14.辺境伯からの誘い【2】
翌日、いつものように現れたスカーレットに事の次第を話し、俺達は三人で登城することにした。
ポムはスカーレットを連れて行くことにいい顔しなかったが、スカーレットの「だって俺は、おまえにちゃんと雇われてんじゃん」の一言で、言い返せなくなったのだ。
呼び出しの書状を持って城に行くと、門番はすんなりと俺達を中に通してくれた。
城門をくぐり、案内された取次の間は、庶民の俺からすると広間だった。
壁にはものすごく巨大な絵画があり、部屋に置かれた調度品はどれもものすごく高そうだ。
部屋には長椅子が置かれていて、そこで座って待っているようにと言われたので、三人で並んで座る。
「緊張するよねぇ」
言ったのはポムだ。
だが、ポム自身が緊張していると言うより、緊張でガッチガチになっている俺を気遣っての台詞のようにも聞こえる。
「しねぇよ。なんも悪いことしてねぇんだから」
神経がクライミングロープ並みにぶっといスカーレットは、余裕な様子で、足を開き腕を組んでどっかりと座っている。
「ご案内いたします、どうぞ」
部屋に小姓みたいな美少年が入ってきたので、なんだろうと思ったら、そんなことを言う。
てっきり、ヤギみたいなヒゲと耳か、もしくは羊みたいな巻いてるツノの生えた、片眼鏡の執事が呼びに来ると思っていたので、驚いた。
ネコ耳の美少年は、俺達を案内して先に立って歩く。
だが、屋敷の中を進むに連れ、俺は妙なことに気付いた
「なあ、ポム……」
「言うなって……」
ポムは、ニヤッと笑った。
最初に出会った時、ポムは辺境伯に俺を売ろうとしていた。
その時の女衒みたいな台詞が、ものすごくリアルに感じる。
なぜって、屋内で働く者が、ことごとく全部 "美少年" だったからだ。
こんなすごい城なら、リアルメイドさんを見られるかも! と期待していた俺は、辺境伯がホンモノのショタコンおやじと知らされただけの結果に、怖気と落胆を味わっていた。




