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異世界はつらいよ  作者: 琉斗六


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9.タマゴとトルタとオクラホマ【3】

「ご苦労だったねぇ。はい、これ、約束のトルタ」


 ちょっと同情気味のおばさんは、最初からなんの期待もしてなかったって顔で、俺達を家に招いて昼食を出してくれた。


「結局、ありゃなんだったんだ?」


 鳥を追いかけ回すのを手伝ってくれたスカーレットは、意味がわからないままで、不合理って顔をしている。


「発動しない原因がわかんないと、気軽に次の仕事が請け負えないなぁ」


 ポムは腕組みをして、うんうん唸っていた。

 おばさんが出してくれた "トルタ" は、スパニッシュオムレツみたいな感じの料理で、じゃがいもっぽいものをタマゴで焼き固めた料理だ。

 グロい現場で朝食を吐き戻しはしたが、川で顔を洗った(あと)にポムの生活魔法とやらで綺麗にしてもらっていた俺は、正直に言うとかなり腹が減っていた。

 凹んだ気分も、鳥を追っかけ回すことでヘトヘトになるまで走り回った所為か、かなり改善されている。

 なので、おばさんのトルタはものすごく魅力的だった。


「いただきます」


 悩むポムも、不審顔のスカーレットも無視して、俺はトルタにかぶりつく。


「うまっ!」

「ありゃ、そんなに美味しそうに食べてもらえると、嬉しいねぇ」

「そりゃ、ベラさんのトルタは絶品だし」


 なぜかポムが自慢げだが、自分の知る美味しい料理を紹介して鼻高(ハナタカ)って気持ちはわからなくもない。

 スカーレットも「こりゃうめえなっ!」とか言って、バクバク食っている。

 しかし、鳥がタマゴを生まないってことは、このトルタが作れないってことだ。

 おばさんには、旦那も子どももいるって言うし、村に物資を運んでくれるポムのためにとタマゴを使用された結果、彼らの夕食はタマゴ抜きになるのも可哀想だ。


 と、思った瞬間。

 俺はバッと立ち上がり、外へと駆け出した。


「うわっ、なんだっ?」

「ちょっと、どうしたんだい?」

「あれ〜、急にキタ?」


 驚くスカーレットとおばさんの声の他に、むしろ嬉しそうなポムの声が混じっていたが、俺の体は、まだ食べ足りない俺の気持ちを無視して、鳥小屋へと走る。


「もりのこかげでどんじゃらほい!」


 鳥小屋の前で、俺が踊りだすと、何事かとキジトラ鳥と、サバトラ鳥が集まってきた。

 今回の光の粒は、なんとなく空中からブワッと集まり、二重の輪になった。

 だが、コロブチカの時と立ち位置は異なり、俺は光の粒のヒトを背中から手を取っているようなポーズになっている。

 そして歌い出したのは "わらの中の七面鳥" 。

 つまり今回のダンスは、オクラホマ・ミキサーだ。


「あれは、なんだ?」

「タイガの切り札。ベラさん、これでタマゴを生むようになるよ」


 今までの曲に比べると、ずっとスローでダンスも激しくはないが、しかし散々鳥追いをしたヘトヘトの体には、かなり(こた)える。

 が、フォークダンスが済んだところで、おばさんが頓狂な声を上げた。


「ありゃ、こんなところにタマゴが!」


 どんなストレスでタマゴを生まなくなったのか知らないが、精霊魔法によってその気になった鳥たちは、タマゴを置いて再び散っていき、そこらで虫だの葉っぱだのをつついている。


「ね、僕の言ったとおりでしょ?」

「本当だ。これで久しぶりに、子どもらにタマゴを食べさせてやれるよ!」


 おばさんは大喜びで、籠を取ってきてタマゴを拾って回った。


「なぁ、あれ、ホントにお稚児さんがやったんか?」

「なんかよくわかんない、光の粒は見たでしょ? 折れた車軸も、枯れた井戸もあれで直ったんだから!」


 意気揚々にポムが言う。

 スカーレットは、少々納得できかねる顔をしていたが、それは車軸や井戸みたいな、わかりやすい状態じゃなかったからなんじゃないかと思う。

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