10.ヤクシー! セイジョ【3】
依頼状を持って訪れた村は、ポムが手紙を見せるとすんなり中に入れてくれた。
到着した村は、なんだかとても落ち着かない。
小麦畑が延々と続くその真ん中に、防衛都市ほどじゃないが堀と土壁で魔物避けの防衛線を作り、住民の家はその内側に建っている。
いざという時、畑は切り捨て村民の命だけは最低限守る……って形になってるっぽい。
村の様子が落ち着かないのは、中央にある広場に村人のほとんどが集まって、がやがややってる所為だろう。
この村の住人は、頭髪が黒と茶色と白のシマになっていて、頭部にはちっちゃくて先端は丸いが、全体に尖った感じのケモ耳が付いている。
シマリス獣人らしく、尻にはもふっとでかい尻尾が生えていた。
広場には朝礼台みたいなものが作られていて、傍には鼓笛隊と呼ぶにはやや貧相な、太鼓と笛を持った村人が三人ばかり立っていた。
集まった村人は朝礼台に向かって各々好き勝手に立っていて、別に整列はしていない。
「なんだろう? 豊穣祭にしては地味な感じだけど……」
「てか、豊穣祭なら季節が早すぎんだろ」
首を傾げているポムとスカーレットに、村長らしきじいさんが話しかけてきた。
「わざわざ起こしくださって、ありがとうございます」
「あの〜、この台とか、なんですか?」
「実はこれから、村に伝わる口伝の祭をするところなのです」
「僕ら、トラブル解決に呼ばれたんですが」
「はい、分かっております。ですがこの解決に保証は無いとのお話だったので、こちらでも出来る手は全て尽くすべきと考えまして、古い祭を復活させた次第で……」
「なんだよ、信用ねえなぁ」
言ったスカーレットの横っ腹を、ポムが肘で強くどついた。
「わかりました。それなら僕らは、お話が出来るようになるまで待たせていただきます」
ポムは物分り良さそうな顔で、村長との話を切り上げた。
「なんだよ。さっさとタイガに踊ってもらやいいじゃんか」
「あっちの言ってるコトを遮ると、心象が悪くなるんだよ! いいから脳筋は黙ってれ」
貴賓席なのか、部外者席なのかわからん、屋根と椅子があるだけの場所に案内されて、俺達は座る。
そこで待っていると、おもむろに太鼓が打ち鳴らされ始める。
「モルデノカージュエダンスアラジョワ!」
台の上に立っている屈強な男が、昆布みたいなカツラを被って雨乞い踊りのような動きをしながら、おかしな呪文を叫ぶ。
すると集まっていた村人たちが、台の男に合わせて、同じ呪文を叫んだ。




