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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章 黄昏編

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創造と還元

 グリンの話を聞き、俺は少し思案した。


「丑人のせいで鉄が足りない、か。師匠、創造魔法(ケン)で鉄を作れないのか?」


 俺の問いに、エルマは静かに首を横に振る。


「金と同じじゃ。鉄そのものを創造魔法で生み出すことは難しい。じゃが、性質の近いものなら、鍛錬次第で形にはなる」


 俺は試しに創造魔法を展開し、魔力を流し込んでみる。

 創造されたのは、白く薄い、剣らしき形のものだった。

 それを拾い上げたグリンは、ひと目見ただけで鼻を鳴らした。


「こりゃ軽すぎる。それにすぐに折れそうだな。これでは玩具と変わらねえ」


 ――やはり、そう都合よくはいかない。

 生み出せないなら、別の道を探ってみよう。


「昔は鉱山の鉱石から鉄を精錬していたんだよな。錆びついて使えなくなった鉄の道具は残っているか?」


「ああ、それなら一箇所に集めてある。やがて土に還るだろう」


「なら、それを再利用してみるか。鍛冶の炉があるなら借りてもいいか?」


「鍛冶屋ならある。だが、錆びた鉄を溶かしても脆い鉄にしかならねえ。試したことはあるが、使い物にはならなかった」


「まあ、それでも一度、任せてくれ。鍛冶職人の手も借りたい」


「魔科学術師が、どんな手品を見せてくれるのか……まあ、止めはしねえ。好きにやってみろ」


 こうして俺は、亥人の鍛冶屋へ案内された。

 土と石で組まれた簡素な炉だが、問題はない。

 俺は錆びついた刃や農具を持ち込み、鍛冶職人たちに指示を出した。


 やがて完成したのは、再利用した鉄を叩き直した一本の剣だった。

 ちなみに、柄の部分は創造魔法で作ってみた。

 刀身の柄の内部に収まる部分――(なかご)をピッタリ覆うように柄を生成できるので、組み立てる工程は不要で、がたつきも一切ない。


 グリンはその剣を受け取り、確かめるように刀身を眺めた。


「……確かに見た目は悪くねえが……問題は強度だ」


 グリンが指示を出し、亥人に従来の鉄剣を運ばせる。

 力を込めて刃と刃を打ち合わせると、折れたのは、再利用した鉄の剣ではなく、普通の鉄剣の方だった。

 グリンは思わず目を見開く。


「……こりゃあどういうことだ? 錆びた鉄の方が、強えってのか?」


 俺は簡単に説明する。


「溶解した鉄に、木炭を混ぜたんだ」


 錆びた鉄は酸化鉄だ。

 そこに炭素を加えれば、酸素は炭素と結びつき、二酸化炭素となって抜ける。

 その結果、鉄は還元され、元の性質を取り戻す。


「炭を……それだけか? いや、それだけでここまで強くなる説明がつかねえ」


 納得のいかない顔をしているグリンに、俺は説明を続けた。


「さらに、炭素が混ざることで、鉄はより硬く、粘りを持つようになる。その状態の鉄を、(はがね)と呼ぶ」


 グリンは、改めて剣を掲げ、刃の色合いを確かめた。


「……言われてみりゃ、確かに少し鈍い色をしてやがるな。これが――鋼か……」


 剣を見つめるグリンの声には、戸惑いと同時に、抑えきれない期待が滲んでいた。


 俺の元の世界でも、鉄に炭を加えると強くなること自体は、古代から経験的に知られていた。

 だが、その原理が解き明かされたのは、まだ最近の話だ。

 原始の世界に近いヨトゥンヘイムでは、一般的ではなかったのだろう。


「いやぁ……正直、これは助かった」


 錆びた鉄を再利用する術が確立したことで、ホグフォードの鉄不足は、ひとまず緩和された。


「魔科学術師。これは大きな借りだ。いつか必ず返す」


「大したことはしていない。それに、鉱山を丑人に取られたままでは、根本的な解決にはなっていない」


「……まあ、それはそうだな」


 グリンは短く息を吐いた。


「いずれ、丑人どもとは決着をつけなきゃならねえ」


「それはいずれにしても避けられん」


 エルマが静かに口を開いた。


「儂らが次に目指す古代遺跡は、丑人の縄張りにあるからのう」


 話は、次の局面へ進み始めていた。

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