。」


「う、うん」


「ユウキさん今回はありがとうございました。このお礼はいつか必ず。」


「あぁ……」

 

 俺がそう言うと、ドリバー達は首を縦に振ってそれ以上は何も言わず、ドリバー達は受付の方に向かっていった。

それを見送ったあと、リーエンが俺に礼を言いこの場を去ったが、さっきの衝撃が頭に残って上手く返事が出来なかった。

 

「ユウキ……流石に怖がらせすぎだ。ドリバー達が怖がっていただろ。」


「怖がってたって、え?なんで?」


「え?」


「え?」


 俺とアイオンの間に沈黙が流れる。


「ユウキが必死すぎて顔がすごいことになってたぞ。それでドリバー達は怖がってたんだ。」


「えっ、マジか。必死になりすぎて、年下を怖がらせるとは……」


「ま、まぁさっきも言ったが気持ちは分かるから……ほら行くぞ!」


 謎に精神にダメージを受けている俺の腕を引っ張りながらアイオンとギルドマスターの部屋に向かった。





「アイオン、無事だったんだな。それにツキモトも。とりあえずソファにでも座ってくれ。」 


 扉を開けると、ギルドマスターが机の上に数枚の紙を広げていた。


「あぁ、昨日は戻れなくてすまなかったな。ちょっとしくじっちまってな。途中でユウキと会って助けてもらったんだ。」


 アイオンがそう言いながらソファに座る。俺もそれに続くようにソファに腰を下ろす。

 

「お前がしくじるとは珍しいな。……ヒューデットが出たか?」


「あぁ、それも大量にな。ユウキの手を借りてなんとか倒したらしいが俺は気絶してしまった。」


「そうか……お前までも苦戦する……か。そのヒューデットに関係があるんだ。お前を呼び出したのは。」

 

 机の上で手を組みギルドマスターは姿勢を正した。


「アイオンとツキモトは同じ日にクエストに出たな?それと同じく2日前、Cランク以上で構成した調査隊を作り、ゲイルホースで辺りの村を調べるように伝えた。そのうちの1人はテイマーで、なおかつ鳥型の魔獣を使役し、魔獣と視覚を共有することが出来る。」


「なるほどな、だからこんな早く調査が完了したってことか。」


 ギルドマスターの説明に納得したようにアイオンが頷く。


「つい数時間前に状況を報告してもらったが……それで辺りの村を調査した結果、全ての村が蹂躙され、建物は壊され、死体が転がっていたのを見たらしい。」


「……くそっ」


 アイオンが拳を握り締め、俯きながら小さく呟いた。

 その様子を見たギルドマスターは一旦口を閉じる。

 重苦しい空気が部屋を満たす。

 でも俺はギルドマスターにどうしても聞きたいことがある。重苦しい空気の中、俺は口を開いた。


「ギ、ギルドマスター、その死体の中に……リーフの姿は、な、なかったか?3日前にここを去って……ミラン村に帰ったんだ。」


 もしも死体として見つかっていたら、そう考えると緊張で体がこわばり、口の中が乾燥して上手く喋ることが出来なかった。……他所から見たら滑稽な姿をしているんだろうな。


「……あぁ、そのことでツキモトは呼び出したんだ。

 リーフ・クレインの姿は確認されている。」


 ギルドマスターは俺を見てそう言い放った。


「……嘘……だ」


「早とちりはいけないぞツキモト。」


 ギルドマスターの言葉に絶望した俺に、再びギルドマスターが声をかける。


「え?」


「リーフ・クレインは生きている状態で目撃されている。」


「い、生きている……のか……よかった」


 その言葉を聞いて全身から力が抜け、安堵の息が思わずこぼれる。心なしか隣にいるアイオンも少しだけほっとしているようだ。


「この街にミランの品物を持ってきた2人の男達も一緒に目撃されている。だが……」


 そこまで言ってギルドマスターの表情が険しくなる。


「目撃されたのはミラン村の入口付近だ。そして魔獣を使って見つけたが、調査隊の者達はその3人と離れたところにいたため、ミラン村の現状を伝えられず村の中に入ってしまった。」


「じゃあ、やっぱり無事じゃないんじゃ……」


「いや、魔獣がその後空からヒューデット達と接触した後の3人を見ていたが、なんとか無事だ。昔、魔物に襲われた時ように用意されていた洞窟の中に入っていた。だが、分かっているのはそこまでだ。調査隊も俺に報告しなければならなかったからそこで撤退した。洞窟に入ったのを見たのは昨日の夕方過ぎらしい。」


「アレンとリーパーも無事か。だけど、それが本当ならかなり時間が経過してるんじゃ……やっぱり助けに行かないと!」


「まて、ツキモト。ミラン村にいたヒューデット、その数は100を超える。」


 ソファから立ち上がる俺をギルドマスターが止めて、そんなことを言った。


「あ、あのヒューデットが100を超えてる……だと?」


 目を見開きアイオンは頭を抱える。何度もヒューデットと戦ってきたアイオンは分かっているのだろう。あのヒューデットが100を超えるというのがどれだけやばいということなのか。

 そして俺も。


「でも、洞窟なんかに立て篭もったとこで外に出たら終わりだ。洞窟内にいたとしても餓死するに決まってる。」


「だが……ユウキ、これはもう俺達で対応出来るような問題じゃない!」


 流石に無理だと思ったのか、アイオンまでもが俺を止めにかかる。


「アイオンの言う通りだ。先程手紙を王都の方へと届けた。数日すれば王都から兵が来て対処するだろう。これは国が動かなければ解決できない事態だ。そして、ギルドマスターとしてそんな死ぬことが確定している場所に冒険者を送り出すことは出来ない。我々が今できるのはこの街が襲われないよう、守りを固めておくことしかないんだ。」


「リーフを……見捨てろってことかよ!」

 

「クレイン達が無事であることを祈るしかないんだ。」


 目を伏せそう言ったギルドマスターに怒りを覚え、ギルドマスターの襟を掴む。


「無理に決まってるだろ、数体いるだけで相当な脅威のヒューデットが100体もいて、たった3人で生き残れるわけない!」


「あぁ、そうだ。そしてお前1人行ったところで覆る問題でもないんだ!」


「くっ……」


 確かに俺1人が加勢に行ったところで何の解決にもならないだろう。1、2体程度なら一度に相手できるが、100なんていう馬鹿げた数を相手にしたら一瞬で死ぬ。


 ……いや待て、ヒューデット相手に使ったことは無いが、もしもべシールから貰った力、神気解放を使用したら流石に全てのヒューデットを倒すことは出来なくても、リーフ達を助けて逃げるくらいはできるんじゃないか?

 

「確かにそうかもしれない。でも、俺には1つ切り札があるんだ。もしそれを使ったらヒューデットを全て倒すことは出来なくても、リーフ達を逃がすことは出来るかもしれない。」


「切り札?」

 

 目を細め胡散臭そうにギルドマスターは俺を見る。リーフを助けに行くための咄嗟についた嘘じゃないかと疑っている。

 べシールから自分が神の使徒であるということは、あまり人には言わない方がいいと言われている。


「あぁ、だが内容までは言う事は出来ない。その切り札を貰った人から他言無用だと言われてるからな。」


「……信用出来ないな。」 


「ちょっと待ってくれ」

 

 予想出来たことだが、ギルドマスターはあからさまに俺を疑っている。どうすればいい……そう思っていると、アイオンが俺の正面に立ち、俺の目を見つめる。


「ユウキ、その切り札っていうのは嘘じゃなく本当に使えるのか?」


「あぁ、そして切り札を使えば、ヒューデットもある程度なら倒せる。その力を使ってリーフ達を助けて、逃げることくらいなら大丈夫なはずだ。」


 神気解放、その力は数日前に確認済みだ。ステータスの上昇、器の権能の使用、神気解放時のみ装備可能な強力な装備……アレらがあれば、一度に20体程のヒューデット相手なら大丈夫だろう。しかも、昨日と一昨日のヒューデットとの戦闘で実験した時よりも俺のステータスは上がっている。

  

「なるほどな……ガロー、ユウキは嘘をついてない。」 


「どうして分かる?」


「ユウキの目は嘘を言っていない。そして、その切り札とやらに絶対の信頼を持っているのが分かった。俺はユウキに一度救われた。ガローはユウキを信じるほどの仲にはなっていないかもしれない。だが、一緒に戦ってきた俺なら信じることはできるだろ?ユウキを信じた俺を信じてくれ。頼む。」


 俺から目を離したアイオンは、ギルドマスターの目の前に立ち、言葉を言い終わって頭を下げる。


「……頭を下げるなんてよせ。はぁ、分かった。ユウキを信じるお前を信じるとしよう。ツキモトユウキ、ミラン村に行く許可を出す。」

 

「ありがとう。」


 ほっと息をつき、俺はギルドマスターに感謝の言葉を伝える。


「俺はアイオンを信じただけだ。礼ならアイオンに言うといい。」


「ありがとうアイオン。」


「俺にはこれくらいしかできることは無いしな。」


 軽く笑みを浮かべ、アイオンはそう言った。


「ところでツキモトはミラン村の場所を知っているのか?それと、ミラン村に行く手段はあるのか?」


「あ……」


 そういえば俺はミラン村の場所も行く手段もないのをすっかり失念していた。


「その様子だとそのことは頭から抜け落ちていたみたいだな。よほどクレインの事で頭がいっぱいだったようだな。」


「それなら俺が着いていこうか?場所は分かるし、馬も持っているぞ。」


「あー……」


「なるほどな、よほど切り札ってやつを見せたくないようだな。仕方ない、俺の馬を使うといい。」

 

 アイオンの提案に目を逸らすと、それを見てギルドマスターが納得し、別の提案をする。


「それはありがたいけど、俺馬に乗ったことないんだよな。」


「安心しろ、俺の馬は初心者でも乗ることが出来る。そしてミラン村に行ったこともあるから道も覚えているはずだ。……それでいつ向かうんだ?」


「できるのなら今すぐにでも行きたい。」


「分かった、だが魔石やポーションは大丈夫か?何があるか分からないから補充しておいた方がいいぞ。」


 俺の腰袋に入った魔石とポーションを見てギルドマスターは心配そうに言った。

 確かに中級魔石も中級ポーションも2つあるだけだ。補充しておいた方がいいだろう。


「それなら俺が買ってやろう。」


「それじゃ、装備を整えたらギルドの裏に来てくれ。そこに俺の馬はいるからな。」


 そう言って、一足先にギルドマスターは部屋から出ていった。


「さぁ、俺達も行こうか。」


「あぁ、だがいいのか?魔石もポーションもそれなりの値段するぞ?」


 俺達もギルドマスターの部屋から出て、ギルドの売店に向かう。その途中でアイオンにほんとにいいのかと俺は質問した。中級でどっちも8000ギルしたはずだ。

 だが大したことないとアイオンは言う。


「これでもBランクだからな。それなりに稼いでるんだ。もう家族もいないから使い道がなくて困ってるところだ。」


 ふっと、自傷気味にアイオンは笑った。


「いらっしゃい」


「おっちゃん、上級魔石と上級ポーションをそれぞれ5個ずつくれ。」


「はぁ!?」


「毎度、魔石とポーション合わせて12万ギルだよ!」


「たっか!?」


「ほい12万ギルだ。」


 驚愕する俺を置いて店主に財布から12万ギル取り出し、品物をアイオンは受けとり、そしてそれを俺に渡そうとする。


「そら、ユウキこれを持ってけ。持ってる中級魔石とポーションは『マジックポケット』にでも入れて、上級魔石とポーションはいつでも使用できるようにその腰袋に入れておくといい。」


「いや……だがな……」


 流石に12万ギルもするものをはいどうぞと渡されて、はいどうも、と受け取れるわけが無い。


「ユウキ、ミラン村はあのヒューデット達が大量にいるんだぞ?お前の切り札がどんなものか俺は知らないが、それでも用心するに越したことはない。」


 渋る俺にアイオンは真剣な眼差しでそう言って、品物を押し付ける。


「……分かった、ありがとう。」


 流石にそこまで言われて受け取らない訳にはいかないな。

 俺は元々腰袋に入れていた中級の魔石とポーションを『マジックポケット』を詠唱し、出現した袋の中に入れ、消えろと念じ、袋は消滅した。魔石とポーションは大した重さが無いため、最大魔力量も減少せずにそのままだ。


「さて、確かギルドの裏にギルドマスターはいるんだよな。行くか。」


「だな、それでユウキ?……ガローの馬なんだがちょっと変わっていてな、ゲイルホースは知ってるか?」


「いや知らない。」


「そうか、ゲイルホースってのは風を操ることが出来る小柄な馬なんだ。小柄故に体力は少ないが、風の抵抗を受けづらくさらに風属性魔法を使うことができるから、とてつもなく速く走ることが出来るのが特徴だな。で、だ、ガローの馬ってのはそのゲイルホースの変異種みたいでな、ゲイルホースと同じく風属性魔法を使うことができるんだが、変異種と言うこともあって通常のゲイルホースと色々と違ってるんだ。」


「へぇ、どこら辺が違ってるんだ?」


 少し気になりそう聞いてみる。


「まずゲイルホースは普通は小柄でデカくても体長は1.5mほどなんだが、ガローのゲイルホースは大柄なんだ。3mある。」


「はぁ!?」


 地球にいた馬の体長がだいたい通常のゲイルホースより少し大きいくらいだったはずだ。それの2倍?


「いや、え……デカすぎないか、俺乗れるのか?馬乗ったことないんだが?」


「大丈夫だ、図体がでかい分、脳みそもでかくて他のゲイルホースよりもよっぽど頭いいから、むしろガローの馬がお前が落ちないように気を使ってくれるはずだ。」


「そ、そうなのか……」


 一体どんな馬なのか、気になって仕方ないな。

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