8.異世界洗礼【2】
スカーレットは、全く言葉通り元気な奴で、荷駝車に楽々と徒歩でついてくる。
「スカーレットって、ブランシュさん目当てで、ポムんとこの取り立てに来てるのか?」
「あの辺りで、姉さん狙ってない男は、僕以外にいないんじゃないかな?」
「えっ、じゃあポムはブランシュさんのこと、なんとも思ってないんかい?」
「血の繋がりはなくても、姉さんって呼ぶぐらい身近な存在だしね〜。姉さんには幸せになってもらいたいから、僕じゃダメだね〜」
アハハハ〜と、ポムは笑う。
「あんな美人を前にして、そんなこと言えるとは……」
しばらく荷駝車を走らせていると、前に小さな人影がバラバラっと出てくる。
「うわっ! なんだ?」
「あ〜、面倒なの出ちゃったな……」
だが、困り顔で耳がヘニャとなってるポムが、御者台の下からなにかを取り出すより早く、横を歩いていたスカーレットが、前に走り出た。
この荷駝車のスピードは、俺なら小走りもしくは早足ぐらいの速度だが、大柄で元気いっぱいのスカーレットだと、歩いていても追いつくらしい。
防衛都市を出てからずっと、スカーレットは鼻歌交じりだった。
それが、脱兎のごとく飛び出すと、背負っていた大剣を抜き、小さな人影に見えたものたちを、バッサバッサと切り捨てている。
「なっ、なっ、なんだっ?」
びっくりして横を見ると、ポムは荷駝車を止めて、手にクロスボウを構えていた。
「えっ? 撃つの? 撃っちゃうの?」
「スカーレットがやりそこなったのがこっちきたら、撃つに決まってんでしょ。ゴブリン相手に躊躇してたら、こっちがやられるっての」
「こっちこなかったら、撃たない……のか?」
「当たり前でしょ。矢が一本、いくらすると思ってんのさ?」
そうか、矢は放ったらもどってこないもんな……と、変なところが腑に落ちた辺り、俺はかなりテンパっていたようだ。
スカーレットがゴブリンを一掃すると、ポムは御者台から降りた。
そして、俺に「荷駝車から降りないように」と言いつけ、スカーレットの元に走る。
二人が何をしているのか、よくわからなかったので、俺は荷駝車を降りて様子を見に行った。
「うげえっ!」
スカーレットの大剣で切り裂かれ、殴打されたヒトガタの魔物の死骸は、治安の良い現代日本人からすると、あまりにも強烈にグロテスクだ。
二人は道の端に穴を掘っていて、どうやらこれから死骸を埋めるところだったらしい。
俺は衝撃的な光景の所為か、ひどい吐き気と頭痛に襲われて、その場にうずくまる。
「あー、あー、だから待ってろって言ったのに〜。ここで吐かないで、我慢出来る〜?」
「あ〜? なんだ、お稚児さんの坊主、こっち来ちゃったのかよ」
ポムは俺の背中を擦りながら、チラッとスカーレットを見やる。
呆れつつもスカーレットは、いかにも「しゃーないな」って顔で頷いた。




