上位属性
「雷電属性ってのは、上位属性ってやつか?」
聞いたことの無い属性の名前がキャサリンの口から出てきたため、聞いてみる。
「えぇ、そうですよ。ユウキさんは上位属性について知っているのですか?」
「いや、上位属性っていうものがあるとしか知らない。
ギルドの魔法の特性について書かれた本に名前だけしか載っていなかったからな。」
「あー、確かにここはまだ初心者冒険者ばかりだから上位属性の本は置いてないな。」
「ここの冒険者にはまだ上位属性は早すぎますからね。
上位属性に関する本がないのも当然でしょう。リーフさんも上位属性については……?」
「私もあまり上位属性については知らないですね。」
キャサリンの問いかけにリーフが首を振る。
「分かりました、では上位属性について説明をしましょう。
上位属性とは、得意属性を持つ魔法使いがある一定のステータスに到達すると、その得意属性の上位属性を使えるようになります。
火属性なら、炎属性。水属性なら、氷属性。風なら嵐。土なら岩石。雷なら雷電。光なら光聖。闇なら幻影となります。」
「ん、無属性は無いのか?」
キャサリンの述べた属性の中に無属性がなかったのに疑問を覚える。
「無属性魔法は、他の属性魔法と違い、魔法ではなく魔力をただ変化させたもの。故に無属性の上位属性は存在しません。」
俺の得意属性は無属性。そのため、上位属性が使えないということになる。
「そうか……。」
「そう落ち込まないでください。無属性魔法は無属性魔法で他に良さがありますから。」
キャサリンは、にこりと笑い話を続ける。
「話を戻しますね。私の得意属性は雷属性。そして、得意属性が雷属性の魔法使いは、魔法制御力がA--を超えた際に、EXスキル雷電の魔法使いを獲得し、雷電属性が使用できるようになります。」
「その他の上位属性は使えないんですか?」
リーフが手を挙げ、質問する。
「そうですね、得意属性は1人の魔法使いにつき1つです。そのため、その属性の上位属性しか使用できません。」
「そうなんですか……。」
「まぁ、そんなに落ち込まなくてもいい。上位属性は強力だが、扱いが難しい。そんな、いくつも持てたとしても持て余すだろうよ。」
少し残念そうにしているリーフを見てアイオンが口を開く。
「そうなんですか?」
「えぇ、上位属性というのは、上級魔法と超級魔法のみしかありません。効果は絶大ですが、上級魔法と超級魔法なので、かなり魔力の消費も激しく、制御も難しいのです。」
「上位属性が上級魔法と超級魔法てことは、元の属性魔法は中級魔法までしかないのか?」
「いいえ、元の属性魔法は上級まであります。
私の雷属性で言うと、雷属性は初級から上級まで、雷電属性は上級と超級ということですね。
それと、雷属性の上級魔法と雷電属性の上級魔法は、同じ上級魔法でも効果が全然違います。
例えば……雷属性と雷電属性の魔法ならこんな感じですね。」
キャサリンが2つの魔法のステータスを口にする。
ドロップスパーク 上級雷属性魔法
魔法攻撃力 C
魔法制御力 C++
射程 C++
消費魔力量 B-
魔法発動速度 B--
サンダーレインズ 上級雷電属性魔法
魔法攻撃力 B+
魔法制御力 B-
射程 B
消費魔力量 B+
魔法発動速度 A-
ドロップスパークが雷属性、サンダーレインズが雷電属性らしい。
2つを比べると、明らかにステータスに違いがあるのが分かる。
「ドロップスパークは、指定した場所に1本の雷を落とす魔法。
サンダーレインズは、効果範囲内に極太の雷を15本落とす魔法です。
上位属性は、ステータスだけでなく、魔法の効果も元となる属性魔法よりも高くなります。その分、魔法制御力も消費魔力量も元の属性魔法より多くなりますが。」
「それでも凄いですね、上位属性の魔法は。魔法のステータスが全部B-以上なんて。」
「雷電属性は、雷属性の特性……魔法の制御がやりやすいという特性を持っていても魔法制御力はB-もあり、上位属性は扱いずらいことが分かりますね。私も雷電属性の超級魔法はまだ扱えきれていません。」
苦笑いしながら、キャサリンは遠い目をしながら呟く。
「そういえば、上位属性になるとあれもあるじゃないか?」
キャサリンの肩を軽く揺すりながら、アイオンが言う。
「あれ?あぁ、魔法はそれぞれに特性がありますよね?
上位属性はもう1つ特性が増えます。雷電属性は魔法の制御がやりやすいという特性ともう1つ追加される特性……魔法発動速度の向上です。風属性の特性が丸々追加されます。」
「私も上位属性早く覚えたいなぁ。」
目をキラキラさせながら、憧れの目でキャサリンを見てリーフは呟く。
「リーフさんは、まだ得意属性も決まってないからまだまだですね。気長に待っておきましょう。」
「ですね、頑張らないと!」
無属性しか使えない上に、上位属性も使えない俺は少し虚無感を感じながらも、表情に出さずに軽く微笑んでおく。
「あ……ごめんなさい。私だけ盛り上がっちゃって……。」
俺が見ていることに気がついたのか、リーフが謝ってくる。
「気にするな。」
どこか申し訳なさそうに謝るリーフは、キャサリンの方を向く。
「キャサリンさん、ユウキさんは上位属性を使えないんでしょうか?」
「少なくとも無属性の上位属性と言うのは、聞いたことがありません。しかし、先程も言ったように無属性魔法には他に良さがあります。例えばこれとか……。」
「疲れましたね、ユウキさん。」
冒険者ギルドからの帰り道、隣を歩いているリーフが疲れたようなトーンで言った。
あの後、無属性魔法のことを詳しくキャサリンに聞いた。
「あぁ、だがめちゃくちゃ勉強になった。」
無属性魔法のこと、それに中級魔法もいくつか教わり、いくつかのスキルの習得の仕方、教えてもらったスキルの使い方等、非常に勉強になった。
「そうですね、魔法に、スキルに……。それにしても、私達がアイオンさんと練習試合をした時にスキルを使っていたとは。」
今回教えてもらったスキルには、アイオンが練習試合の時に使用していたスキルも含まれていた。スキル名は電光石火。
効果はこんな感じだ。
電光石火
最大15m先まで一瞬で移動し、攻撃をした後元の位置に戻る。
身体能力を向上させる戦技、魔法を使用し、脚力を強化した状態で走りながら、合計30体以上の魔物を倒すと、習得可能。
クールタイム1分
アイオンと戦っている時、瞬間移動のように一瞬で移動している時があった。その瞬間移動の正体がこのスキルだったらしい。
「奇襲をかける時とかに使えるスキルだな。」
最大の強みはヒットアンドアウェイができる点。クールタイムが1分あるのが、あれだが魔法の詠唱を完了した状態で電光石火を使用し、近距離で使えば大ダメージを与えられるだろう。
そんなことを思っていると、森の休み所に到着する。
突然ぐぅ〜と、隣から音がした。
「……もう夕食の時間だし、夕食食べて明日に備えるか。」
ちらりと目で音の出処を確認した俺は、リーフに提案する。
「ソ、ソウデスネ。」
顔を赤らめて、お腹を抑えるリーフなんて見てない見てない。
「なんか、今日は料理が少ないな。」
森の休み所の料理は、バイキング形式だ。
昨日も今日の朝もいくつかの机の上にたくさんの種類の料理が並んでいたが、今は半分くらいの種類しかない。その分、1つ1つの料理の量が多くなっているが。
「いやぁ、なんでか知らないが、今日届く予定だった肉やら野菜が届かなくてな。緊急で余ってる素材で種類を絞って、量を多くしたのよ。」
料理を作ってるグライのおじいさんが頭を掻きながら、やって来る。
「届かなかったってどういうことですか?」
「うちは、色んな村から素材を集めて料理作ってるんだが、今日届く予定だった村から、誰も来なくて素材が足りなくてな。
予定の日を忘れたのか……はたまた魔物に襲われたか……。
無事だといいんじゃが。」
顔をしかめ、去っていくおじいさんを見て、リーフが俺を見る。
その顔を見てリーフの言いたいことがわかった。
俺とリーフは、料理をとってから席について、先にリーフが口を開いた。
「ユウキさん、これってもしかして……。」
「ヒューデット……かもしれないな。ミランの村は食材を届ける時、アレンやリーパー、リーフみたいにここら辺の魔物に勝てる人が届けるんだろ?」
「ミランだけじゃなく、他の村の人達もそうしてます。
ここら辺の魔物は最大でもEランク。でも、ヒューデットはDランク並の強さでしたよね……。しかも、すごい力で、タフでしたし。
もし、複数体いて囲まれていたら……。もしも、帰る時にたくさんのヒューデットに襲われたら……。」
カタカタとスプーンを持つリーフの手が震えている。
そりゃ怖いよな。もしも、今日素材をここに届ける人達がヒューデットに襲われたとしたら。
明日は最悪ヒューデットに囲まれても強引に逃げ切れる。そのための道具を冒険者ギルドで買ってきた。
しかし、明後日のリーフがミラン村に帰る時は、馬車で何時間もかけて帰るらしい。しかも、荷物も大量に積むから、もしヒューデットが襲ってきたら、逃げきれない。
俺よりもランクが上のアレンや、リーパーがいるが、馬車を守りながら、初見での複数体のヒューデットとの戦いだと厳しいものになるだろう。
「俺もついて行こうか?」
俺もミラン村に行き、そこからビギシティに帰る。それなら、俺という戦力が増える。
王都行きの馬車は1週間後に来るらしいから、それまでにビギシティに帰れば、間に合うだろう。
「そこまで迷惑をかける訳には……。それに、アレンさんもリーパーさんもいるし、多分大丈夫です。」
「馬車を守りながらいけるのか?」
「うっ……、ど、どうでしょうかね。」
目を逸らしながら持ってきたスープをすするリーフ。
「おいおい、ユウキ、俺達を舐めてもらっちゃ困るぜ。」
後ろから聞き覚えのある声がし、振り向くとアレンとリーパーがいた。
「話が聞こえたが、新種の魔物がいるんだろ?」
「あぁ、ヒューデットっていう力が強くてタフなDランクの魔物だ。」
Dランクと聞き、リーパーがフッと鼻を鳴らす。
「俺達もDランクだ。それにアレンは、Dランクでも上位のステータスだし、 自分で言うのもなんだが俺もそこそこの力がある。それに、リーフも回復魔法でサポート出来るんだ。大丈夫だよ。」
「そうだな、調子に乗っていると思われるかもしれんが、俺達は強い。そんな魔物いくら来てもこの拳でぶっ飛ばしてやる。」
アレンは、にやりと笑いながら拳を打ち付け、手に持っている巨大な骨付き肉を机の上に置いて豪快にかぶりついた。
「なんか、2人を見ていると大丈夫な感じがしてきました。」
アレンの食べ方を見ながら、リーフは苦笑いをしながらこっちを向く。
「あ、あと私Eランクに上がりましたよ。」
「お、マジか、それはめでたいな!
んで、得意属性は決まったのか?」
「いえ、得意属性はまだのようです。」
「早く得意属性が決まるといいな。それによって戦い方も決まってくるだろうし。」
アレンが肉にかぶりつきながら、アイオンと同じことを口にする。
「明日もステータスが上がるだろうし、その時に決まればいいな。リーフはどの属性になりたいとかあるのか?」
俺もリーフの得意属性がどんなものになるか興味がある。
「そうですね……やっぱり回復魔法が得意なので光属性でしょうか。」
「光属性なら、サポートも回復もできるからリーフにピッタリだな。」
リーパーが自分の持ってきた厚めのステーキを頬張りながら、うんうんと頷く。
その後、俺と一緒にハーパン学園に行くことや、今日の出来事をリーフがアレンとリーパーに話し、満腹になるまで料理を食べた俺達は解散し自分の部屋へと戻っていった。




