22.クロワールの最後【1】
しばらくすると、ドタドタと慌てた足音が聞こえ、部屋の扉が激しくノックされる。
「なんだっ! 騒々しい!」
「ボス! イカイジンかぶれの奴、息してませんっ!」
うん、まぁ、中身がお出かけしてるから、そういうことはあるかもなぁ……と、考えて。
俺は、自分の感覚がかなり精霊よりになってきていることに気付いた。
『やべえ、もしかして俺、体に戻れなくなった?』
『かえるの?』
問うた瞬間、俺の意識はものすごい勢いで引っ張られ、気づくと冷蔵庫な倉庫の外に引っ張り出されて、クロワールと部下たちに囲まれていた。
「ふざけんなっ! 生きてるじゃねぇかっ!」
ドスの効いた大平透な声が、それでもかなり焦った声音で、部下をどやしつけている。
「だって、さっきまで息してませんでしたよ?」
「タイガさん。聞いたでしょ? このままだと、息が止まるって話だし、ぼちぼち諦めて、私と契約しませんか?」
俺の顔を覗き込むクロワールは、部下をどやしつけた乱暴さを引っ込めて、再びあの慇懃無礼な笑みを浮かべた。
返事をしようにも、唇がガチガチだし喉はこわばっていて、声すら出ない。
クロワールは俺の手を取ると、契約の紙の上に置き、自分の手も紙の上に置いて呪文を唱える。
だが、俺の心が拒絶をしているからか、契約は成らず弾かれた。
「ちっ、強情な奴だな……」
舌打ちをしたが、再び倉庫に入れては俺が死ぬ……と思ったのだろうか?
どうしようか考えあぐねるみたいに、直ぐに指示を出さずに顎に手を当てた。
「ボスッ! 大変ですっ!」
「なんだ?」
「周囲を、騎士団に囲まれてますっ!」
「なんだとっ?」
驚いた様子で、クロワールは俺を残して部下共々、外の様子を見に行ってしまった。




