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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章 黄昏編

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創造魔法

 無限を意味する竜、『アナンタ』の彫刻が施された扉を開くと、内部は静謐(せいひつ)な空間だった。

 その中央、台座の上に、無機質な光を放つ金属製のキューブが浮かんでいる。

 これこそが、古代の叡智と呼ばれるものだ。

 俺が手を伸ばして触れた瞬間、脳裏に新しい魔法陣の形が流れ込んでくる。

 これが――『創造魔法(ケン)』。


「何の役に立つかは分からんにゃんけど、せっかくだから触っておくにゃん」


 リリィが軽い調子で古代の叡智に触れ、続いてミーアとメリーもキューブに触れた。


「不思議です……頭の中に模様が流れ込んできて……目を閉じても、くっきり見えます。まるで、私の中に刻み込まれたみたいです……」


 ミーアは少し陶酔したように呟く。


「師匠。で、これはどうやって使うんだ?」


「まあ、見ておれ」


 エルマは静かに手を掲げ、創造の魔法陣を顕現させた。

 魔力が注がれると、魔法陣の周囲に気流が集まり、淡く輝き始める。

 次の瞬間、魔法陣の中心から白い小さな立方体が生まれ、ぽとりと床に落ちた。


「練習すれば、誰でもこの程度のことはできるようになる」


「……で、これが何の役に立つにゃん? 私の地獄の業火(ヘルフレイム)の方が、百倍は派手にゃんよ」


 リリィが呆れたように立方体を拾い上げると、グリンも相槌を打つ。


「そうだろ? だからオレぁ言ったんだ。精霊魔法の方が、よっぽど実用的だってよ」


 だが、エルマは涼しい顔のまま、淡々と説明を続けた。


「精霊魔法は、別の空間から自然の力を取り出す魔法じゃ。一方、この創造魔法(ケン)は――無から物質を生み出す魔法。攻撃力だけを見れば、精霊魔法には到底及ばん。じゃが、使いこなせば――自分の求める形を、創造できる」


「あらあら、物質を創造、ですか……。でも、必要なものは精霊魔法で呼び出せますし、この魔法、やっぱり用途不(メー)……」


 メリーも、腑に落ちない様子だ。


「自分の求める形を創造……か」


 その言葉を反芻した瞬間、俺の中で噛み合った。

 なるほど。これは、魔道具師のためにある魔法だ。


「材質も、指定できるのか?」


「多重魔法や詠法の魔法と組み合わせれば、硬度や性質の調整も可能じゃ」


「じゃあ……もしかして、金も作れるのか?」


「なんと、それなら凄いにゃん!?」


 俺の質問に、リリィも激しく反応した。


「同じことを考えた者は多い」


 エルマは、少し残念そうに、首を振った。


「一時期は錬金術として盛んに研究もされた。じゃが――金の創造に成功した者は、今のところ、おらん」


「やっぱり無駄魔法にゃん!」


 ――それでも、俺にとっては十分すぎる。


 材質と形状を制御し、必要な形の部品を、必要なだけ生み出せる。

 魔道具師として、これ以上適した力はない。


「で、これで用は済んだのか?」


 グリンが話をまとめるように口を開いた。


「まあ、はるばる来たんだ。少しはオレらの国にも寄っていけ」


 こうして、エルマとの再会を祝う名目で、俺たちは亥人の街へ招かれることになった。


 グリンはどうやら、そこまで悪い魔王ではなさそうだ。


   ◇ ◇ ◇


 亥人の街ホグフォードは、やはりすべてが大きかった。

 ヨトゥンヘイムのあの大木で作られた家屋は城砦のように重厚で、竜の攻撃にも耐えられそうだ。

 だが、荒々しい外見とは裏腹に街の空気は穏やかで、他の亥人たちも、俺たちを快く迎えてくれた。


 突然の来客、申人と寅人、未人の魔王。

 そして、戌人の仙人。

 なかなか珍しい顔ぶれのはずだが、意外にも、一番の注目を集めていたのは、巳人のミーアだった。

 この地では、蛇は神の使いとされ、特別に神聖視されているらしい。

 それに加えて、ミーアは、毎日見慣れている俺から見ても十分に可愛いのだから、仕方がないのかもしれない。


「わ、わわわ……ち、違います……! 私は拝まれるような存在ではありません……ただの、にょろにょろした小さな存在で……いずれ闇に堕ちるかもしれない、か弱き巳人ですから……!」


 ミーアは両手を振って必死に否定するが、亥人たちは、ますます彼女の周りに集まってきていた。


 魔王グリンが統治するこの街での滞在は、案外思い出深いものになりそうだ。

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