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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章 黄昏編

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戦いの火蓋

 ヴァルハラの外縁に、軍勢が現れる。


 アースガルド軍――およそ五千。ヘルヘイムの魔王軍と対峙したときと、ほぼ同規模の戦力だ。国が動かせる、ほとんどすべての兵力がここに集まっている。


「懐かしいにゃんね。サリオン帝国との戦いの日々を思い出すにゃん」


 リリィが舌をぺろりと舐める。

 思えば、あの時の五千は、リリィ率いる魔王軍を前に、心許なく見えた。

 しかし今は違う。目の前の五千が、ひどく巨大に見える。こちらには、リリィも、魔王グリンもいる。師匠エルマも、ミーアもいる。千の巨人たちに、魔王軍四天王まで揃っているというのに。


 号令に合わせて、五千の兵が一斉に足を止めた。

 その先頭で、ひときわ騒がしい声が響く。


「だーははは! 巨人の大群を率いてヴァルハラを破壊し占拠するとはな! いやあ、本当に自由な奴だな!」


 勇者トオル。

 戦鎚ソードを肩に担ぎ、まるで祭りでも眺めるような顔でこちらを見上げている。豪胆というより、ただ楽しんでいるだけの顔だった。


 その隣に立つ少女が、一歩前に出た。

 白い法衣が風に揺れる。

 少女の声が、風に乗って届いた。


「リバティさん……私は、あなたがこんなことをするなんて、どうしても信じられないんです」


 聖女レイア。

 その言葉には怒りも責めもない。

 戸惑いと、祈りにも近い響きがあった。

 そして、軍勢の後方に一人の男の姿。


 皇帝プラティナス。


 白銀の外套が風に揺れる。

 五千の兵に囲まれながら、その佇まいは他と一線を画していた。

 まるで、この戦場そのものを支配しているかのように。

 この戦場で最も危険なのは、あの男だ。


「皆さん、どうかお願いします……!」


 ミーアが巨人たちの前に出て、必死に声を張る。


「できるだけ、アースガルドの皆さんを傷つけないでください……! 戦うべき相手は、プラティナス陛下だけです!」


「とは言え、これだけの数、避けて進むのは難しいのう」


 エルマが見渡し、眉を寄せる。


「お兄ちゃんはプラティナス陛下のところへ向かってください。他の方たちは私たちで止めます」


 その時、プラティナスが声を張った。


「リバティよ、実に残念である」


 厳かに、ゆっくりと首を振る。


「余はそなたを高く買っておった。そなたの力は、この国を豊かにする。ゆえに、そなたの望むものはすべて与えてきた」


 穏やかな声音だった。


「それなのに、なぜだ。余とそなたで築いたこの国を、なぜ壊そうとする? ハルトを殺め、ヴァルハラを停止させ、そなたは取り返しのつかぬことばかり繰り返している」


 プラティナスは悲嘆に暮れるように告げた。


「この国を災いから守るため――もはや、そなたを排するしかあるまい」


 見事な芝居だ。

 すべての元凶は、お前だというのに。


「プラティナス、国内を見たか?」


 俺は声を返す。


「ヴァルハラの魔力搾取で、人々は生気を失っていた。他国もアースガルドの脅威に萎縮している。この国の災いは、どっちだ?」


 しかし、プラティナスが怯むことはない。


「すべては国を守るためだ。魔力を集めれば、大きな敵にも対抗できる。その力で他国を牽制するのも、自国を守る方法であろう」


 プラティナスの言葉に、周囲の兵士たちも頷いていた。


「国民は皆、理解してくれている」


 彼を疑う者は、一人もいない。


「さあ、話はもうよいだろう。ヴァルハラは取り戻させてもらう」


 プラティナスが静かに手を差し出したのが合図となった。

 アースガルド軍が、一斉に前進する。槍と盾がぶつかる音が戦場に広がった。


「すみませんが、ヴァルハラには入れさせません!」


 ミーアがバジリスク形態に変身し、石化邪眼が解き放たれた。

 光線が戦場を走り、前列の兵士たちが次々と石像へ変わっていく。


 だが――


 プラティナスが、ただ一度だけ視線を向ける。


 その瞬間、兵士たちは何事もなかったかのように元の姿へ戻っていく。

 皇帝プラティナスの奇跡の力だった。

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