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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章 黄昏編

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勝てない戦い

「モレク様……ご無事でしたか……」


 丑人たちがざわめく。恐怖が混ざった声。膝が震えている。


「ブモゥゥゥ」


 モレクの低い咆哮が響くと、丑人たちはその場に膝をついてしまった。


「わわわ、皆さん、もう過去の鎖に縛られる必要はありません! 奪われた過去ではなく、自分たちで切り開ける未来を目指しましょう!」


 ミーアの声が、重苦しい空気を切り開いた。

 丑人たちは一人、また一人と立ち上がる。恐怖は完全には消えていない。それでも、目には確かな意志が宿る。


 リリィ、エルマ、ミーアと丑人たち。それぞれが魔王と向き合っていた。


 リリィとメリー。そこには白く甘い霧が周囲に広がっていた。

 霧は視界だけでなく、思考まで鈍らせるようだ。わずかに沈むような感覚を、リリィは足を踏み締め、振り払った。


「なっ……霧の中に目があるにゃん」


「あらあら、そのまま私の目を見て。安らかな眠りに包んであげる。それが運(メー)


 リリィは目を閉じ、嗅覚だけで相手の位置を読む。

 黒い残像を一直線に走らせ、メリーの外套を裂いた。


「まあ、乱暴ですのね」


 霧の中に、瞳の数がさらに増えた。


 エルマとガルムは正面衝突。

 二人の深い因縁が、今ここでぶつかる。

 圧縮された空間が弾み、ガルムの斬撃がそれを引き裂く。エルマが二人の距離を引き伸ばすとガルムは素早く詠唱した。


「――彼方なる虚空より、時すら凍てつく絶対零度の白氷……」


冥王氷塊(ハデスフリーズ)!』


 あらゆるものを凍結させる白銀の氷塊が現れる。


「俺も最上級魔法を習得したんだぜ。おめえに負けないようにな」


「ほう、そうか。儂は十二で習得したがな」


「ほざけ。牙王の咆哮!」


 ガルムが氷塊を咆哮に乗せて飛ばす。


『空間⭐︎反転』


 しかしエルマは冷静に魔法を重ねた。


「音速で飛ばそうと、反転させれば音速で返るだけじゃ」


 氷塊が軌道を反転し、ガルムへと浴びせられた。ガルムの動きがわずかに鈍る。


空間⭐︎圧縮(メトリック・プレス)


 その隙を逃さず、エルマの得意魔法が発動。周囲の空間が一気に収束し、ガルムの身体を拘束する。


「師匠、さすがだな!」


 拘束は完璧――のはずだったが……


 俺の視界がノイズに覆われる。

 次の瞬間、ガルムは無傷で別の場所に立っていた。凍結も圧縮も、なかったことにされている。

 ウルドの力だ。過去が、また改変された。


 一方、リリィも詠唱していた。


「黄泉の門よ、今ここに開かれよ。冥府の深淵より来たれ、終焉に潜む終焉の刃!」


 闇が収束し、放たれた『死の鎌(デス・サイズ)』がメリーの身体を両断する。


「くはっ、これは……絶(メー)……」


 ――しかし、ノイズ。


 メリーは微笑んだままだ。


 これでは、いくら魔王たちを倒しても意味がない。ウルドを止めない限り、戦果はすべて、なかったことにされる。

 だから、目的は最初から魔王を斬ることではない。ヴァルハラを止めることだ。


 俺は戦線を離脱し、ヴァルハラの中枢へと駆ける。魔力が収束する中心部。魔道具の心臓。

 その中心部への扉が見えた。あの中の核を破壊すれば、ヴァルハラは止められる。


「至れ我が工房、顕現せよ、魔道具二十二番!」


 俺は展開した魔法陣を扉へ滑り込ませようとした。


「ブモッ!」


 しかし、轟音とともに、巨体が天井から落下する。俺の視界が遮られた。


 モレク。


 そして次の瞬間、白い毛が視界を覆う。霧の奥から、メリーが歩み出る。


「あらあら、ヴァルハラは止めさせませんよ」


 わずかに遅れて、リリィ、ミーアも駆け寄った。

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