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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第四章 回帰編

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確定した未来

『……どうやら、うまいこと運んだみたいやな』


 神託対話アプリから、軽い調子が響いた。

 ヴェルダンディだ。

 彼女の介入がなければ、エルマが蘇ることはなかった。心から感謝しよう。

 だが同時に、胸の奥に引っかかっているもう一つの人物の顔が浮かぶ。


「……そうだ。ハルトはどうなった?」


 俺とアースガルド軍の騒動の最中に、命を落としたハルト。


 エルマが消滅した過去はもう書き換えられたのだから、それに連なる出来事も変わっているはず。

 だが、返ってきた声に、期待は一刀両断された。


「どうなったも何も、ご主人様がうっかりやらかしたにゃん。今更現実逃避しても、無駄にゃん」


 リリィが、軽くたしなめてくる。


「お主が、アースガルドの皇帝プラティナスと対立し、騒動の最中にハルトは命を落とすことになってしまった。それで……ハルトを蘇らせる術がないかと、ここへ来たのではなかったか?」


 エルマの冷静な説明で状況は理解できた。今の現実は、そうなっているらしい。

 どうやら、エルマが存在している以外の流れは、ほとんど変わっていないようだ。


「ヴェルダンディ、過去は変わったはずだ。なのに、なぜ……それに関連する出来事は変わらない?」


 俺は、食い下がるように問いかける。


『まあそこにも、ウルドが絡んどるんやろ。ほんまに……よう辻褄を合わせられるもんやな』


 ヴェルダンディの声にも驚きが滲んでいた。

 そのときだった。


『そのハルトの死は――もはや、動かしようがありまへん』


 聞き覚えのない声。

 澄んでいて、静かで、それでいて、容赦のない響きだった。


「……誰だ?」


『うちはスクルド。未来を司る、ノルンの一人どすえ』


 ついに、三人目のノルンのお出ましだ。


『それは、確定した未来なんどす。過去をどれほどいじらはっても、どんな足掻きをなさろうとも、必ず、確定した未来に収束しよります』


 俺は強い憤りを覚えた。


「……なぜだ。なぜ、ハルトが死ぬことが確定した未来なんだ?」


『あの方のお力が……あまりにも強すぎるからどす』


 淡々と、事実を告げる声だった。


『今でさえ、世界の均衡を揺るがすほどの力をお持ちだったどす。しかもまだ、さらに成長する余地がおありや。これ以上の成長を許してしもたら……もう、取り返しがつきまへん』


 ハルトの持つ『先導者の加護・大』。彼に従う者は、最大で十倍の力を発揮する。

 それは、対象が魔王であっても超人であっても例外なく……だ。

 しかも、今後さらにその能力が強くなるとすれば、確かに――強すぎる。

 だが。


「……それは、ハルトの罪じゃない」


 思わず、声が漏れた。

 世界の都合で、能力が危険だから、という理由だけで、死を定められる。

 そんな運命があってたまるか。


『そない言われましてもな、これは何万年も昔から決まっておったことなんどす』


 思わず肩の力が抜ける。ハルトが生まれるより前から、決まっていたというのか。


「その確定した未来は……ノルンでも、変えられないのか?」


『変えられまへん。未来の確定事項を司るんは、確かにうちの領分どすけど、うちが変えられるんは、未来のことだけ。すでに過去になってしもた確定事項は、どないしても、変えられまへん』


 スクルドは、静かにそう告げた。


『そして、過去を扱えるウルドかて、確定した未来までは、どうにもならしまへん』


 つまり――


「……ハルトは、もう……どうやっても救えないのか」


 言葉が、喉に引っかかる。


『前にも言うたやろ。うちらに変えられるんは、せいぜい五分五分の出来事くらいや。せやからな、どうにもならんことは、受け入れるしかあらへんのや』


 ヴェルダンディの声が、静かに重なった。

 ただ変えられない事実を告げるような声音だった。


 沈黙が落ちる。

 それを破ったのは、未人の魔王メリーだった。


「お気持ち、お察しします。運命の女神でも、介入できないことがあるのですね。つまり、それは運(メー)


 エルマが、小さく息を吐いた。


「さて……ここで、いつまでも立ち止まっているわけにもいかんようじゃな」


 そう言って、遠くを見据える。


「儂らを追って、アースガルドの軍勢がすでにニブルヘイムへ侵攻し始めておるという。今はまだ猶予があろうが――いずれ、ぶつかることになる」


 アースガルドとの全面衝突――それは、絶対に選びたくない道だ。

 状況は、まだまだ予断を許さない。


 それでも――


 俺は、ふと隣を見る。


 ここに、エルマがいる。

 遥か昔に失われていた存在が、今は確かに隣に立っている。

 その事実だけで、今は十分だ。


 俺はノルンたちに感謝を述べ、神託所を後にした。

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