光属性へとなった少女
ヒューデットを見つけるべく、俺達は森の中へと入っていく。
森の中は陽があまり差し込まないため、以前グレイウルフとの逃走劇をした時も思ったが、視界があまり良くない。
「こういう時は……〈魔の気配・察せよ波動〉」
左手を前に突き出し、中級無属性魔法『エリアハック』を発動する。
『エリアハック』は、魔力を波動へと変化させ、前方50m先までにいる魔力を持つ生命体の正体と正確な位置を、自分に近いところから5体まで察知できる魔法だ。
波動がぐわん、と音を立て、前方に放たれる。
ちなみに、この音は自分にしか聞こえないため、気づかれることは無い。
「どうですか、ユウキさん?」
「んー、スライム2体が20m先の木の影にいるな。あと、グレイウルフが45m先に1体。それ以外には反応がないな。少なくとも50m以内には。」
この『エリアハック』という魔法、効果はいいのだが、効果範囲が50mと微妙なのが気になるところだ。
こういう広めの森だと、慎重に進むのなら、少し進む事に何度も『エリアハック』を発動しないといけない。
まあ、だからこそ中級魔法という所に位置付けされているのだろうが。
「ヒューデットがいないからスキルの習得といくか?その方がヒューデットを相手する時、楽になるだろうし。」
「そうですね……今私の魔法制御力はEなので、あと1段階上昇させることが出来れば、詠唱省略(小)を習得できますね。」
「でも、確かEランクからはステータス上げるのが難しくなるんだよな……?スライム2体とグレイウルフ1体倒したところで上がるか?」
昨日はEランクになってもステータスが上がったが、それはたくさんの魔物を倒したのもあるが、ヒューデットを倒したのが1番大きい。
ガローギルドマスターによると、元々ステータスを上げやすい魔物で、さらに俺たちにとってはランクが1つ上のDランクの魔物。ゴブリンやスライムのようなランクが下の魔物を倒すよりも、上のランクであるヒューデットを倒す方がステータスが上がりやすい。
「うーん、それを言われると上がらないかもしれないですね。デュアルアクションは10体倒さないといけないから数が足りないし……。」
「……リーフ悩んでいるとこ悪いが、スライムとグレイウルフに気付かれた。」
「え?」
「とりあえず、デュアルアクションの習得を目指したらどうだ?2回連続で同じ初級魔法を使って10体倒すのが条件だから、ここでひとまず3体分稼いでおこうぜ。」
「そうですね、では私が倒しますね。」
そう言って俺とリーフは場所を交代し、リーフは詠唱を開始する。
それを見てスライムとグレイウルフがリーフに向かってくる。
しかし、スライムは特別足が速いわけでもなく(足ないけど)、グレイウルフは45mも離れたところから走ってくるため、多分詠唱は間に合うだろう。
「〈集いし魔力の高まりよ・我が手より放たれよ〉
〈集いし魔力の高まりよ・我が手より放たれよ〉!」
高速で2度『マジックショット』を詠唱し、1体のスライムに2発の『マジックショット』が直撃し、消滅する。
しかし、1体倒すだけでもやはりというか、時間がかかり
スライムは目の前に、グレイウルフは15mほど先にいる。
このままじゃリーフが怪我してしまうな。
「〈守りの水膜よ〉〈痺れの荒縄よ〉」
スライムがリーフ目掛けて体当たりをするが、俺の『ウォーターフィルム』で弾き返される。
さらに、後ろにいるグレイウルフに向かって『エレキバインド』を使用する。
リーフに夢中になっていたようで雷の縄がグレイウルフを拘束し、少しの間時間を稼ぐことに成功する。
俺がグレイウルフを拘束している間に、さらに『マジックショット』を2回使用してリーフはスライムを倒し、その直後に拘束効果が切れ、前にいるリーフにグレイウルフは襲いかかる。
「〈小さき炎の灯火よ・我が手に宿りて・火球となれ〉!」
そこに『マジックショット』2発では倒せないと察したのか、魔法攻撃力が『マジックショット』よりも上の『ファイア』を詠唱し、グレイウルフの顔面に直撃させた。
「キャウン!?」
衝撃で吹っ飛ばされたグレイウルフにさらに『ファイア』を放ち、戦闘は終了した。
「よし、まずは3体撃破だな。」
「ユウキさんのお陰です。1体倒すのに、1人だと予想以上に時間がかかって危うく攻撃が当たりそうになりましたから。
やっぱりこうしてみると、詠唱省略(小)やデュアルアクションは便利ですね。」
「だな。中級魔法も覚えた以上、俺も詠唱省略(中)の習得や、やデュアルアクションの効果をあげたいんだが習得するのが大変だからな……。」
詠唱省略(中)は初級魔法、中級魔法の詠唱を1節にするスキルだ。習得条件は魔法制御力をC-にすること。
デュアルアクションは中級魔法を2回連続で放つには、二回同じ中級魔法を連続で使って魔物を100体倒さないといけない。
どっちも今達成できるような条件じゃないし、習得するのは後にしようと思う。
「もう1つスキルの欄が空いているからひとまず1つスキルを覚えたいな。」
「なにか覚えたいスキルがあるんですか?」
「マルチターゲットだな。昨日アイオンとキャサリンから教えてもらったスキルの中で習得が1番簡単だし、使い所も多そうだからな。」
「ああ、確か単発の魔法を『ファイアアロー』みたいに数発の魔法に変化させるあれですか。」
マルチターゲット……『ファイア』や、『マジックショット』のような単発の魔法を放つ攻撃魔法を、魔法攻撃力を3段階減少させることにより、『ファイアアロー』のように(最大5つまで)多数の魔法に変化させることができるスキルだ。
習得方法は単発の攻撃魔法で5体以上の魔物をまとめて倒すと。
「攻撃力は減少するが、ヒューデットの周りに魔物がいた時に使えば一気に最大5体まで攻撃を当てれるから逃げるまでの時間も稼げるしな。
まあ、まずはリーフのスキル習得からだ。」
そう言って少し進んだところで俺はまた『エリアハック』の呪文を詠唱した。
「これで10体目!」
「ピギィ……」
2度目の『マジックショット』を受けたスライムが情けない声を上げ、形を崩していく。
「よし、これでデュアルアクションも覚えたはずです!」
無事、詠唱省略(小)とデュアルアクションを習得したリーフは笑顔を浮かべながらこっちに顔を向ける。
「お疲れ様、これでかなり戦いやすくなるだろうな。」
あれから何度か『エリアハック』で魔物の位置を特定し、リーフに位置を教えて、1発目は大体不意打ちで魔法を放ち、魔物がリーフに気づいた直後には、2発目の詠唱が終わっており、その魔法を放って倒す……という流れをずっとやってきた。
ちなみに、途中で魔法回復力以外のステータスが上がったらしく、その時に詠唱省略(小)は覚えたらしい。
リーフは、ポケットからギルドカードを取り出し、ちゃんとデュアルアクションを覚えたかどうか確認しようと、ギルドカードに目を通すと、
「うん、デュアルアクション習得してますね。あとは、魔法回復速度もさらに上がってますね。
あとは……得意属性が決まってる!?」
「え……ほんとだ。良かったな!」
リーフが驚愕と歓喜の混じった声を上げながらギルドカードを見せてきた。
今までは、?表示になっていた箇所に光属性の文字が代わりに浮かび、さらに得意属性が光属性になったためか、光属性に関するEXスキルを2つも習得している。
リーフ・クレイン(16)
魔法使い 得意属性【光属性】
魔法攻撃力 E--
魔法防御力 F
魔法回復力 D-
魔法制御力 E+
魔力回復速度 E--
魔力量 E-
Eランク
スキル欄(3)
回復魔法使い
詠唱省略(小)
デュアルアクション
EXスキル
光の魔法使い
詠唱省略(光Ⅰ)
「光の魔法使いは光属性魔法を使用する際、魔法の魔法制御力、消費魔力量以外の魔法の全てのステータスを1段階上昇させ、魔法制御力、消費魔力量を1段階低下させるスキル。
詠唱省略(光Ⅰ)は、初級光属性魔法の詠唱を3節から1節にするスキルみたいですね。」
「詠唱省略(光Ⅰ)はともかく、光の魔法使いのスキル強すぎるな。」
効果や射程等は全て上昇し、魔法の制御がやりやすくなって、しかも消費する魔力量も少なくなるというのは、ぶっ壊れと言ってもいいだろう。
「光属性魔法のみにしか効果はないみたいですけどね。
それでも、強力なスキルであることには間違いないですけど。
詠唱省略(光Ⅰ)も光属性魔法のみ対象で、詠唱省略(小)よりも使い勝手が悪そうですけど、習得できるのが光属性が得意属性である者は、魔法制御力がE--になったら習得するみたいです。」
通常の詠唱省略(小)は魔法制御力がE+にならないと習得できなかったのに対し、詠唱省略(光Ⅰ)はE--で習得可能か。
「てことは、中級光属性魔法の詠唱省略させる魔法は詠唱省略(中)よりも早く習得出来るかもしれないな。」
詠唱省略(中)は、魔法制御力をC-にしないといけないが、もしかしたらそれよりも低い魔法制御力で習得可能になるかもしれない。
「EXスキルってすごいんだな。」
「特別なスキルですからね。しかも、光属性だけに特化しているからこれだけの効果を持っているんだと思います。
ん……?」
「どうしたリーフ?って、ゴブリンか。」
「ギャギャ!」
2人で話していると、前方からゴブリンが5体現れ、棍棒を持って襲いかかってきた。
「マルチターゲットの習得にちょうどいいな。
〈さらなる力を求む〉」
ゴブリン達をまとめて倒すために、『マジックチャージ』で、次に放つ魔法の威力を上げる。
そしてまとまっているところに魔法を放てるよう右手を前に出して狙いを定め、詠唱を開始する。
「〈更なる魔力纏いて・爆ぜよ魔弾〉!」
詠唱終了と同時に、右手から『マジックショット』よりも一回りほど大きな魔弾が現れ、それを放つ。
中級無属性魔法『マジックボム』をゴブリン達の中心に放つ。
『マジックショット』とは違い、まっすぐ飛ぶのではなく、ふわりと放物線を描き、直撃と同時に込められた魔力が爆発し、ゴブリン達を一度に殲滅した。
「おぉ、中級魔法を『マジックチャージ』するとこんなことになるのか。」
『マジックボム』の魔法攻撃力はD -。それが、『マジックチャージ』の効果でDになったため、Fランク程度のゴブリンなら一撃だったみたいだ。
そして、
「よし、マルチターゲット習得可能だな。」
自身のステータスを見て、俺は満足げに頷いた。
ユウキ・ツキモト (17)
魔法使い 得意属性【無】
魔法攻撃力 E
魔法防御力 E-
魔法回復力 F++
魔法制御力 D-
魔力回復速度 E
魔力量 D++
Eランク
スキル欄(3)
詠唱省略(小)
デュアルアクション
マルチターゲット
EXスキル
無の加護(真・無属性)
器の欠片(2)
器の加護
マジックシェア
今回使用した魔法
エリアハック 中級魔法
魔法効果範囲 E
魔法制御力 E++
消費魔力量 E
魔法発動速度 E+
詠唱
魔の気配・察せよ波動
説明
魔力を波動へと変換させ放出し、前方180°、50m先まで魔力を持つ生命体がいる場合、自分に近いところから5体まで正体と正確な居場所を察知できる。
マジックボム 中級魔法
魔法攻撃力 D-
魔法制御力 F+
消費魔力量 E
射程 E++
魔法発動速度 E++
詠唱
更なる魔力纏いて・爆ぜよ魔弾
説明
ふわりと放物線を描きながら、何かに当たると爆発するバランスボール程の大きさの魔力の球体を放つ魔法。




