5.イカイジンと精霊魔法
ポムは、村人からもらった礼金を数えながら、嬉しそうだ。
一方の俺は、羞恥プレイに加えて、37歳のおっさんが、コロブチカとマイム・マイムの全力ダンスで体力が底をついていた。
更に追い打ちをかけているのが、井戸の周りで子どもたちが「どんじゃらほい! からのマイム・マイム」を楽しそうにやっていることだ。
子どもが子どもらしい遊びに興じているだけなら良いのだが、あれを自分が全力でやったあとだと、すごく精神的にくる。
ぶっちゃけ、ブラックな上司が面倒な仕事を持ってきつつ、嫌味の波状攻撃を仕掛けてきた時より、もっとしんどい。
「いや〜、やっぱ俺の予想どーりになったよねぇ!」
「予想……って、オマエはこの現象がなんなのか、分かってんのかよ?」
俺の問いに、ポムは糸目をますます細くし、耳をピルピルっと嬉しそうに動かした。
「そんなのワカッテルよ! 金が儲かるってことだろ!」
「ホントーに分かってないのか、分かってんのに説明しないののどっちだよ?」
返答いかんでは、いっそ逃げるのもアリなんじゃ? と思いつつ、俺は聞いた。
「やーだなぁ! タイガってば、せっかくの可愛い顔が台無しだよ〜?」
「可愛いってなんじゃ! 37のおっさん相手に、可愛いとかって言葉でごまかせると思ってんのかっ!」
「わかった、わかった、説明するから」
ポムは、子猫が逆毛立ててるのをからかってるみたいな声音で言った。
「僕も詳しいワケじゃないんだけど〜、それって多分、精霊魔法とかゆーのだと思うよ〜」
「えっ? 俺って魔法つかえんのっ?」
「やだなぁ。誰だって、生活魔法ぐらいならフツーに使えるでしょ〜?」
言ってから、ポムは改めて俺の様子をしげしげと見る。
「ねえ〜、タイガってイカイジンかぶれの割に、なんも知らなすぎない? てか、ホントにその目の色、どうやってるか教えてよ」
こうなっては仕方がない。
俺は真実を白状した。
「いや、生まれた時からこの色だ……」
「え〜、そーなの? え〜、じゃあ辺境伯に売った方が高くなったかなぁ」
「直ぐにヒトを売ろうとすなっ!」
ツッコミを入れると、ポムはあっはっはと笑ってから「もう僕の奴隷だし、売らないよ〜」と言った。
「俺のいたところでは、フツーに魔法は使わないんだよ!」
「田舎って、そーいう縛りがあるトコ、あるよね〜。あ、なのに精霊魔法を使っちゃうから、村から追放されたの?」
「もー、そーいう設定でいいよ……」
色々説明するのが面倒になった俺は、げんなりしながら答えた。