ピンチと子ども達の活躍
「はぁ……はぁ……『ウェポンズブースト』!」
あれから3分ほど経ち、なんとか通常種のヒューデットを2体倒すことが出来たが、子供達やリーエンにヒューデットが行かないように、俺はアイオンの4mほど後ろからアイオンの援護、アイオンは前線でヒューデットの攻撃を受け止めながら、攻撃していた。
しかし、指揮官のヒューデットに強化されたからか、ヒューデット達の動きは早く、力も強くなっており、アイオンは何度か攻撃が被弾し、息を切らせていた。
俺も何度も『エリアハック』を使用した直後での戦闘で、相手が強化されているため、中級魔法を多めに使っているため、魔力があまりない。
「くそっ……〈赤き炎を纏いし火矢よ・刺し射抜け〉!
……っ!」
『ファイアアロー』を使用した直後、魔力がほとんど尽きたのか、倦怠感が体を包む。腰袋に入れていた中級魔石を2つ取り出し、迷わず魔力を魔石に流しながら、砕いて魔石に内包されていた魔力を吸収する。
(魔力はほぼ全回復したな。だが、これで魔法の効果と俺の魔法制御力が1段階下がってしまったが。)
ギリギリまで魔石を砕かなかったのは、そのためだ。しかし、もう魔力が無くなった以上は仕方ない。
「『ソードスラッシュ』!」
前方では『ウェポンズブースト』で大剣を強化したアイオンが筋力特化のヒューデットの胴体を斬った後、追撃で『ソードスラッシュ』で至近距離から斬撃を飛ばし、1体撃破する。
残るは、通常種1体、筋力2体、小柄1体、指揮官1体だ。
「グググ、ガガガガッ!!」
指揮官が杖を振り、ヒューデット達に一言二言、ヒューデット語?で怒ったように話す。
それを見たヒューデット達は、こくりと首を縦に振り、通常、筋力ヒューデットが1体ずつアイオンに襲いかかる。
「ちぃ……」
通常種の掴み攻撃を、大剣の腹の部分で防ぎ、筋力変異種の殴り攻撃をしゃがんで回避する。
攻撃は受けずに立ち回っていたが、しゃがんで次の行動が僅かに遅れた瞬間――
「ガァァァァっ!」
小柄変異種がその足の早さでアイオンの隙を見つけ、アイオンを突破する。
「なにっ!?」
アイオンが驚愕の表情で振り返る。
「「ガァァァ!!」」
「なっ……ぐっ……ッ!」
ヒューデットの声に反応し、アイオンは視線を元に戻すが、そこには拳を振りかぶった2体のヒューデットの姿があり、防ぐのも回避するのも間に合わず、胸と腹に攻撃を受け、跪く。
「アイオンっ!……くそっ、通さな――」
小柄変異種を先に行かせないように、魔法を発動しようとするが……
ドシャァァッン!
「危な……!?」
飛んできたものを見て、咄嗟に横に飛ぶ。
どこからか半分にへし折れた木が俺がいた場所に投げられ、地面に突き刺さっていた。
「ガァ……」
アイオンと通常種、筋力変異種1体の後ろに、半分にへし折られた木と、筋力変異種が1体……そして指揮官が立っていた。
筋力変異種が指揮官の指示の元、俺を殺すために木を投げろと指示したのだろう。
「っ……あの小柄のやつは!?」
俺が視線を戻すと、小柄変異種が5mほどジャンプし、子供達とリーエンに飛びかかる。
「みんな目を瞑れ!」
そう一言子供達とリーエンに叫ぶと、懐から閃光石を取り出して投げ、地面にあった小石を拾って閃光石に向かって投げる。
そして、地面に手をついて詠唱を開始する。
「ガァァァァッ!?」
小石が閃光石に直撃し、空中で閃光石が粉々になり、閃光が小柄変異種の目を焼く。
飛びかかっている最中だったため、勢いを失い、失速して地面に落ちる。
「ガッ……」
「何とか間に合った……」
小柄変異種は土で出来た、先端が鋭く尖った5本の針に刺さって絶命する。
小柄変異種が落ちてくるのを予想して、先に『アースニードル』の魔法を使って土を変化させたためだ。
真・無属性によって魔法攻撃力は下がっていたが、高いところからの落下により充分な攻撃力を確保し、真・無属性の効果で土属性の魔法発動速度が遅いというデメリットも無くなっていたため、魔法が間に合い、一撃で倒すことが出来た。
「皆大丈夫か?」
「はい、でもアイオンさんがっ!」
リーエンが俺の後ろを指差す。
「そうだ、アイオン!」
アイオンの方を見ると、今まさにヒューデットに殴り飛ばされていた。
アイオンは意識がないのか大した抵抗もできず、俺の隣まで音を立てて吹っ飛ばされる。
アイオンは全身傷だらけになっており、防具の一部がへこんでいる。
「ツキモトさん、前っ!」
リーエンの声で顔を上げると、残りの4体のヒューデット達が集まり、指揮官が杖を振り、3体のヒューデットを強化し、ヒューデット達が襲いかかってきた。
「「「ガァァァァァァッッ!!」」」
「〈我は力を求む〉!」
筋力変異種の拳をデュアルアクションを使って脚力を『パワーライズ』で強化し、飛んで回避し、後ろに回り込む。
「〈集いし魔力よ〉!」
再度デュアルアクションを使い、背中に『マジックショット』を放つ。
魔石を使った効果で魔法の効果が低下しているが、無防備な背中にデュアルアクションを撃ち込んだため、前方に倒れ込む。
追撃をしたいが、右側から筋力変異種、左からは通常種が掴みかかってきたため、強化された足でバックステップをし、木の上の方に着地し、そこから俺をいち早く追ってきた通常種の頭上へとジャンプする。
「〈風よ阻め〉〈魔を穿つ剣よ・光を纏え〉」
『ウィンドブロウ』で、一瞬怯ませ、動きを止めている間に『ライトソード』で光の剣を出現させ、落下しながら通常種の頭に突き刺す。
「ガァァァ!?」
流石に絶命しないまでも相当ダメージが入ったのか、穴の空いた頭を抑え、苦しそうにもがいている。
「やっぱりリーフみたいに一撃じゃ倒せないか。
〈我は力を求む〉、〈さらなる力を求む〉、『無は有に』!」
昨日魔法創造でつくりあげた『無は有に』を発動すると、手のひらに透明な結晶が出現する。俺が光属性を願うと結晶内の魔力がそれに反応し、結晶を白色に光らせる。
切り札は温存しておいた方がいいと思い、いままでは使用を躊躇っていたが、流石に1対4で、しかも子供達とリーエンを守りながら戦うのはキツすぎる。
しかも、魔石の効果もあり、充分な攻撃力を得られない。なら魔物に対して火属性よりも有効な光属性を選択する。
結晶を握り潰し、白の魔力を右手に宿し、詠唱を始める。動体視力を『パワーライズ』で強化した俺は、隙を伺い、高速で動き出し俺を狙ってくる小柄なヒューデットから狙いをつける。
「〈更なる魔力纏いて・爆ぜよ魔弾〉!」
『マジックチャージ』によって強化され、さらに光属性属性を纏ったことで白く輝く魔弾は弧を描き、俺に向かって蹴りを放とうとしていた小柄なヒューデットに直撃させ、一瞬で灰と化した。
「ガガッ!?」
「『マジックボム』?……でも、色が違う。」
まるで「なっ!?」と言わんばかりに驚愕に満ちた顔で指揮官のヒューデットは無意識に後ずさり、俺の後ろからはリリィから困惑の声が上がる。
「今だ……〈集いし魔力よ〉!」
今のうちに通常種に向かって大ダメージを受けていた通常種に向かってデュアルアクションを使用し、2発の『マジックショット』でとどめを刺し、あとは筋力特化と指揮官のヒューデット2体を残すのみとなった。
「ググッ……ガガァッ!!」
「ガガァッ!」
表情を歪めた指揮官はさっきのように咆哮し、あとは任せたとばかりに走り去ってしまった。追おうとしても筋力特化の方が赤いオーラを纏い、その巨体を揺らしながら俺を殺そうとこっちに向かって走って来て拳が俺に迫る。
「……っ!〈弾けよ雷 〉!」
「ガガガッ!?」
動体視力を強化していたことでヒューデットの拳を何とか見切り、カウンターで突き出された腕に向かって『スパークエッジ』を放ってほんの数秒だがヒューデットの片腕を麻痺させる。
「〈輝け光よ〉、〈集いし魔力よ〉!」
追撃とばかりに、至近距離で『フラッシュアウト』でヒューデットの視界を潰し、顔面に『マジックショット』を2発叩き込む。
「ガガッ!?」
怯んではいるが決定的なダメージは与えられていない。あと約20秒……再度『無は有に』を使うにはまだかかる。
「わ、私も加勢します!」
「ガァッ!」
「ひっ……」
「嘘だろ、〈守りし水膜よ〉!
がっ――」
麻痺させ視界を潰したヒューデットを見て状況が有利になったのかと勘違いしたリリィが俺の隣に来るが、さっきの指揮官の強化のせいか、『スパークエッジ』を受けた腕を振るだけで痺れを解除したのか目を抑えながらも闇雲に拳を振り回す。
それがまずかった。運悪くリリィの元にヒューデットの拳が届く。
リリィを突き飛ばし、咄嗟に『ウォーターシールド』をデュアルアクションで2枚展開するが、それを貫通しさらに俺は吹っ飛ばされ、数メートル後ろにあった木に頭と腰をぶつけ、痛みが走り意識が揺らぐ。
「兄ちゃん!?」
ドリバー達の声が僅かに耳に届くが、体を起こそうとするも手足に力が入らない。
「ガァァァッ!!」
なにかの音が聞こえ少しだけ頭を動かすと、片目だけ開け、拳を引き絞るヒューデットの姿が見える。その狙いは俺の頭部。
この攻撃をくらえば絶対に死ぬ。
ヒューデットは無表情であったが、どこか笑っているような……そんな表情をし、拳を振り抜――
「やめろォ!!」
「ガァ!?」
剣を振り、トドメを刺そうとしたヒューデットにドリバーが斬りかかった。ヒューデットは、驚きの声を上げ、攻撃を止める。
「兄ちゃんに手出しはさせない!皆行くぞ!」
ドリバーがそう言うと、一緒にここまで来ていた子供達全員が頷き、攻撃し始めた。
「大丈夫ですか!?今治しますからね!
えっと、〈負いし傷にて苦しむ者に・安らぎの光・照らしたまえ〉」
俺のすぐそばまで来たリリィが焦ったような表情をしながら、『ヒール』を俺に使ってくれた。
かなりの重症だが、僅かに……ほんの僅かにだが、傷が癒えたような気がする。
「こ、これじゃ回復しないの?……ど、どうしよう」
「『ソードリッパー』!そして、『ブレードスラッシュ』!」
「『アローショット』!」
あまり効果がなかったのが分かったのか、さらに焦るリリィより少し離れた場所でドリバーとラウが戦技を使用している声と戦闘音が聞こえてくる。
まだあの子達はヒューデット……しかも変異種の相手は厳しい。
「もう……いちど……」
「え?」
「もういちど……『ヒール』を……頼む」
声を発する度に全身が痛むが、それを無視して必死に口を動かす。
「わ、分かりました!〈負いし傷にて苦しむ者に・安らぎの光・照らしたまえ〉!」
再度『ヒール』による癒しの光が俺を包み込む。
先程よりも痛みが抑えられる。しかし、全快にはまだ遠く及ばない。
「ありがとう……これで中級ポーションを使えば」
動くようになった手を動かし、腰袋から中級ポーションを取り出し、飲み干す。
これでも痛みは残っているが、体は動かせるようにはなった。
「ごめんなさい!私のせいで……」
「大丈夫だ、今はあいつを倒すことに集中しよう。」
涙を流しながら俯くリリィの頭を撫で、戦闘している皆を見る。
「もう盾が……『クロスバリア』!」
ヒューデットがランディに向かって拳を振るうところだった。
未だに片目しか見えてないのか攻撃がかなり外れている。しかし何度か命中していたみたいで攻撃を受け止めていたのか、ランディがボロボロになった盾を投げ捨て、両腕をクロスさせる。すると、魔法のバリアが展開され、ヒューデットの攻撃を受け止める。しかし、流石に筋力変異種の攻撃なだけあって、『クロスバリア』は消滅し、ランディにダメージが通り、その場で膝を折る。
「はぁぁぁぁっ!『ボディエンハンス』、『ナックルアタック』!!」
レンリがランディの横を走り、『ボディエンハンス』により強化した拳で、ヒューデットに殴り掛かる。
先程からの戦闘でダメージが蓄積したのか、ヒューデットは僅かに怯み、1歩だけ足を後退させる。
「リリィ、今だ魔法で倒すから援護してくれ!顔面に『ウィンドブロウ』を当てて怯ませてくれ!」
僅かな隙を見逃さず、俺は隣のリリィにそう言って『無は有に』を使用し、結晶を生み出し再度光属性を選択し、結晶を握りつぶす。
「は、はい!〈自然に満ちし緑の風よ・我が敵の行く手・阻みたまえ〉!」
「ガ……ァ」
リリィが『ウィンドブロウ』を放ち、狙い通りヒューデットは腕で顔を庇う。
「さっきの礼だ、存分に受けとってくれ!〈魔を穿つ剣よ・光を纏え〉!」
『無は有に』で真・無属性で無属性となった『ライトソード』を光属性へと変換し、光の剣を首を狙って振り抜いた。
「何とか……勝ったな。」
俺が皆に振り返りながらそう言うと、皆は緊張が溶けたかのようにその場に崩れ落ちた。
今回使用した戦技、魔法
ソードリッパー 初級戦技
戦技制御力 F+
消費魔力量 F+
戦技発動速度 E--
効果時間 F++
説明
剣に魔力を付与し、一定時間剣の切れ味が上昇する。
ナックルアタック 初級戦技
戦技攻撃力 F
戦技制御力 F
消費魔力量 E--
戦技発動速度 E
説明
魔力を込めた拳で敵を殴る。
ブレードスラッシュ 初級戦技
戦技攻撃力 E--
戦技制御力 F
消費魔力量 F
戦技発動速度 E-
説明
魔力を刃に込めて、敵を斬る。
アローショット 初級戦技
戦技攻撃力 F+
戦技制御力 F-
消費魔力量 G+
戦技発動速度 E-
説明
矢に魔力を込めて、敵を射る。
クロスバリア 中級戦技
戦技防御力 E++
戦技制御力 E+
消費魔力量 E
戦技発動速度 E+
説明
両腕をクロスさせ、バリアを作り出し、攻撃から身を守る。
ソードスラッシュ 中級戦技
戦技攻撃力 D
戦技制御力 D-
消費魔力量 E
戦技発動速度 E++
射程 D--
説明
剣を振るうことで発動可能。
魔力を纏わせ、剣を振ることで斬撃を飛ばすことが出来る。
アースニードル 中級土属性魔法
魔法攻撃力 D
魔法制御力 E
消費魔力量 E+
魔法発動速度 E--
詠唱
変化せよ・敵を突き刺す・鋭い針へと
説明
土を魔力で変化させ、鋭い5本の針へと変化させる。
アースニードル 真・無属性ver
魔法攻撃力 E+
魔法制御力 E+
消費魔力量 E++
魔法発動速度 E-
詠唱
鋭く突き刺せ・土の針よ




