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中級魔法って難しい


マルチターゲットを習得したことを確認し、俺達はその後ヒューデットを探すことにした。


「〈魔の気配・察せよ波動〉」


本日7回目の『エリアハック』を使用し、辺りを調べる。


「この辺りに魔物はいないな。」


『エリアハック』になにも引っかからなかったことを確認し、足を進める。


「ユウキさん、結構『エリアハック』使ってますけど、魔力は大丈夫ですか?」


さっきから何度も消費魔力量がEと、今の俺達にしてはまあまあな量の魔力を消費する『エリアハック』を使用しているのをリーフが心配してきた。


「ああ、大丈夫だ。俺は基本『エリアハック』とリーフの援護のための初級魔法しか使ってないしな。『ファイア』とかの消費魔力量が多い魔法を使ってる訳でもないし、魔力回復速度も上がってるから、まだ魔石を使うほどでもないよ。」


ちなみに今の俺の魔力量は大体7割ほどだ。

この状態でも数発は中級魔法を使える。手元にある魔石は中級魔石であるため、今使うと最大魔力量以上の魔力を回復するし、何より魔法の効果と俺の魔法制御力のステータスが1段階低下するため、使うのはもっと魔力が減ってからだ。


「ユウキさんの魔力量ってやっぱり多いんですね。」


確かに今の俺の魔力量はD++とステータスの中で1番高いが、器の欠片を2つ取り込んでステータスを上げているのも俺の魔力量が多い要因であるため、自慢はできない。

怪しまれるのもあれなので、一応笑っておくことにする。


ちなみに器の欠片でのステータス上昇分を差し引くと、俺の魔力量はE+にまで下がる。

ついでに、魔法回復力、魔法制御力、魔法回復速度も1段階ずつ低下し、ステータスの合計的にリーフとそこまで変わらない。


「ユウキさんあれってヒューデットじゃないですか?」


俺が『エリアハック』で調べた所よりも少し先、見た事のある姿が木の影から出てきた。


「ヒューデットだな。見たところ1体で周りに魔物もいないな。こっちにまだ気づいてないみたいだな。不意打ちすれば倒せるか?」


少しづつ近づきながら、『マジックチャージ』を発動し、魔法の攻撃力を高め、『ファイアアロー』の詠唱を完了する。

そして、射程内に入ったのを確認し、『ファイアアロー』を発動する。


「あ、やべ」


『ファイアアロー』を発動した瞬間に分かった。

一応、『ファイアアロー』の射程内であるが、『ファイアアロー』の魔法制御力はD-。そして、俺の魔法制御力もD-である。

つまり、今の俺はギリギリ『ファイアアロー』を制御できるが、こんなに距離が離れていると狙いがズレてしまう。

『ファイアアロー』は前方に飛んでいくが、5本あるうちの3本がヒューデットに当たらず、盛大に狙いがズレて飛んでいってしまった。


「ガァァァ!!」


一応『マジックチャージ』で攻撃力を上げた『ファイアアロー』が2本直撃したが、その程度の威力では到底倒せるはずもなく、ヒューデットは俺達に気付いて走ってきた。


「さ、〈更なる魔力纏いて・爆ぜよ魔弾〉!!」


慌てて『マジックボム』を詠唱し、ヒューデットに向かって放つ。盛大に爆発し、砂や土埃が舞って視界が悪くなる。


「た、倒せたか?」


「……いえ、まだみたいですね。」


目を凝らしてよく見ると、ふらつきながらも立ち上がっているヒューデットが見える。


「〈小さな火種よ〉!」


立ち上がったヒューデットが走ってくる前に、ダブルアクションを使用して、『ファイア』を2発撃ち込む。


「ガァァァ!!」


「これでも倒れないのか!?」


『ファイア』が2発直撃したのにも関わらず、少し怯み、走る速度が遅くなっただけで、倒れることは無かった。


「ガァァ!」


ヒューデットの攻撃が届くようになり、殴りかかってくるヒューデットの拳を避け、1発顔面に蹴りを入れて、距離をとる。

足を『パワーライズ』で強化していれば多少のダメージは稼げだろうが、詠唱をする暇がなかった。


「〈我は力を求む〉、リーフ援護を頼む。」


「了解しました!」


今度は『パワーライズ』をデュアルアクションを使用し、両手を強化して拳を構え、後ろにいるリーフに援護をお願いしてヒューデットに殴り掛かる。

こんなに近距離では、中級魔法の詠唱は論外。初級魔法は使えるが、俺も魔法に巻き込まれるため、肉弾戦を仕掛けるしか無かった。


「はっ!」


「ギャアァ!」


右手でヒューデットの顔面を打ち抜き、ヒューデットが俺をつかもうとする手を左手で腕の部分を下に叩きながらヒューデットを回り込むようにして左側に回避する。


「くらえ!」


「ガッ!?」


右肘を思いっきり顔面にくらわせると、体を仰け反らせ、そこに蹴りを叩き込み、ヒューデットは地面に倒れる。


「はあ……はあ……」


まだ死んではいないが、距離を取るチャンスが出来たため、少し後ろへと移動し、そこから『マジックショット』を放つ。


「ガ、ガァァァ!!」


「〈青き水の盾よ・更なる守りの力を発し・受け止めよ〉!」


『マジックショット』が直撃し、びくりと身体を震わせたあと、暴走したように急に立ち上がって走ってきたが、生憎リーフの使った『ウォーターシールド』に阻まれる。


「この距離なら外さない。〈赤き炎を纏いし火矢よ・刺し射抜け〉!」


「ガァァァァ!!」


『ファイアアロー』を詠唱し、至近距離で放つ。

リーフがちょうどいいタイミングで『ウォーターシールド』を解除し、5本の『ファイアアロー』が全て命中し、今度こそヒューデットは絶命した。


「はあー、なんかこのヒューデット他の奴らよりもタフじゃなかったか?」


息を吐き出し、目の前で倒れたヒューデットを見て俺は言った。


「そうですね、中級魔法……まあ最初の『ファイアアロー』を数えなくても『マジックボム』が直撃して、さらに『マジックショット』に『ファイア』2発、それに『パワーライズ』で強化した状態での拳をくらっても立ち上がってきましたからね。昨日よりもユウキさんも私のもステータスが上がっているのに。

……て、これはもしかしてフォレストリザードの防具?」


リーフがヒューデットに近づいて、上半身に纏っていた血と穴だらけになったボロボロの防具に軽く触れる。


「……うん、この皮はフォレストリザードのものですね。

だから、あんなにタフだったんですね。」


「えーと、どういうことだ?」


うんうん、と頷くリーフに中級魔石を砕いて魔力を回復させながら、俺もリーフの隣に立ってヒューデットを観察する。


「この人の防具はフォレストリザードの皮で作られています。フォレストリザードというのは、Eランクの魔物で魔法に対するダメージを軽減するという特性があります。

もちろん、そのフォレストリザードの皮を使っているので、その特性がこの防具にも備わっており、だからこそ魔法をあんなに受けても倒れなかったんでしょうね。」


「確かに今まで戦ってきたヒューデットは防具なんてつけてなかったからな。……てことはこのヒューデットは冒険者か?」


「かもしれませんね。それか、昨日宿のおじいさんが言ってた村からビギシティに持っていく最中だった村人かもしれません。

ヒューデットは物理攻撃が主だから、この防具では攻撃は防げなかったんでしょうね。」


ヒューデットを見た後、悲しむように目を閉じ、はぁと一息つくリーフ。


「一体なんでヒューデットなんてものが出てきたんだろうな。」


「ガローギルドマスターからは、何者かがEXスキルを使って生み出してるんじゃないかって言ってましたね。」


「そいつを特定して捕まえられるといいんだが……。

とりあえず俺達に出来ることは、今のところヒューデットの撃破だけだし、どんどん倒していくとしよう。」


「ユウキさん、今度は外さないでくださいね?」


「う、ういっす」


『ファイアアロー』のことを言っているんだろう。

少し笑みを浮かべながら言うリーフに、何も言い返せない俺だった。

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