危険な帰還への道のり
パチパチと音をたてて燃える焚き火を見ながら、干し肉を口にする。
辺りはすでに暗くなっており、今日はこれ以上進むのは危険だと判断し、野宿することになった。
「にしても、ヒューデット多いな。おかげで予定よりも進めなかった。ミランに明日の昼前に着く予定だったが、このペースだと、明日の夕方を過ぎるかもしれないな。」
黒パンを片手にアレンさんが呟く。
「うえー、今のペースで夕方か。今日以上にヒューデットに遭遇したら間違えなくもっと遅くなるよな?
2日連続で野宿は嫌だぞ。」
顔を顰めながらリーパーさんは、嫌そうに焚き火に小枝を投げる。
「分かってるさ。街の外での野宿は危険だからな。今日はともかく、明日は野宿ってことにならないように、時間短縮だ。ヒューデットを見かけたらできるだけ戦わず、避ける方向で明日は行く。どうしても戦わないと通れないって時だけ戦うことにしよう。」
「分かりました。」
アレンさんの提案に私は頷く。無理してヒューデットと戦闘して、危険を犯す必要なんてない。
「よし、それじゃ、今日は早めに休め。俺が見張っとくよ。明日は日が出たらすぐに出発するからな。」
ういーと、気の抜けた返事をリーパーさんはして、馬車から2枚の布切れを取り出し、私達に放って1枚は自分にかけてすやすやと眠った。
私も早めに寝よう。もらった布切れを体にかけて目を閉じ、数秒で意識が遠のいていった。
次の日
リーパーさんが馬車を操縦し、私は隣に座って魔物がいないか辺りを見渡す。
出発から6時間以上経過し、あと1時間もしないうちにミラン村に辿り着ける。
「にしても凄いよな。この馬車ガタガタ動くのに寝れるなんてな。」
リーパーさんは反対側に座って眠っているアレンさんを見つめる。
「確かに……よく眠れますよね。」
リーパーさんに前聞いたところによると、夜の見張りはアレンさんがやって、次の日移動する際は、馬車に乗って眠るというのが、いつもの光景らしい。
馬車の乗り心地は、あまり良くない。よく眠れるなぁと感心しながらアレンさんを見ていると――
「リーフ、ヒューデットだ!」
リーパーさんが目の前を見て大きな声で言った。アレンさんもその声に飛び起き、ヒューデットを視界に捉える。
「4体もいるな。リーパー振り切れるか?」
アレンさんが目を擦りながら、隣のリーパーさんに尋ねる。
目の前には通常種のヒューデットが3体、そして変異種の小柄で足が速いヒューデットが1体いる。
「通常種ならともかく、あの変異種は分からない。」
昨日のうちに変異種がいるということを私は2人に伝えたが、足が速いヒューデットはどのくらいの速さなのか分からない。
「とりあえず逃げるぞ、捕まってろ!」
リーパーさんが手綱でブラウンホースを操り、ブラウンホースは走り出す。
私とアレンさんは落ちないように荷台に掴まる。
「ダメです、引き剥がせません!」
掴まったまま、後ろを振り返るが、距離を稼ぐことは出来ず、むしろ少しずつ距離がつまっている。
「なら、こいつをくらえ!」
アレンさんが振り落とされないように片手で荷台に片手で掴まりながら、リーパーさんの背中にあった弓と矢を掴み、一瞬だけ手を離し、変異種のヒューデット向かって矢を放つ。
「ギャァ!?」
戦技を使っていなかったが、右足に矢は命中し、ヒューデットは転び、その間になんとか振り切る。
「お前弓は苦手なのにすげぇじゃねえか!」
馬車を走らせながら、驚愕の表情でアレンさんをリーパーさんは褒める。
「単なるまぐれだ。あんなに上手く当たるとは俺も思ってなかったよ。」
「そうか?まあいい。あともう少しでミラン村に着く。
まだヒューデットがいるかもしれないから、2人とも注意しておいてくれ。」
そう言うと、リーパーさんは馬車の操縦に集中し始めた。
「そうだな、俺ももう目が覚めたし、辺りを警戒しておくとしよう。」
「私は逆側を見張っておきますね。」
アレンさんが右側を警戒してみているため、私は左側を警戒してみておく。
もうすぐミラン村に着く。最後に家族と顔を合わせたのは4日前。
家族に新しく出来た友達の話でもしようかな。
そう思い、魔物の接近がないか、私は見張りに集中する。




