第四章 エピローグ
再び、未人の街メープルタウン。
ノルンの神託所を訪れている間、ここで待たせていたミーアとも合流し、俺たちは今後について話し合った。
「わわわ……リバティお兄ちゃんの話が、本当だとしたら……あの、良心の塊みたいな皇帝陛下が……全部、嘘でできてるってことですね……?」
ミーアは驚きでポカンと開いた口を、慌てて両手で隠した。
「優しくて、誰にでも公平で……あんな人が……」
最後まで言えず、ミーアは視線を落とした。
ずっと信じていたものに裏切られる……それは彼女にとって残酷な真実に違いない。
「善人の仮面を被ったラスボスなんて……こんな王道中の王道と言えるような展開、認められません!」
……そっちか。
「……結果的に、プラティナスに真正面から喧嘩を売ってしもうたのは失策じゃな」
エルマが、静かにそう切り出した。それは俺も否定できない。
プラティナスの矛盾を突き、追い詰めるつもりが――追い詰められたのは、俺の方だった。
結果として、俺たちは完全にアースガルドと敵対することになってしまった。
皇帝プラティナスをどうにかできればいいが、人々は彼に絶対の信用を置いているし、あの奇跡の力の前には実力行使も難しそうだ。
とはいえ、アースガルドを建国した張本人としての俺の影響力が、完全に消えたわけではない。
どうにかして、プラティナスを孤立させる方法はないだろうか。
「正直なところ……ノルンとの対話を経験しなければ、今でもご主人様の話、信じられなかったと思うにゃん。内部の人間に真実を理解してもらうのは、相当骨が折れるにゃんね」
けれど、リリィの率直な言葉は、その通りだ。
人々を説得しようにも、どうにも俺の方が分が悪い。このままアースガルドに戻っても、再びトオルやレイアたちと刃を交えることになるだろう。
しかも、背後には、過去を司るノルン、ウルドまでいる。仮にプラティナスを打ち倒せたとしても、ガルムの時と同じように、勝利そのものすら書き換えられる可能性がある。
この状況で正面から挑むのは、あまりにも無謀だ。
では、ただ逃げ続けるのか?
否。アースガルドを、このままプラティナスの好き勝手にさせておくわけにはいかない。
それには対抗するための力が必要だ。
世界の理にさえ干渉できるほどの、揺るぎない力が。
「……古代魔法を探しに行こう」
俺がそう告げると、エルマはしばし沈黙し、飲みかけのティーカップをテーブルに置いた。
「ほう、お主も、ようやく魔法の真髄を理解し始めた頃合か。確かに、魔法が不得手なお主でも、古代の叡智に直接触れれば、使えるようにはなるじゃろう」
エルマは納得したように頷いた。
「古代魔法は、儂の知る限り、全部で二十五種ある。これは何度も説明したが、その中で、ヒトに生まれつき持たされるものは……」
エルマは二本の指を立てる。
「昇格魔法と、転送魔法」
昇格魔法――自身の状態や能力を可視化し、条件を満たせばクラスチェンジも実行できる、通称『シカク』。
転送魔法――精霊魔法、神聖魔法、あらゆる詠唱魔法の根幹となる魔法。通称『マル』。
「残る古代魔法は、古代の叡智として記録され、世界各地に散らばる古代遺跡に眠っておる」
遥か昔にヒトから失われた力。だが、取り戻すことはできる。
「そしてリバティ。お主はすでに、輪廻魔法、詠法魔法を習得しておる。今のお主が扱える古代魔法は、計四種。残りのすべてを集める必要はない。じゃが――創造魔法、革新魔法。この二つは、今のお主に向いておると思うぞ」
エルマの自信に満ちた言葉で、俺たちの心は決まった。
俺は、理不尽な運命に抗うための、新しい武器を手に入れる。
こうして俺たちは、新たな旅へと踏み出した。
それがやがて、全世界を巻き込む戦いに繋がることになるとも知らずに。
第四章、完結になります。
次の章の開始まで、少し投稿をお休みさせてください。
『面白いかも!』『続きが気になる』と思った方、ブックマーク登録や↓の『いいね』と『★★★★★』をポチッとしていただけたら、それだけで作者は歓喜に満ち溢れ執筆の励みになります!




