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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第二章 立国編

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新しい皇帝

 サリオン帝国の街を歩きながら、俺は確かな変化を感じていた。行き交う人々の表情には笑顔が見られ、以前に比べて、活気が戻ってきているように思える。その一方で、貴族の館の以前のような豪華さは薄れていた。サリオン城に足を踏み入れると、さらにその変化がはっきりとわかる。以前は無駄に豪華そうな調度品が並んでいたが、それらはすっかり片付けらている。

 玉座の間の外でハルトが待っていた。いつもながら、柔らかな笑みを浮かべている。


「リバティさん、わざわざ来てくれてありがとうございます。新しい皇帝陛下もお待ちですよ」

「えっ、新しい皇帝って……ハルトじゃないの?」


 ハルトは、驚いたように首を振った。


「何を言ってるんですか。私は王家の血筋じゃありませんし、私が皇帝になったら、誰が商会を運営するんですか?」


 ハルトが当然のように言う。新しい皇帝がハルトではないのなら、一体誰なのだろうか。ハルトに促されて玉座の間に入った瞬間、俺は思わず息を飲んだ。


「久しぶりだねぇ、リバティさん」


 その柔らかく懐かしい声。玉座に座っていたのは、俺がこの世界に来て最初に世話になったオージンさんだった。


「オージンさん!? オージンさんが新しい皇帝なんですか?」


 思わず聞き返すと、ハルトが穏やかな口調で答えた。


「はい。オージン・サリオンさんは、王家の血筋です。もともと、異世界人が託される先は貴族の家、つまり王家の親族と決まっているので、リバティさんを預かってくれたオージンさんも王族の血筋というわけです。ただ、前の皇帝とは対立していた家系にあたるため、これまでは冷遇されていたようですけどね」


 思い返せば、オージンさんの家はかなりボロくて、まさか、王族の家系だなんて思ってもみなかった。ハルトは続けて説明する。


「私は、多くの王家の血筋の方々と直接話し合って、誰が次の皇帝になるべきか考えました。その中で、オージンさんが最も相応しいと判断し、お願いしたんです」


 確かに、あの穏やかで面倒見のいいオージンさんが皇帝になるなら安心だ。玉座に座っているのに、威張ることなく、いつもの優しさがそのままだ。


「いやあ、まさか自分が皇帝になるとは思わなかったよ。こんな私で本当にお役に立てるのか、不安でいっぱいさ。正直、ハルトさんの力がなければ、何もできないんじゃないかと心配しているんだよ」


 オージンさんは相変わらずの謙虚さだ。その人柄が、かえって周囲を安心させているのかもしれない。ハルトが優しく答えた。


「いえ、陛下。すでに素晴らしい成果をあげておられます。まず、貴族への過度な分配をすぐにやめ、軍事資金を大幅に削減したことで、国民が負担する税金は収入の7割から1割に激減しました。そして、城内にあった不要な調度品を売却して得た資金を国民に分配されています。身を切る覚悟がなければできないご判断です」


 ハルトの言葉に、オージンさんは少し照れくさそうに笑った。


「いやいや、うちはもともと国からほとんどお金をもらっていなかったから、特に何も変わらないんだよ。それに、こんな大きな城に住まわせてもらっているだけでも、私には身に余る贅沢だ。お金なんて少しあれば十分生きていけるじゃないか。それより、その少しのお金さえなくて苦しんでいる人たちがいる方が問題だよ」


 もちろん、オージンさんの改革に対して、他の貴族からは反発もあったらしい。だが、ハルトが先導者の加護の影響力で民衆を団結させ、その声に国を守る兵士たちも賛同したため、反発は押し切られたようだ。


「それにしても、リバティさん、聞きましたよ。魔道具を使って魔王を従えてしまうなんて、英雄級の活躍だねえ。やっぱり異世界から来た人は違うんだねえ」


 オージンさんの心から感心するような賞賛に、俺は少し照れ臭くなってしまった。


「いやいや、全ての始まりはオージンさんが俺に魔法を教えてくれたことですよ」


 そう言いながら、俺は少し昔を思い返した。オージンさんは、この世界に来たばかりの俺に丁寧に魔法の基礎を教えてくれた。つまり、俺の最初の師匠でもある。そのおかげで、最初の魔道具であるスライムホイホイを作ることができたのだ。オージンさんも懐かしそうに頷く。


「ああ、そんなこともあったねえ。リバティさんと一緒に魔法の練習をしていたこと、懐かしいねえ」


 あの時間があったからこそ、今の自分があるのだ。さて、思い出話に花を咲かせるのも悪くないが、俺はふと気になっていたことを聞いてみた。


「ところで、イザベル村がサリオン帝国の支配下に置かれる件について、その……どうなりますか?」


 俺の問いに、オージンさんはキョトンとした顔をして答えた。


「はて、イザベル? あそこは昔からこの国の領土ではなく、自治の土地だよ。サリオン帝国がどうこうできるはずがないよ」


 どうやら、例の支配下計画は無かったことになっているらしい。俺はほっと胸をなでおろした。


「それより、今のイザベル村はとても良いところみたいだね。これからはお互いに良いものを交換し合って、仲良くやっていけるといいねぇ」

「ちなみに、他国からの輸入の税金は完全に撤廃しました。これからはイザベル村からどんどん商品を仕入れたいと思っています。」


 ハルトも嬉しそうに言葉に力を入れた。大国との流通が増えれば、イザベル村はさらに発展するだろう。俺はこの二人ならサリオン帝国と上手くやっていけると確信した。

懐かしの恩人との再会です。


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