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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第四章 回帰編

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貪り喰うモノ

 リュカオンを討ち、親族同士の戦いに勝利したガルムの軍団は、その勢いのまま戌人の街へ雪崩れ込み、完全に制圧した。

 そして、魔王ガルムによる戌人支配が始まることになる。

 これにより、公爵家としてのフェリル家は、完全に潰えた。


 その頃、俺たちが辿り着いた先は、ニブルヘイムの外れだった。

 そして、エルマを縛る貪り喰うモノ(グレイプニル)は、なおも彼女の身体に絡みついている。

 俺がどんなに外そうとしても微動だにせず、脈打つようにエルマの魔力を吸い上げ、確実に彼女を蝕んでいた。


「ロキよ……無駄だ。これは神でさえ拘束できる神具。一介のヒトである私の手に負える代物ではない」


 エルマは静かに言った。悲嘆も焦りもなく、自らの運命を受け入れているようだった。


「私は長くは持たん。私のことなど放っておいて、主はもう行け」


 そんなこと、できるはずがない。

 エルマを救う。

 それが、俺がこの時代に来た、ただ一つの理由なのだから。


「必ず助ける」


 エルマは、驚いたような、困ったような顔で俺を見る。


「……なぜ、そこまで私に尽くす? 主とは金のための主従関係だったはずだ。共に過ごした時間も、ほんの数日――」


 違う。

 確かに、この過去のニブルヘイムで共に過ごした時間は長くはないが、元の時代で俺は、師匠としてのエルマと、六年の時を共にした。

 師匠からは多くのことを教わり、幾つもの死線を共に潜り抜けてきた。


「エルマ。君をここで死なせるわけにはいかない」


 エルマがいない世界など、想像すらしたくない。


「転送魔法で、神具を引き剥がす」


「……無駄だと思うが」


 それでもやる。

 俺は魔法陣を展開し、対象を貪り喰うモノ(グレイプニル)のみに限定し、転送魔法を発動した。


 外れてくれ……!


 だが、転送が成立しない。

 それに気づいた時、俺は愕然とした。


 貪り喰うモノ(グレイプニル)は、既にエルマの存在そのものに食い込み、ほとんど彼女と一体化している。


「……他に、何か方法はないのか……」


 焦燥感だけが募り、考えがまとまらない。

 エルマは、弱々しく口を開いた。


「望みは高くはないが……フェリル家に代々受け継がれる加護がある。満月の夜にのみ、獣化できる能力だ。破邪の加護とも呼ばれ、上位のクラスの力を引き出せる」


 俺は思い出した。月光に輝く、フェンリルの姿を。


「だが、それでも神具を解き放てる保証はない。それに……満月は明日の夜だ。それまで、私の命は……持たぬだろう」


 それでも、可能性がゼロではないのなら――


 俺は即座に動いた。

 周囲を駆け回り、食料、回復薬、手に入る限りを集め、彼女に与え続けた。


 だが、貪り喰うモノ(グレイプニル)は、そんな俺の行為を嘲笑うかのようにエルマを侵食し、彼女は、目に見えて衰弱していった。


「ロキよ……そろそろ、別れの時のようだ」


 エルマの声は、かすれていたが、穏やかだった。


「私の魔力は、もはや完全に尽きた。神具は今、私の命を吸っておる……間もなく、死ぬだろう」


 俺は、何も言えなかった。

 視界が、ゆっくりと暗転していくようだ。

 エルマが、永久に、この世界から失われる。

 その未来が脳内によぎるだけで、思考が形を保てなくなる。

 どんなことをしても、阻止しなければならない。


「……なら、エルマの命の代わりに、俺の魔力を吸えばいい」


 躊躇はなかった。

 深く考えるより先に、身体が動いていた。

 俺は、自分の魔力を解き放つ。

 奔流のような魔力が、貪り喰うモノ(グレイプニル)へと流れ込んでいく。


 エルマの表情が、ほんのわずかに緩んだ。


「……神具が魔力を吸っている間は、命を吸われんようだな」


 だが、彼女は安堵することもなく首を振る。


「もうよせ。主の魔力をすべて吸い尽くすだけだ。結果は変わらん」


「やめない」


 俺は即答した。


「それで、少しでもエルマが生きられるなら……十分やる価値がある」

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