魔法創造
「さて、やるとしますか。」
魔法創造でオリジナルの魔法を作るため、宿に帰り、体を洗って着替えたあと、ベットの上であぐらを組んで目を閉じる。
魔法を作るために、魔法創造の力を行使すると、意識が次第に薄れ、ぱふっとベットに体が倒れる音がした。
「ここは……」
目を開くと周りはどこまでも続くような真っ白な空間だった。どこか頭がふわふわとしていてまるで夢の中にいるような感覚だ。
「魔法創造で魔法を作ろうとするとこうなるのか?
……もしかして魔法の試し撃ちができる空間ってことか?
……ん?」
俺の目の前にだけ他と違って文字と数字が書かれており、上下左右を見てもその文字と数字は追いかけてくる。
リソース0/10000
そう書かれている目の前の文字を見て納得する。
これは俺が魔法創造につぎ込めるリソースのことだと。
これが多いか少ないかは分からないが、べシールが多くしておくと言っていたから、多分多い方なんだろう。
「どんな魔法を作ろうか。」
試しに『マジックショット』の10倍の大きさと火力を持つ魔法を行使できる、と思考してみる。
すると、リソース0/10000の下の部分に『マジックショット』×10の大きさ+10倍の火力の魔法の行使、と勝手に文字が書き込まれ、リソースが675/10000と変化する。
「この魔法を作るとしたらこれだけのリソースを使用するってことか……。まだ全然余裕で改良できそうだけど。」
とりあえず魔法を使ってみようとすると、右手に力がこもる。
右手を上げ、集中すると『マジックショット』の10倍の大きさの魔力の球が出現する。
「これどこに放てばいいんだ……」
周りを見ても何も無いため、どこに試し撃ちするか悩んでいると、どこからともなく人型の人形が出現する。
材質は見ただけではよく分からないが、とりあえずこの魔法を人形に向かって撃ってみる。
「うおっ!?」
右手を人形に照準を合わせ、魔法を放つと、ズドンッととてつもなく重い音を響かせながら直撃し、人形はおろか、その周りの地面も破壊していた。
しかし、数秒も経つと、地面は修復され、人形も元の形に戻っていた。
「勝手に元に戻ってくれるのか、これはいいな。
いや、それよりもこの魔法の方がやばいな。」
これで10000あるリソースの675しか使っていないのだ。
もし火力に特化させて、限界まで火力を上げようとすれば、今の約15倍ほどの火力を出すことが出来る。
そんな魔法……おそらく超級魔法すらも超えるだろう。
試しに限界まで火力に特化させてみる。
「10000/10000になったな。」
リソースが書いてある下には本来の『マジックショット』の148倍の無属性魔法を放つ魔法と説明文が書かれ、クールタイムや射程なども書かれていた。
「……この魔法は流石にないな。」
火力だけに特化させた結果、射程は短すぎるし、1発撃つと1日この魔法が使えなくなる。さらに射程が短すぎるのに何かに当たると爆発するから、自分も巻き添えを食らうし、パーティーを組んだ時は、味方が近くにいる時は使えないと欠点ばかりだ。
俺は首を振ってこの魔法を削除する。リソースは0へと戻り、説明文も最初から何も書かれていなかったかのように、真っ白になる。
「どういう魔法がいいんだろうな。」
今日図書館で見た魔法創造で作られた3つの魔法を思い出す。
『雷電陣』、は魔法陣を作り、その魔法陣の上で雷属性魔法、雷電属性魔法を使用するとそれらの魔法の効果を上昇させるバフ魔法。
『重力破壊』、は重力を操り、広範囲を重力で押しつぶす攻撃魔法。
『操り人形は相手を操ることが出来る支配魔法。
3つとも効果は1つずつだ。なら俺もなにか1つに特化させる魔法がいいんだろうか。
例えばどんな相手でも倒せる魔法とか、どんな攻撃でも無効化させる魔法とか……。
また試しにやってみるとする。
「どんな相手でも倒せる魔法。」
そう呟くと、リソースに数字が記載される。
47521/10000
「めっちゃオーバーしてるやん」
魔法すら発動しない。
まあそりゃそうか。こんな魔法が簡単に作れたら苦労はしない。
次はどんな攻撃でも無効化させる魔法と呟いてみる。
39987/10000
「あぁ、うんだろうな……分かってましたよ。」
やっぱりそんな上手い話はないなと思いながら思考をめぐらせる。
べシールは無属性魔法しか使えない状態にしてもこの真・無属性を俺に与えたかった。それはなぜ?
「この大量のリソースと引き換えに、無属性魔法しか使えないってことなんだろうな。」
つまり俺の真・無属性は魔法創造時のリソースが多い代わりに、無属性魔法しか使えないというデメリットがあるのだろうか?
もしそうであれば、半端な魔法を作る訳にはいかないな。
「よしっ!」
パシッと両手で頬を叩き、気合いを入れる。
これだけのリソースがあるのだから、1つの効果のみというのはもったいない。
せっかくなら、様々な効果が発揮できる魔法を作りたい。
「汎用性を重視してみるか」
それから俺は数時間、試行錯誤しながら魔法を作り出した。
「ふう……かなり時間がかかったが、なんとか出来たな。」
目の前の長々と効果の書かれた説明文を見ながら、その上に書かれているリソースに視線を移す。
そこには9994/10000と表示されており、限界ギリギリまでリソースを使い切ったことが分かる。
「6余ったのがもったいないが、6のリソースで効果を付与できるものがないからいいか。」
早速作った魔法を試してみるとする。
「『無は有に』」
この魔法を使用するためのトリガーとなる詠唱を口に出す。
手が光り、そこにはサイコロのような形の透明で透き通った結晶が生み出された。結晶の中には粒状の可視化できる魔力がふわふわと漂っていて赤、青、緑、茶、黄、白、紫と順番に結晶の内側で色を映し出す。
俺が結晶を手の上に乗せたまま赤になれと脳内で願うと、結晶内の魔力は赤色に固定され、別の色には変化しなくなった。
結晶を右手で握りつぶすと、粒状の赤く光っている魔力が右手に吸収され、右手に魔力が宿っているの確認すると、俺は右手を構え『マジックショット』の詠唱を行い、俺はそれを目の前に出てきた人型の人形に向かって放つ。その瞬間に右手に宿っていた魔力が『マジックショット』に吸い込まれる。
いつもは10cm近くの魔力の塊が放たれるだけだが、今回は『まるで火を纏ったような赤いオーラを纏って』人形にぶつかり、まるでいつも以上の威力があるかのように派手な音と衝撃を後に残し、人形を消滅させた。
「よし……」
自分のイメージした魔法ができ、思わず声が漏れる。
「これこそ汎用性の塊だろ」
結晶の色が示すものは……魔法の属性だ。赤なら火、青なら水といった感じで自分が願った属性の色に結晶内の魔力は変化し、そしてこの結晶を砕くことで砕いた方の手に魔力が宿り、その手を使用した無属性魔法がその属性のメリット特性のみを獲得する。しかも、無属性の特性もしっかり持っており、例えば火属性を選択して、結晶を砕き『マジックショット』を撃った場合、火属性の魔法攻撃力が高いという特性と無属性の他の属性よりも詠唱が短い、魔法キャンセル時の魔力還元率が100%という3つの特性を有することになる。そして変化した属性のメリットの特性のみを有するため、火属性のデメリット特性である魔法制御力と消費魔力量が高いという特性は有していないという……まさにぶっ壊れた魔法だ。
ただ『無は有に』は再使用までに1分もかかるため、一度の戦闘で何度も連発できるようなものでは無い。本当は連発したかったが、このぶっ壊れた性能にするためにリソースを使いすぎたため、そうするとリソースが10000を超えてしまいこの魔法自体がつくれなくなってしまうため諦めた。
「でも、最後のとっておきの効果……まさかこの条件でこんな強力な効果が発動できるとは思わなかったな。」
リソースが9500を超え、さらに強力な効果を付与しようにも、リソース不足で色々と探っていた中、たった1つのことを抜きにすればだが、とんでもない効果を持つ効果を494のリソースで付与することが出来た。
その効果を発揮するには、リスクもあるが……この効果は必ず役に立つだろう。
「さて……それじゃあそろそろ戻るか。」
そう呟くと、さっきと同じく意識が薄れ、床にパタリと倒れてしまった。
「……ん、寝てた……か?」
目を開けると、外は明るくなっていた。
あぐらを組んでいた状態で寝ていたらしく、体が少し痛い。
「『無は有に』は、使えるのか?
『無は有に』!」
新しく俺の中に生まれた力を感じ、発動しようと試みる。
「お、出てきたな。」
手に光が集まり、結晶が生まれる。流石に宿で使う気も無い。使えるのを確認するだけでいいからな。
消失しろと念じると、結晶は消失した。
「時間は……約束の時間までまだあるな。朝ごはんでも食べて、行くとするか。」
今日はリーエンとの約束の日だ。
とりあえずは、ご飯を食べ、支度をするとするか。




