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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章 黄昏編

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ヴァルハラ突入

 今の俺たちの目的はヴァルハラを止めること。それに集中する。


「久しぶりにうまい味付き肉が食べたいにゃん」


 屋台の匂いに、リリィが鼻をひくつかせる。


「個別行動は避けてくれ。自由度が増えれば、その分だけウルドにつけいられる隙を与えることになる」


 ウルドは五分五分で起こり得た過去の出来事を改変できる。不確実な分岐が多ければ、それだけ改変される可能性が高まる。


「やれやれ。儂も茶の一杯くらい楽しみたいところじゃが……仕方あるまいのう」


 エルマは俺が渡した行動マニュアルを広げた。

 そこには物事の判断基準が簡潔に記されている。


・目的達成を最優先

・生命維持の危険がある場合は即時回避

・仲間の生命維持も優先して良い

・上記を除き、独断で予定変更をしない

・想定外が起きた場合は最小行動で停止し、指示を待つ

・判断に迷ったら『目的への最短距離』を選ぶ


「これ全部、守るのかにゃん?」


「ああ。全員が同じ基準で動けば、可能性の揺らぎは小さくなる。だが、それほど突飛なことは書いていないつもりだ」


 ヒトの思考ほど曖昧なものはない。その時の感情や周りの状況で判断は簡単にぶれる。

 ならば、その曖昧さを削る。全員の判断基準を固定し、どんな状況でもできるだけ同じ行動を取るようにする。

 分岐を減らせば、ウルドによる改変の余地も減るはずだ。


 やがて視界の先に、巨大な構造物が現れた。


 ヴァルハラ。


 白銀の塔が幾重にも連なり、中央の主柱へと集束している。空へ突き出た主柱の上部では、巨大な環状装置がゆっくりと回転していた。

 塔の外壁には無数の導管が走り、淡い光が脈打つように流れている。これは、街の各所から流れてくる魔力の流れだ。それが絶え間なく主柱へと流れ込んでいく。


「以前と比べて魔力量が桁違いじゃな。よくここまで集めたものじゃ」


 エルマが目を細める。だが、これは皆の犠牲の上に成り立つ結果だ。

 国民全員の力が、ここに集約されている。


 パレードに扮した団体のまま正面入口へ向かうと、衛兵が槍を交差させた。


「ここは関係者以外、立ち入り禁止です」


「まあ、当然にゃんね」


 リリィが肩をすくめた。だが、ここまで来られれば偽装はもう十分。パレードはここまでだ。


 俺は仮面を外し、衛兵と目を合わせた。


「俺だ。通してもらう」


 俺の顔を見た衛兵が目を見開く。


「だ、大臣様――」


 言葉が終わる前に、冷たい光が走った。


 石化邪眼。


 衛兵はその姿勢のまま、動かぬ像へと変わる。


「す、すみません……必ず元に戻します。これは世界の歪みを正すために、必要なことなのです……」


 ミーアが謝罪しつつ、さらに光を走らせる。

 俺たちは一気に内部へ踏み込む。

 警備兵たちがざわめき、緊急鐘の音が鳴り響いた。


「侵入者だ! ヴァルハラを守れ!」


 武器を構える衛兵たちは、次々に石になっていった。


「こいつは凄ぇ。動きを止める最適な方法じゃねえか」


 グリンも感心している。

 無傷で制圧するなら石化が最適だ。ミーアは謝罪しながらも容赦なく視線を走らせる。


「ヴァルハラは、命に代えても守ります!」


 そこへ、聞き覚えのある鋭い声が響いた。

 嫌な予感。


「ホワイト・オーダー・メイド!」

「ブルー・マー・メイド!」

「グリーン・チェック・メイト!」

「レッド・グレ・ネイド!」

「ブラック・ダイナ・マイト!」


 ……またこの名乗りか。


「我ら、ヴァルハラを守護する戦乙女! ヴァルキュリエ・イン・アース!」


 かつてのメイドたちがヴァルキュリエとなり、魔力を帯びた鎧をまとい立っている。


「リバティ様ですか!?」


 俺を見て、驚きと警戒が交錯する。


「ああ。事情があってヴァルハラを止めに来た」


「リバティ様であっても、ここは譲れません。ここはアースガルドの心臓です」


 彼女たちは一斉に武器を身構えた。足元に魔法陣が展開し、淡い光に包まれる。


 次の瞬間、ミーアの石化光線が放たれた。


 だが、五人は散開する。床を蹴り、壁を踏み、高く跳躍。光線を軽やかに回避する。


 常人離れした身体能力。


 訓練だけではない。おそらく、ヴァルハラの魔力を注がれ、強化されている。

 ――本気でやるつもりだ。

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