3.誤変換と魔法の契約【2】
「タイガの目ってさぁ、どうやってそんな色にしてるの?」
「はっ?」
「変身の魔法でも、そこまで綺麗に瞳を黒くする方法はないじゃん。イカイジンかぶれの連中にやり方を売ったら、一儲けできそうだし」
「イカイ……異界……? 異界人って、フツーにいるのか?」
そういえば、最初に俺を売っぱらうとか言っていた時も、そんな言葉を言っていたような気がする。
もしかして、異世界から転移してくるのが、常識な世界なのか?
と思ったのだが。
「やだな〜、いるわけないでしょ。ってか、イカイジンかぶれがワカンナイの? どんな田舎からきたの〜?」
ポムは、アッハッハッと笑った。
その声音と様子から、イカイジンという言葉は、そのまま "中二病" って意味だってことが、なんとなく察せられる。
「黒目……って珍しいの?」
「なにを今更。フツーはいないからイカレた連中がやりたがるんじゃない」
アッハッハッとか笑っているが、キツネのような糸目のアップルグリーンの目が何色なのか、俺にはわからない。
このままこの話題を続けるのは、いろいろ都合が悪くなりそうだ……と考えた俺は、話をそらすことにした。
「この鳥は、なんだ?」
「なにって、駝鳥を知らないの?」
「知らん。ちゅーか、なんだその名前……」
見た目のダチョウと、チョコ某を混ぜたようなひどい名称だと思ったが、チョコ某がなんだかポムにはわからないだろうから、黙っていた。
それからなんとなく会話を交わしつつ、駝鳥の引く荷駝車は穏やかな森の道をゆったりと進み、ちいさな村に立ち寄った。
住民の頭には、ポム同様にケモノ耳が生えていて、獣人が一般的らしい。
その所為なのか、身長というか体格がそもそもデカくて、集団の中に紛れると、ポムはそこらの優男にしか見えない。
体格だけで見られたら、そりゃ俺なんてイキった子どもに見えるのかもしれない……、あんまり認めたくはないのだが。
ポムは荷台から木箱をせっせと降ろして村の商店からでてきた、たぬきみたいなおっさんと商談をし、それから村の食堂っぽいところに移動する。
どうやら "昼飯時" らしく、そこでポムは休憩を取りつつ、駝鳥に水をやり、自分もメシにすると言い出した。
「タイガには特別に、奢ってあげるから。一緒にランチを取ろう」
と言って、差し出されたのは、丸っこくて茶色っぽい塊と茶色っぽい液体の入った木製のカップだった。
丸っこい塊はパンらしく、二つに割ると中に具が入っている。
一見、カレーパンみたいだが揚げておらず、パン生地にありあわせの野菜炒めを具として包み、オーブンで焼いたものらしい。
むしろ、焼きピロシキの方が近いかもしれない。
カップの中身は強いクセのある匂いがしたが、要するにお茶のようで、かなり渋味が強い。
だが、周囲を見ると皆がそのピロシキもどきとお茶を飲んでいるので、この村の一般的な昼食の風景なんだろう。
そこでピロシキもどきをもぐもぐしていると、向こうから誰かが走ってくるのが見えた。
なんだろうと思っていると、ヒトが集まってガヤガヤし始める。
「僕の、商才の勘が、金のニオイを感じている!」
キタキツネ風の耳がピコーンと立ち上がったかと思うと、ポムは人だかりのしている方へと走っていく。
俺は、唖然とその様子をみていた。




