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異世界はつらいよ  作者: 琉斗六


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17.秘密の小部屋【2】

 司書は、本棚だらけの図書館の中を突っ切り、一番奥の廊下へとずんずん進んでいく。

 人見知りで事なかれの俺は、その背中に声を掛けられなくて、黙って(あと)に続いた。

 しばらく……と言うか、最奥なんじゃ? と思うほど、奥の扉の前で司書は止まり、扉についているスマホぐらいの大きさのパネルになにかしている。

 魔法で管理された暗証番号か、指紋認証かワカランけども、背中で俺に見せないように隠して操作をすると、鍵が外れる音がした。


「どうぞ」


 中は、かなり狭い。

 公衆トイレの多機能個室ぐらいのスペースに、椅子と机があり、その机の上に一冊の本があるっきりだ。


「まず、こちらをお願いします」


 手渡されたのは、外科医が手術の時に使うみたいな、後頭部で結ぶタイプのマスクと、白い手袋。

 なんだろう? と思っていると、司書もマスクと手袋を着用している。

 俺が慌ててマネして身につけると、それを確認してから、司書は本に向かって手をかざした。

 そしてなんかブツブツ呟くと、本の周りでまるでシャボン玉が弾けるみたいにチカっと光が輝く。


「こちらが、セイジョ様の遺物となります」

「え……、ええっ!」


 てっきり、聖女伝説の書かれた本を読ませてもらえるだけだと思っていた俺は、意味がわからず叫んでしまった。

 だが、辺境伯が思わせぶりに "全部" と言った意味が、急に理解出来る。

 俺は、わなわなしながら机の上の本を見ると、俺でも分かる言語で「Diary」と書かれている。


「こ……、こ……、これ見ていいんすか?」

「はい。そちらの指輪をお持ちの(かた)が見えた時は、こちらに案内するように言われております」


 あわあわしている俺に、司書は続けていった。


「お待ちの(かた)たちに、伝言はございますか?」


 その問いに、俺はハッとなる。

 確かにこれを読み始めたら、ちょっとやそっとの時間で終わる(わけ)がない。


「これ、もちろん持ち出し禁止ですよね?」

「はい。閲覧はこちらの部屋でのみ。貴重な遺物ですので、閲覧時はマスクと手袋の着用が必須です」

「……あの、参考までに、読めるんですか?」


 俺の問いに、司書は首を横に振った。


「私を含め、知る限りで解読出来る(もの)はいません」


 ただ、辺境伯の持つ珍しい宝物として、見たがる物好きが時々いるのだ……と、司書は付け加えた。

 つまり、俺はイカイジンかぶれのイカレポンチが過ぎて、セイジョ様のことまでどっかで調べてきた物好き……と思われているようだ。


「ポム……待たせている二人には、時間がかかるから、先に帰っていてもいいって伝えてください」


 俺の伝言に「承りました」と言って一礼し、司書は部屋から出ていった。

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