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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第四章 回帰編

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過去の師匠に仕える

 エルマは瞳をきらきらと輝かせ、身を乗り出すようにして語り始める。


「私の名は、エルマ・フェリル。歳は十五。まだ若輩ではあるが、魔法の腕にはそれなりの自信があるのだぞ」


 誇らしげに胸を張る仕草に若さを感じる。


「それから、今は擬態魔法を使って、主と同じ申人の姿になっておるが……本当は戌人なのだ」


 そう言って、少し照れた表情を見せた。


「私はな、申人の顔のフォルムが好きでな。特に、澄ました顔で茶を飲むときの表情がたまらん。ちなみに、戌人のままで茶を飲むと、ああなるからの」


 手で示された先では、戌人が路上の席で茶を啜っていた。

 器に口先を突っ込み、舌をぺちゃぺちゃと動かすその様子は――確かに優雅とは言い難い。


「な? これでは品位の欠片もないであろう。しかし、口の長い戌人の顔では、構造的にどうしてもああなる。だから私は申人に擬態しておるのだ」


 そういえば、八百年後のエルマも、まったく同じことを言っていたのを思い出す。


「十二種族の中で最も美しいのは卯人(うじん)、という説もあるが……まだ私は会ったことがないものでな」


 そして彼女は興味津々といった様子で、俺を見上げる。


「して、主の名は何という?」


 リバティ――そう答えかけて、俺は言葉を飲み込んだ。

 歴史への影響は、できる限り避けるべきだ。この先弟子になる男の名前は伏せておいた方が良いだろう。


「ク……ロキだ」


 そこで俺は、この世界では、あまり使われていなかった苗字のほうを名乗る。


「ほう。ロキ、か。良い名だのう」


 『ク』が抜けてしまったが、まあいいか。

 そこでエルマの目が急に鋭くなる。


「ところで、主が先ほど使った魔法。あれは古代魔法の一つ――転送魔法ではないか?」


「そうだ」


 俺は素直に答えた。


「異なる空間を繋げる古代魔法『ラド』。私の仮説では、あらゆる精霊魔法の源流にあたる魔法だ。主は、どこでそれを学んだ?」


「ああ。俺の師匠に教わった」


 その師匠とは、未来のお前だ。


「おお、主には師がおるのか。それは一度、是非お目にかかりたいものよ」


 エルマは感心するようにそう言った後、質問を重ねた。


「それで……ロキよ。主は、これからどうするつもりなのだ? 何か目的があって、ここに来たのだろう?」


 俺の目的は、ただ一つ。この時代でエルマを守りきることだ。

 だが、それを今の彼女に告げるわけにはいかない。


「しばらく、この街に滞在するつもりだ。所持品をすべて失ってしまったから、まずは、生きるために必要なものを揃えようと思っている」


「おお、そうなのか。それなら――」


 エルマは、何かを思いついたように目を輝かせた。


「もしよければ、ロキよ。しばらく私に仕えてみるのはどうだ?」


「……仕える?」


「先立つものが必要なのであろう? 私に仕えれば給金も出せる。こう見えて、私はこの街ではそれなりに名の知れた家の者なのだ」


 そして、少しだけ声を弾ませる。


「実は、ずっと申人の従者が欲しいと思っていてな。しかも転送魔法の使い手ときては……ここで別れてしまうのは、あまりにも惜しい」


 従者になれば、自然にエルマのそばにいられる。

 しかも生計も立って、一石二鳥。

 それは、俺の目的にとって、これ以上ない条件だった。


「……分かった。その話、受けてもいい」


 俺がそう答えると、エルマは満足そうに頷いた。


「うむ! では、これからよろしく頼むぞ、ロキ」


 こうして俺は、八百年前のエルマに仕えることになった。


 エルマに連れられて向かった彼女の屋敷は、遠目にも分かるほど立派だった。

 石造りの外壁に意匠を凝らした門。手入れの行き届いた中庭。

 一目で、名家の屋敷だと分かる。


「ここで少し待っておるのだ」


 そう言い残し、エルマは俺を門の外に待たせて中へ入っていった。

 しばらくして、彼女は一抱えの衣服を手に戻ってくる。


「執事の服を拝借してきた。さすがに、そのなりで屋敷に入れるわけにもいかんからな」


 ちらりと、俺が纏ったスノーベアの毛皮を見る。


「主には少し大きいかもしれんが……ひとまず着替えてくれ」


 俺は物陰に回り、毛皮を脱いで渡された服に袖を通した。

 確かにサイズは合っていないが、袖と裾を軽くまくれば問題はない。

 身なりが整ったところで、エルマが満足そうに頷く。


「おお、見違えたな。それなら、すっかり申人の従者に見える。ふふ。やはり私の見立てに狂いはなかったのだ」


 その無邪気な笑顔を前に、俺はわずかに安堵した。エルマの次の一言までは。


「しかし、私の従者になった以上、これから存分に主を使い倒させてもらうからの!」

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