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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第四章 回帰編

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過去のニブルヘイム

 ヴェルダンディがいくつか注意事項を説明する。


『言うとくけど、チャンスは一度きりや。あたしもノルンや。現在を動かせるんは、百年に一度あるかないかの気まぐれやで。失敗してもやり直しは利かん。成功しても、失敗しても、あたしは現在を「今」に戻すだけや。それと、過去をいじりすぎるのもあかん。現在が不必要に変わってしまうからな』


 俺は静かに頷く。


『で、どの時代を変えたい?』


 変えたい過去は二つある。

 エルマの喪失と、ハルトの死。

 だが、全ての異変はエルマの喪失から始まっている。


「八百年前。魔王ガルムが、エルマを殺したとされる時代だ」


『ああ、最近この辺りをうろついてる戌人の魔王が生まれた頃やね。あたしにとっては、つい最近みたいなもんや。心の準備ができたら、いつでも行けるけど』


「そんなすぐに!? 何か準備して行った方がいいものとか、あるんじゃないか?」


 俺が少し慌てて言うと、ヴェルダンディは呆れたように答えた。


『何言うてんねん。準備した時間ごと遡るんや。過去に持っていけるんは、その身一つだけやで』


 息を呑む俺の横で、緊張感の薄い声が割り込んだ。


「あらあら……私も何かお手伝いできたら思いますが、過去に戻れる体質なのは、魔科学術師(トリックスター)さんだけ。つまり……あなただけができる役(メー)


「せいぜい頑張ってくるにゃん。願わくば、そのまま過去で朽ち果ててくれてもいいにゃん」


 ここは、二人なりに快く俺を送り出してくれた――そう思うことにした。

 覚悟を決めた俺はヴェルダンディに頼んだ。


「頼む、やってくれ」


『なら――現在を変えるで』


 途端に、視界にノイズが走った。

 ウルドが過去を歪めたときと同じ感覚だ。だが、今回は一瞬では終わらない。

 周囲の景色が逆再生のように流れ、時間が俺を置き去りにして巻き戻っていく。


 やがて、すべてが静まり返ると、俺は再びノルンの神託所に立っていた。

 だが、先ほどまでとは空気がまるで違う。

 霧は薄く、肺を刺すほどの寒気もない。足元の地面には、わずかだが緑が残り、世界はまだ完全に凍りついてはいなかった。

 ここは確かに八百年前なのだろう。

 つまり、ニブルヘイムは、この時代から徐々に寒さに呑み込まれていくということか。


 そこで、俺はもう一つの異変に気づいた。

 視線を落とし、理解する。


 ……裸だった。


 ヴェルダンディは、過去に行けるのは『身一つ』と言っていた。

 どうやらそれは比喩ではなく、文字通りの意味だったらしい。


 服もなければ魔道具もない。スマホもパソコンもない。

 つまり、魔法プログラミングは不可。AIエージェントのロイナとも話せない。神託アプリも使えず、工房からの魔道具やアイテムの転送も望めない。

 今の俺にあるのは、素の魔力と特技、頭の中に残った知識だけだ。

 思っていた以上に、状況は厄介だった。


 まず必要なのは、服。

 このままでは寒いし、明らかに不審者だ。


 神託所の周囲を探っていると、視界の先で、白い巨体がぬっと動いた。

 あれはスノーベア。

 シロクマに似た外見を持つ、寒冷地の魔物だ。

 こちらを獲物と判断したのだろう。低く唸り声を上げ、迷いなく突進してくる。

 俺は即座に魔力を展開した。


輪廻の炎リンカネーション・フレイム!」


 輪廻の魔法で小火炎を何度も叩き込む。

 よし、この時代でも、魔法は問題なく使える。


 火炎の連続放射を受けて、白い巨体は崩れ落ちた。

 俺は躊躇せず、その毛皮を剥ぐ。

 血生臭さに顔をしかめながら、それを身に巻きつけた。

 正直、気分は良くはないが、暖かい。

 原始的だが、生き延びるためには仕方がない。


 さて、次はどうする?


 俺は、魔王ガルムの城があった場所へ向かうことにした。

 元の時代の感覚で転送魔法を試みる。

 時代は違っても、座標は同じだろう。


 転送の光が収まった先――そこにあったのは、記憶している魔王城ではなかった。


 広がっていたのは、戌人たちの街だった。

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