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魔道具10番 限界突破魔力増幅機

 さっそく、多重限界突破の魔道具を作ることにした。エルマに限界突破の魔道具を十台分刻んで作ってもらい、それらを連携させるのが俺の仕事だ。エルマが作ってくれた限界突破の魔道具は、一台でも相当な大きさで、それを十台分となると、かなり大きな規模の装置になってしまったが、何とか完成させることができた。


 魔道具10番『限界突破魔力増幅機』。


「ヒトはそれぞれ得意なものが違うというが……お主の魔道具師の才能は、まさに神がかっているのう。魔道具の分野では天才賢者である儂をも上回っていると言わざるを得ん」


 エルマが感心したように言う。まあ、俺は元々エンジニアだから、精密な機器制御と連携動作に関しては、誰にも負けるつもりはない。


「これなら異世界転送に必要な魔力は十分確保できるじゃろう。気づいておらんかもしれんが、この魔道具はとてつもなく貴重なものじゃぞ」


 なるほど、これを売ったら大金が手に入るかもしれないな。まあそれは後のお楽しみということにして……


「じゃあ、これを使って元の世界に転移しても問題ないか?」


 俺はエルマに確認する。


「そうじゃな、人体の転送で気をつけることといえば、まず転送先で出現した時に極力障害物にぶつかりにくそうな位置を指定することじゃ。それから、お主の元の世界は時間の流れがこちらと異なるのじゃったな。確か、こちらの五倍の速さで時間が進むのじゃろう? お主はこの世界に来てどのくらい経つ?」

「六年くらいだ」


 俺は答えた。ここに来てもう六年になり、最初は小学一年生くらいになってしまった俺の外見も、今では中学生くらいになっている。


「ならば、その間で元の世界ではすでに三十年が経過しておる計算になるな。そして、その間、お主の肉体も元の世界の時間に合わせて年を重ねておる。つまり、戻った途端、お主の肉体は六十歳を超える年齢になるはずじゃ。覚悟しておくのじゃな」


 俺がこの世界に来た時は三十五歳だったから、ちゃんと計算すると六十五歳か。まだ元気な年齢とはいえ、すっかりおじいちゃんじゃないか。浦島太郎みたいだ。


「そういえば、転送魔法は元の世界でも使えるのか? 向こうに行ったきり戻って来られなくなるって可能性はない?」


 俺はもう一つ気になったことを聞いてみた。


「基本的に魔法は普遍的なものじゃ。理論上、お主が向こうに行けるのであれば、戻ることもできるはずじゃ。ただし、問題があるとすれば……」


 エルマは少し考えてから、続けた。


「お主の元の世界では誰も魔法を使っていなかった、ということであれば、空間に魔力がほとんど存在しない可能性がある。もしそうであれば、向こうでは自然に魔力が回復することはない。つまり、お主の体に蓄えられた魔力と、魔道具の魔力を使い果たしたら、魔法はそれでおしまいじゃな」

「なるほど……」

「万が一のために、エーテル薬を百本ほど持って行くとよかろう。魔力を補充できる手段があった方がいい」


 エーテル薬――魔力回復の貴重な薬で、一本十万ルーンはする高価なものだ。百本なら、ざっと一千万ルーン。これはかなりの出費だが、もし元の世界で魔力を失ってしまったら、戻って来る術もなくなる。万が一の備えとしてここは必要な投資だろう。

 俺は帰還の準備に取り掛かった。エルマからは、元の世界に戻るための詠唱と、再びこちらに戻ってくるための詠唱を聞き出し、しっかり確認する。詠唱を間違えれば、さらに別の世界に行ってしまうかもしれない。ここは慎重に。

 エーテル薬はダガンさんの薬屋に頼んで確保してもらった。さすがに百本ともなるとダガンさんも驚いていたが、しっかり薬を作ってくれた。

 必要になりそうなもの、元の世界から持って来ているパソコンやスマホ、念のため、ある程度の食料も持っていこう。


 準備が整い、いよいよ俺が一時的に元の世界に戻る時が来た。そんな俺を、エルマとミーアが見送ってくれる。ミーアは心配そうに俺を見上げた。


「お兄ちゃん、絶対に帰ってきてね」

「帰って来なければ、向こうで楽しくやっておると考えるからの。一応、気をつけるのじゃ」


 数日で帰るからと、俺はそんな二人に笑顔で手を振った。仮に向こうの世界に2週間いたとしても、ここでの時間は3日かからないくらいだ。そこまで長くはならないだろう。

 そして、いざ、魔力増幅器を稼働させる。俺の体に流れ込む、圧倒的な魔力。何十倍にも増幅された魔力が体を駆け巡り、まるで魔王にでもなったかのような錯覚を覚える。この状態ならどこにでも行けそうだ。いよいよ、詠唱を開始する。


「至れ、彼方の世界ガイア、ユーラシア大陸の東方の島国の都、周囲の最も高き建造物の頂。導くは我と所持品、魔道具10番——」


 転移の魔法陣に古代文字が刻まれていく。同時に魔法陣が光を放ち始める。


「解放、異世界への扉!」


 増幅された膨大な魔力を注ぎ込んだ瞬間、俺の全身は光に包まれた。

30年後の現実世界に出発です。


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