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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章 黄昏編

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敗北

 転送魔法の光が収まると、肌に感じた森の空気は、ひどく冷たかった。


「どういうことだ……なぜ遺跡にモレクがいた」


 俺の声は乾いていた。


「まるで、儂らの動きを知っておったかのようじゃったな」


 エルマは鋭い視線のまま、考えているようだった。


「それに……確かに倒した。あの衝撃は、手応えがあったはずなのに……」


「うむ。じゃが、倒した後の奴の体は変質しておった。縮み、色が変わり、あれは同一個体とは思えぬ」


「戦っていたのは別の丑人だったのか……影武者みたいな……」


「しかし、力は本物じゃった。間違いなく、上位の魔王のものじゃ」


 ふと思考を逸らせる。

 鉱山側はどうなった?

 理屈では、モレクが遺跡にいたなら、あちらは手薄だったはずだが――

 相手は理屈の通らない存在。何やら胸騒ぎがする。


 そのとき――


 白くふわふわした毛並みの女性が、森の奥から駆けてくる。


魔科学術師(トリックスター)さん……見つけました。とても大変なんです」


 息を乱しながら駆けてくるメリーだった。

 普段は柔らかな声音の彼女が、明らかに慌てている。


「何があった?」


 返ってきた言葉は、俺の嫌な予感を踏み越えてきた。


「鉱山の部隊は……壊滅です。現れた沈黙の巨蹄(サイレントフーフ)さんによって、冥府の女王(ヘルクイーン)さんと金色の豪鬼(ゴールデンオーガ)さんは拘束されてしまいました」


 どうしてそんな状況になる? 思考が、一瞬止まる。


「……待て。モレクが、鉱山にいた、っていうのか?」


「はい……間違いありません。私もこの目で見ました」


 俺たちは、遺跡で確かにモレクと相対していた。

 その魔王が――鉱山にも出た?

 それが本当なら、モレクは複数体存在することになる……


「リリィとグリンが拘束された……ということは、ミーアは?」


「何とかその場から逃れられたようです……それは私も、ですが……涙(メー)


 ミーアの無事は願いたい。

 それにしても、リリィ、グリン、メリー。魔王が三名。さらにミーア。それだけの戦力があって、モレクに敗れたというのか。


 確かにモレクは強かった。

 だが――そこまでの差になるだろうか?

 俺はさらに詳しい説明をメリーに求めた。


「はい……」


 彼女は息を整え、鉱山での戦いの様子を語り出した。


「最初は優勢で、丑人さんたちを圧倒していました。でも……沈黙の巨蹄(サイレントフーフ)さんが現れてから、空気が変わりました。突然、あらゆる音を、消されたのです」


 俺も体験したあの能力か。


「周囲一帯が無音になり、冥府の女王(ヘルクイーン)さんも、金色の豪鬼(ゴールデンオーガ)さんも、私も、あらゆる精霊魔法が、すべて封じられてしまいました。私なんて、魔法が使えなければ、身体能力はただの羊ですから」


 メリーは自虐的に肩をすぼめた。


「その状況でも、冥府の女王(ヘルクイーン)さんと金色の豪鬼(ゴールデンオーガ)さんは体術で応戦しました。でも……」


 そこで言葉が詰まる。


「あの巨体を前に、力負けでした」


 静かに告げられた敗北。確かにここまでは理解できなくもない。


「そのときミーアは?」


 だが、俺は重ねて問う。

 あいつの石化邪眼や毒霧は、無詠唱の能力。沈黙の影響を受けないはずだ。

 メリーは、わずかに視線を彷徨わせた。


「ミーアさんは……実は、早々に戦場を離脱されました。おそらく、沈黙の巨蹄(サイレントフーフ)さんとの力量差を悟られたのだと思います。ミーアさんは強いです。ですが……魔王ではありませんから。それは、自(メー)


 その先の言葉を、俺は飲み込んだ。

 メリーの話が本当なら、古代遺跡と鉱山、どちらのモレクも本物としか思えない。


「それで、拘束されたリリィとグリンがどうなっているのか分かるか?」


「それが……」


 メリーは言い淀みながら続けた。


沈黙の巨蹄(サイレントフーフ)さんは、

 冥府の女王(ヘルクイーン)さんと金色の豪鬼(ゴールデンオーガ)さんを――公開処刑されると宣言されたんです……」


 空気が凍ったようだった。

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