8.異世界洗礼【3】
「ちょっとは落ち着いた〜?」
ポムの問いに、俺は無言で頷いた。
街道から少し外れたところに小川があって、ポムに吐くならここでと言われた。
気分の悪さを我慢していた俺は、朝メシに食った物を全て吐き、それからハンカチを濡らし、顔を拭った。
ポムには、川の水をいきなり飲むなと言われていたので、顔を洗うにとどめたのだ。
濡れた手足やら、汚れた服などは、ポムの "生活魔法" なるもので綺麗にしてもらって、俺はようやく人心地がついた。
そうして、俺が一騒動している間に、スカーレットは穴を掘ってゴブリンの死骸をすっかり埋めてしまっていた。
「すまん、ありがとう」
「いーけど。今度っから、僕の言いつけは絶対厳守だよ〜」
「うん」
なぜか、頭をよしよしと撫でられて、ポムは荷馬車を動かした。
「そのお稚児さん、弱すぎんだろ。過保護だなぁ」
「ただ行く道が同じだけの奴と、話すことなんかないよ」
「はは〜ん、オマエさん。惚の字かよ」
「うっさい。借金取りは仕事だけしてろっ」
スカーレットの苦言に、ポムは悪態を返している。
だが、正直こればっかりは、スカーレットの意見の方が正しいと俺も思った。
「次の村で、お昼休憩にしようね〜」
なんて、ポムは呑気に言っていた。




