表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章 黄昏編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

230/274

想定外

 魔力を解放し、転送の魔法陣を二つ同時に展開する。


「ホワイル――転送の門。百メートル上空へ。此の地の巨岩を――エンド!」


 輝いた魔法陣から岩塊が姿を現し、自由落下の繰り返しを始める。

 加速させるには時間が必要だ。十分な威力まで高めるには十秒。できれば十五秒。


 だが、そんな俺の都合を、モレクが待つはずもない。

 俺の三倍はあろう歩幅で踏み込み、距離が一気に詰まる。


空間⭐︎湾曲(ディストーション)


 エルマは再び空間を歪め、迫り来るモレクとの距離を引き離す。


「これなら楽に十五秒は稼げるじゃろう」


 だが、現実は甘くなかった。

 空間が歪んでも、モレクは足を止めない。

 左右へ鋭く跳び、回り込もうとしてくる。


 エルマの『空間⭐︎湾曲(ディストーション)』の魔法も万能ではない。

 引き延ばせるのは、魔法陣前方の限られた範囲だけだ。

 それを見抜いたモレクは巧みに歪みから抜け出そうとしてくる。


「……くっ、まだ、五秒か」


 エルマは慎重に魔法陣の向きを変え、モレクの動きに追従する。


「読みを外せば一瞬で詰められそうじゃ」


 モレクは不規則に踏み込みの角度を変え、フェイントをかけるように左右へ跳んでいる。

 明らかに、歪みから外れることを狙っている。この魔王、無口だが、なかなかの頭脳を持っている。


「くっ……!」


 エルマの額に汗が滲む。

 わずかな揺らぎで、モレクとの距離が一瞬で縮まり、また引き伸ばされる。

 エルマは補正を繰り返し、空間の歪みを維持し続ける。

 だが、次の瞬間には――


 モレクが、大きく横へ跳んだ。


「いかん、外したか!」


 歪みの外に飛び出し、距離が一気に詰まる。


「師匠、今だ!」


 俺は叫んだ。もう十分だろう。


空間⭐︎圧縮(メトリック・プレス)!』


 そこでエルマは即座に魔法を切り替えた。

 モレクの周囲の空間が一気に押し潰され、見えない壁に挟まれたように、巨体の動きが、ほんの一瞬止まった。

 狙いどおり。

 俺は、加速していた巨岩の速度ベクトルを切り替える。


隕石射出メテオ・インジェクション!』


 赤く灼けた岩塊が、空を裂いて撃ち出された。

 完全に息を合わせた一撃。回避は不可能。

 拘束されたまま、モレクは正面からそれを受けた。

 轟音と共に、巨体が文字通り、弾け飛んだ。


「……やったか?」


 お約束なセリフをこぼしつつも、俺たちは警戒を解かず、モレクに歩み寄る。


「完全に骨格まで粉砕されておるようじゃの。――しかし……」


 エルマの声が、わずかに陰った。


「こやつの体、少し縮んでおらんか?」


 言われて俺も、その事実に気づく。


「確かに。それに、さっきまで真っ黒だったはずの体色が……今は、茶色に見える……」


 嫌な予感が、背中を駆け上った。


「――いけないっ!」


 体が反射するように飛び退いた、その瞬間。


「ブモォッ!」


 叩きつけられた斧が、大地を割った。

 さっきまで俺たちが立っていた場所に深い亀裂が走り、地面が沈み込んだように見えた。


 なんという重たい攻撃。


 ……だが、おかしい。

 確かに、俺のあの一撃はモレクに直撃したはずだ。

 なのに、目の前にいる魔王モレクは、まるで負傷している様子もない。

 理解が追いつかず、思考が空回りする。


「師匠……ここは、一旦引こう。あまりに、想定と違いすぎる」


 俺の声は、自分でも驚くほど動揺していた。


「……うむ。今は、それが賢明のようじゃな」


 エルマも否定しなかった。

 俺たちは一瞬だけ視線を交わし――

 次の瞬間、転送魔法が展開された。


 ――撤退。


 徒労感と背中に貼りつく悪寒を残したまま、俺たちは戦場から離脱した。

『面白いかも!』『続きが気になる』と思った方、ブックマーク登録や↓の『いいね』と『★★★★★』をポチッとしていただけたら、それだけで作者は歓喜に満ち溢れ執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ