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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章 黄昏編

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亥人の宴

 その夜、魔王グリンは俺たちのために、豪勢な宴を整えてくれた。

 卓を埋め尽くすのは、大型獣の肉料理が中心だ。

 豪快に切り分けられた肉は、圧倒的な存在感を放っている。


「わわわ……なんという巨獣のお肉……この一片だけで、私のお腹ははじけちゃいそうです……」


 ミーアは積み上げられた肉を見て、困惑と期待が入り混じったような顔をしている。


「相変わらず、ここの料理は……優雅さとは程遠いのう」


 エルマは卓を見渡し、どこか懐かしそうに苦笑した。


「なんだ、エルマの姉貴は戌人だろ? 戌人と言えば、肉は好きなはずじゃねえか」


 グリンは言いながら豪快に皿に取った肉を噛みちぎった。


「嫌いではない。じゃが……もう少し、繊細な味付けをじゃな……」


「肉なんてのは、程よく焼いて塩を振りゃそれだけで十分旨えんだ。味を変えたきゃ、別の生き物の肉を食えばいい」


「そもそも、その『程よく焼いて塩を振る』食い方を教えたのは儂じゃろうが。三百年前、儂がここへ来た頃、お主らは生肉をむさぼっておったではないか」


「おお、そうだったそうだった!」


 グリンは思い出したように声を上げ、何度も頷く。


「前に姉貴が旨い肉の食い方を教えてくれたおかげで、オレらの人生、十倍は幸せになったぜ。あん時は本当に世話になった!」


「まったく……」


 口では呆れながらも、エルマはナイフとフォークで切り分けた肉を黙々と口へ運んでいた。

 肉自体は、確かに旨い。


「アースガルドの料理も美味かったにゃんが、このでかい肉もなかなかにゃん! まさに素材の味を活かしているにゃん!」


「おお、分かるか冥府の女王(ヘルクイーン)! これこそヨトゥンの味ってやつよ!」


「ビャコウにも食わせてやりたいにゃん」


 肉食派同士が、がっちり意気投合している一方、


「あらあら……私、お肉は苦手でして……。お魚ならまだ良いのですが……お野菜も、見当たりませんわねえ」


 未人のメリーは皿を前に、微笑みながら困っていた。


「そういや、エルマの姉貴。あれからヨトゥンヘイムには一度も来なかったのか?」


 グリンが盃を傾けながら尋ねる。


「ああ。ここの古代遺跡は、すべて巡ってしまったからのう。それからは、論文をまとめることに時間を使っておった。それと、最近はうっかり石になっておった」


「そうか……姉貴も、いろいろあったんだなあ」


 グリンはしみじみと呟いた。


「それで、グリンよ。お主の方は、何か変わりはないのか?」


 エルマの問いに、グリンはすぐには答えず、杯を一気に飲み干した。


「まあ、回っちゃいるが……最近は丑人どもとの縄張り争いがきつくてな。正直、落ち着かねえ」


「丑人……魔王モレクが束ねているにゃん?」


 その名が出た瞬間、グリンの表情が曇る。


「ああ、あの野郎だ。実は、オレらが長年使ってきた鉱山を丑人に押さえられてな。鉄の入手が難しくなった」


 グリンが顎先で示した先には、錆びついた武器が積まれていた。


「狩りも畑仕事も、鉄が必要だ。錆びた鉄ではすぐに折れちまう。鉱山を取り返したいのは山々なんだが……言いたかねえが、モレクは強い……」


 グリンはしばし沈黙した。


沈黙の巨蹄(サイレントフーフ)、モレク。七人の魔王でも最大の体躯。多くは語りませんが、その少ない口数の中に底知れない恐ろしさを感じますわね。それはつまり、深(メー)


 メリーの声は静かだが、言葉は重かった。


「私も、正直あいつとは関わりたくないにゃん」


 リリィでさえ、珍しく及び腰だが――俺も同感だ。

 魔王議会で対面したモレクは、明らかに他とは異質な存在だった。


「別の大陸から鉄を仕入れる手はある。だが、ここまで運ぶだけで相当な手間だ。このままじゃ武器が足りなくなっちまう」


 グリンは短く息を吐いた。

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