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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第四章 回帰編

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エルマとガルム

 前線で戦う戌人たちが、ガルムの腕の一振りで、次々と弾き飛ばされる。


「おめえらでは魔王が倒せないから、俺を討伐に差し向けたんだろ」


 ガルムは血に濡れた戦場を見渡し、吐き捨てるように言う。


「それで――魔王を倒した俺に、勝てるはずがねえだろうが」


 ガルムには魔法も通じなかった。詠唱が終わる前に距離を一気に詰められ、術者は地面に叩きつけられていた。


「身内だから、手加減してもらえるとでも思ったのか? むしろ逆だ。家なんざ、昔から潰してえと思ってた」


 ガルムの前では戦術も、陣形も、もはや意味をなさない。

 圧倒的な個の力が、数の差を否定していた。


 前衛は、もはや形を保っていなかった。

 これはまさに、蹂躙。

 負傷者は後方へ運ばれ、叫び声は次第に途切れ、代わりに重苦しい沈黙が広がっていく。


 その様子を見据え、ついに一人の男が前へ出た。


「……ガルムは、我が不肖の息子だ」


 リュカオンは視線を逸らさず、言葉を置いた。


「この始末は――父である私がつける」


 側近たちが声を上げるより早く、リュカオンは剣を抜いた。

 一瞬の迷いもなく、選び抜かれた精鋭たちがその背に続く。


「……親父か」


 ガルムは進撃の足を止め、口の端を歪める。


「いい度胸だ。まあ……来い」


 そう言い捨てると、彼は背を向けた。

 まるで導くかのように、居城の奥へと歩き出す。


 血を分けた者同士の、避けられぬ決着。


 だが、リュカオン自身がガルムを引きつけたことで、戦局は大きく動いた。

 リュカオンの軍が一気に広がり、敵軍との攻防が展開された。


「のう、ロキよ。私たちも行くぞ」


 その光景を見たエルマが、迷いなく言う。


「これだけの数がおれば、取り巻きどもの加勢は不要だろう。だが……」


 視線が、居城の奥へ向けられる。


「あのリュカオンが、ガルムを仕留められるとは思えん」


 それは俺も同じ考えだった。

 しかし、本音を言えば、このままエルマを連れて戦場を離れたかった。

 だが――今の俺は、彼女を止められる根拠を持っていない。

 エルマは躊躇なく居城へ踏み込む。


 襲いかかる戌人たちは、エルマの無詠唱魔法によって、術式が完成する前に弾き飛ばされた。

 エルマは抵抗の余地すら与えず、ここでは俺が加勢する必要もなかった。


 そして、奥の広間。


 そこにいたのは――血に濡れ、膝をつくリュカオンだった。

 側近たちは、すでに全員倒れている。


「来たな、エルマ」


 ガルムが、不機嫌そうにこちらを見据えた。エルマはさらに進み出る。


「魔王になっていい気になっておるようだな、ガルム」


「俺は事あるごとにお前と比べられてきた。お前さえいなければ、俺は間違いなく一族の頂点だったんだ」


 ガルムは忌々しげに牙を剥き出し睨みつけた。


「主は、私に魔法では一度も勝てなかったからな」


「ふん、魔法ではな……だが俺様の強さは身体能力だ。なんでもありの戦いなら、俺が勝つ。現に、魔王バーゲストを倒したのは、この俺だ」


 ガルムは誇らしげに血のついた拳を見せつける。


「大軍と共に、だろう? 主一人の力ではない」


 エルマは即座に返した。


「うるせえ。勝ちは勝ちだ。そして俺は、魔王昇格の条件を満たした」


「つまり、バーゲスト討伐の最大功労者ではあるわけだな。しかし、ミイラ取りがミイラに――いや、魔王になるとはな」


 エルマの呆れたような言葉に、ガルムの表情が歪む。


「お前には前からイラついてたんだ。ちょうどいい。ここで力の差を見せつけてやろう」


 エルマは、臆すことなく少し首を傾げた。


「ふむ、できるかな?」


 その問いが落ちた瞬間、ガルムの姿が掻き消えた。獣じみた加速での突進。

 次の瞬間には、エルマの目前――そこにいるはずだった。

 だが、近づけていない。確かに前へ進んでいるはずなのに、距離が縮まらない。


「……チッ。何だ、これは」


 苛立ちを露わにしたガルムの視線の先で、エルマは両手を前に掲げ、五つの魔法陣を同時に展開していた。


空間⭐︎湾曲(ディストーション)


「主が近づいた分だけ、空間そのものを引き伸ばしている。主と私の距離は、常に一定――」


 エルマの涼しげな視線が、ガルムを捉えている。


「故に、主は永遠に私へは届かぬ。これでは、自慢の身体能力とやらも活かせんな」


「……噂の古代魔法ってやつか」


「まあ、半分はな」


 エルマは隠すこともなく淡々と説明する。


「古代遺跡で見つけた変化の古代魔法エオローと、主らもよく知っているいくつかの魔法陣を組み合わせたものだ。精霊魔法がすべてと思っておる主には、永久に使いこなすことも、理解することもできまい」


「舐めるな! 今の俺は魔王だ!」


 ガルムが吠えた。

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