変異種?
「これは……。」
ヒューデットと戦闘して少し歩いた所に食材が散乱し、ぐちゃぐちゃになっている馬車があった。
馬のような魔物の死体もあり、恐らくこの魔物が馬車を引いていたのだろう。そして、馬車に乗っていた村人はヒューデットとなって、俺達に襲いかかってきたのだろう。
「やっぱり、さっきのヒューデットは……。」
「村人の死体がここにないってことは、そういうことなんだろうな。」
にしても、1人で魔物のうろつく場所を馬車を引きながら、たった1人で移動していたのだろうか?
いや、多分それは無いな。危険すぎるし、あと2体ほどはヒューデットとなってこの辺りをさまよっているだろう。
その事をリーフにも伝える。
「防具ありのヒューデットかもしれませんね、これは用心しないと。」
「だな、いつ出てきてもおかしくない。」
これまで以上に警戒しながら俺達は進んで行った。
「森の出口か。」
数分ほど歩き続けると、少し先に森の出口が見えた。
ここから先は平原で、いちいち『エリアハック』を使用せずに進めるため大変助かる。
「見たところヒューデットの姿はないな。」
森を抜け、周りを見渡す。遠くに何体か魔物が見えるが、今のところはそれだけだ。
「ここにはヒューデットはいないみた……リーフ!!」
ちょうど森の出口を抜けるところにいるリーフに声をかけようとすると、木の影からヒューデットが2体出てきた。1体は通常サイズであるが、茶色の皮で出来た防具を着ており、しかも、もう1体は上半身は裸で2m近い体格をしており、全身の筋肉が発達していた。さらに拳には鉄のナックルダスターを装着している。
その1体がリーフ目掛けて殴りかかってきた。リーフは直前に気付くが、回避は間に合わない。
「ぐっ!」
リーフとはそこまで離れていなかったため、咄嗟にリーフとヒューデットの間に入り、攻撃を受ける。
「ぐ……ゲホッ……。」
そのでかい体格通り、拳はとんでもない威力を伴っており、俺は数メートル吹っ飛ばされる。拳は腹に命中し、ズキズキと骨が痛み、咳をすると吐血した。
「ユウキさん!!〈輝け光よ〉!」
リーフが『フラッシュアウト』を発動させ、一瞬の隙を作り、片方の通常サイズのヒューデットに向かって駆け出しながら、詠唱する。
「〈我が手に宿れ・魔を滅する・光の剣よ〉はぁっ!」
詠唱を完了したと同時に、魔法の射程に到達し、ヒューデットの首を狙う。
「まじか……。」
リーフの右手に光り輝く1mほどの光の剣が召喚され、それを一気に振り抜いた。
ヒューデットを斬った瞬間に、光の剣は消滅するが、ヒューデットの首がボトリと落ち、たった1発でヒューデットを倒した。
今リーフが使った魔法は、中級光属性魔法の『ライトソード』。光属性魔法は魔物達に対して発動すると、高い効果を発揮すると言うが、まさかこれ程とはな。
ただ、『ライトソード』は魔法攻撃力がC++とめちゃくちゃ高く、消費魔力量はEと少ないが、たったの1振りで消滅してしまうというデメリットがあるため、コスパが悪く俺は使っていなかったが、得意属性が光属性になったリーフだと、EXスキルの光の魔法使いの効果で魔法攻撃力は脅威のB--、消費魔力量もE-と、とんでも性能になる。
「もう1回!〈我が手に宿れ・魔を滅する・光の剣よ〉!」
隣のでかいヒューデットに向かって再び『ライトソード』を繰り出す。
首は届かないため、右腕を狙うようだ。
「やぁ!」
『ライトソード』を振り下ろし、ヒューデットの右腕を切断することに成功した。
「ガァァァッ!!」
『フラッシュアウト』の効果が解けたのか、怒りの籠った咆哮をあげ、リーフを視界に捉えると、残った左手を握り、リーフ目掛けて振り下ろす。
「くっ……」
バックステップでリーフは回避をするが、地面に突き刺さった左拳は地面を陥没させた。
俺はあんなものをくらったのか。あれを見る限り、俺ならあんな馬鹿力で殴られたら死んでいる。
死んでないのは、物理衝撃を吸収するグレイトウルフの防具のおかげだろう。
右腕を失ってリーフの方がまだ有利だろうが、いつまでも見ているわけには行かない。
腕と足に力を入れる。痛みが全身を駆け巡りうまく立ち上がれない。
「〈癒しの光よ・我が身を照らせ〉」
中級光属性魔法の『ライトヒール』を発動させ、攻撃をくらった箇所を治療しようとするが、魔法が発動しない。
「な、なんで……!?」
『ライトヒール』を真・無属性で発動する際、必要とされる魔法制御力はE++。今の俺の魔法制御力は魔石を使って1段階下がっているが、それでもD--だ。『ライトヒール』が使えないはずはないんだが……。
痛みを耐えながらなんとか発動させようとしていると、ドスンっと、音がして衝撃が発生する。
音の発生地点を見ると、またヒューデットが拳でリーフを攻撃したらしい。
「くっ……〈風よ阻め〉!」
リーフは何とか回避出来たみたいだが、恐らく距離をとるために放ったであろう『ウィンドブロウ』を近距離からヒューデットに直撃させても、一切怯まず距離を取れなかったことに驚き、焦り始める。
当然だ、一撃でもくらったら死んでしまうのだから。
以降は『パワーライズ』で両足を強化し、回避に集中しており、なんとかなっているが、いつまでも回避し続けることは出来ない。
早く俺が戦線復帰しなければ、リーフは殺されてしまう。
「くっそ、なんで発動出来ないんだ、ステータス!」
自分に何か問題があるのか確かめるため、自身のステータスを見てみる。
「……状態異常、重症?」
ステータスを見ると、魔法使いと書かれた横に重症と表示されていた。詳細を確認すると、1度の攻撃で体力を8割以上失った時になってしまう状態異常みたいだ。
効果は、体力を4割以上にしない限り、激痛により集中できなくなって、戦士であれば、戦技制御力、魔法使いであれば、魔法制御力が3段階低下するらしい。
この重症の効果で、今の俺の魔法制御力はEとなっているため、『ライトヒール』を発動することが出来ない。
「くそっ、これで回復するか。」
ベルトに着けているポケットから中級ポーションを取り出し、飲み干す。
すると、痛みが軽減され、ステータスを再び見ると、重症の文字消えていた。再び『ライトヒール』の詠唱をすると、今度はちゃんと魔法が発動できる。
手を攻撃をくらった箇所に当て、『ライトヒール』の癒しの光を集中させると、みるみるうちに痛みがなくなっていくのが分かる。体力は大体7割ほど回復した。
「よし、いける。」
若干の痛みは残っているが、動けないほどではない。
またもや、ドスンッと音が響く。
リーフは回避したが、衝撃でバランスを崩し、つまずく。
ヒューデットはドスドスと足音を立てながら、拳を握り、リーフに近づく。
気がつくと『エアブレード』を詠唱しながら、リーフの元に駆け出していた。
「させるかっ!!〈不可視の刃よ・鋭く切り刻め〉!」
右手を振るって、ヒューデット目掛けて風の刃を放つ。
今は魔法制御力が魔石の効果でD--に下がっているため、『ファイアアロー』と『マジックボム』は使用できない。
よって、中級魔法の攻撃系の魔法は単発の『エアブレード』か、同じく単発の中級雷属性魔法の『スパークショット』、それと『ライトソード』くらいしか使えない。
「グアァァァッ!!」
『エアブレード』がヒューデットに直撃する……が、見た目通り耐久力も高いのか、それとも魔石の効果もあって俺の魔法攻撃力も低くなっているからそこまでのダメージになっていないのか、体の表面に軽い切り傷が出来て、10メートルほど吹っ飛ばすだけに終わった。
「リーフ、大丈夫か!」
リーフの手を取り、立ち上がらせる。
「はあ……はあ……、ユ、ユウキさんごめんなさい!私のせいで……。」
ずっと、回避していたのと、一撃でもくらったら死ぬという緊張、それに自分のせいで俺に怪我をさせた、その3つが一気に重なり、リーフの目には疲労が見える。
「いや、俺がもっと早くヒューデットに気づけばこんなことになってなかったんだ。それに、俺はポーションと回復魔法で回復したから大丈夫だ。
とりあえず、こいつを倒そう。『ライトソード』はまだ使えるか?」
立ち上がって今にも襲いかかってきそうなヒューデットを見ながら、リーフに聞く。
「はい、まだ2、3発は発動できます。」
「じゃあ、俺が動きを止めるから隙を見て攻撃してくれ。今1番ダメージを与えられるのは、リーフの『ライトソード』だからな。」
俺が『ライトソード』を使ったところで、光属性の特性である魔物達に対しての効果が上がるという特性が発動せず、さらに魔石の効果で魔法攻撃力も下がっている。
俺の魔法攻撃力のステータスはリーフより2段階高いが、光属性が得意属性でEXスキルの光の魔法使いを持っているリーフが使った方が火力がでる。
「ガアァァァァッ!!」
「〈輝け光よ〉〈痺れの荒縄よ〉」
突っ込んできたヒューデット目掛けて『フラッシュアウト』
を放ち、視界を奪う。
まともにくらったヒューデットは、目をつむりながら、左腕を振り回す。
そこにデュアルアクションを発動した『エレキバインド』がヒューデットに電撃を与えながら縛り上げる。
「ガアァァァッ!!」
電撃で弱らせているとはいえ、あの筋力じゃ直ぐに突破されるな。
『ライトソード』は近づかないといけないからもう少し弱らせた方がいいな。追加で新たな魔法を使おう。
「〈蝕め・衰弱の霧よ〉」
ヒューデットから少し距離をとり、中級闇属性魔法『ダークミスト』を発動する。すると、ヒューデットを中心に半径5mに黒い霧が約10秒ほど出現し、消滅した。
「ガ……ァ……」
ヒューデットを見ると、明らかに弱っており、隙だらけだ。
「リーフ今だ!」
『ライトソード』の詠唱を完了させ、後ろで準備していたリーフに声をかける。
「分かりました、はぁっ!」
駆けながら『ライトソード』で光の剣を出現させ、ヒューデットの心臓にグサリと『ライトソード』を突き立てる。
「ガアァァァァァ……」
ヒューデットの声が小さくなり、ついに聞こえなくなった。
「倒した……か?」
「はい、心臓目掛けて『ライトソード』を刺したので。」
近づいてヒューデットの様子を見てみる。
今までのヒューデットと以上に筋肉が発達している。
軽い魔法程度なら、この筋肉で弾き返そうなほどだ。現にリーフの『ウィンドブロウ』はこいつに効かなかった。
「これは変異種か?今までの奴らとは明らかに違うが……。」
「かもしれないですね、今までのヒューデットは力が強くてタフで足が速かったですけど、このヒューデットは、他のヒューデットと比べて足が少しだけ遅かったけど、筋力が凄かったですね。」
このヒューデットが拳で殴ったことで陥没した地面を見て、リーフは言った。
「こいつはギルドに報告しておかないとな。〈魔法のポケットよ〉」
変異種の方のヒューデットを『マジックポケット』で回収する。
「それにしても本当に大丈夫ですか?お腹痛みませんか?」
さっきヒューデットにもらった攻撃のことを言っているんだろう。
「大丈夫だ、まだ少し痛むが、この後に支障はないよ。
それよりも、疲れただろ?安全なところで少し休憩しよう。」
辺りを見渡すと、周りから俺達の姿を隠せるような大きな岩があった。これなら、魔物に見つかることもないだろう。
「あの岩陰で休もう。」
「そうですね、もう何時間も歩きっぱなしですし、休憩しましょう。」
俺達は、岩の元へと行き、腰を下ろして『マジックポケット』を発動し、サンドイッチと水筒を取り出し、サンドイッチを口にする。
「お口に合いますかね?」
実はこれリーフが早めに起きて、宿でおじいさんに厨房を借りて作ったらしい。中に入っているレタスがシャキシャキしていて、マヨネーズもハムも味を主張していてthe・サンドイッチという感じがする。
「うん、めっちゃ美味いよ。」
というか、この世界にマヨネーズがあるなんてな。
実を言うと、俺はマヨネーズが大好物だったりする。流石に直で飲むまではいかないが……。
「良かったです、早起きして作ったかいがありました。」
嬉しそうな表情をして、リーフもサンドイッチを口に運び、幸せそうに食べていた。
その後、雑談しながら休憩し、30分ほど経ったあたりで休憩を終え、俺達は再び、ヒューデットの探索をすることにした。
今回使用した魔法
ライトヒール 中級魔法
魔法回復力 D--
魔法制御力 E++
消費魔力量 E+
詠唱
照らせよ・癒しを授けたる・優しき光
説明
『ヒール』の上位互換。回復量が増えるだけでなく、毒などの状態異常の効果も軽減することが出来る。
ライトヒール 中級魔法 真・無属性ver
魔法回復力 E++
魔法制御力 E++
消費魔力量 E
詠唱
癒しの光よ・我が身を照らせ
エアブレード 中級魔法 真・無属性ver
魔法攻撃力 D-
魔法制御力 E-
消費魔力量 E-
射程 D
魔法発動速度 D-
詠唱
不可視の刃よ・鋭く切り刻め
ライトソード 中級光属性魔法
魔法攻撃力 C++
魔法制御力 E--
消費魔力量 E
魔法発動速度 E++
詠唱
我が手に宿れ・魔を滅する・光の剣よ
説明
1mほどの光の剣を召喚する。
魔法攻撃力が高い代わりに、1振りすると消滅する。
ライトソード 中級魔法 真・無属性ver
魔法攻撃力 C
魔法制御力 E-
消費魔力量 E+
魔法発動速度 E++
詠唱
魔を穿つ剣よ・光を纏え
ダークミスト 中級闇属性魔法
魔法制御力 D--
魔法効果時間 D
射程 E
消費魔力量 E
魔法発動速度 D--
詠唱
立ち込めよ・その身を蝕む・黒の霧よ
効果
対象を中心とした半径5mに、衰弱の霧を放つ。
衰弱の霧(敵味方問わず)を吸うと、30秒間衰弱状態にする。
ダークミスト 中級魔法 真・無属性ver
魔法制御力 E+
魔法効果時間 D--
射程 E
消費魔力量 E
魔法発動速度 D--
詠唱
蝕め・衰弱の霧よ




