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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第四章 回帰編

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今を動かす力

 行き場を失った俺たちは、再びニブルヘイムを訪れていた。

 凍える霧と沈黙に満ちたその地にある、ノルンの神託所。


「あらあら……大切なお友達を失うことになるなんて。本当に、残酷な運(メー)


「魔王に友人なんて不要にゃん。必要なのは利用価値。使うか、使われるか、それだけにゃん」


 魔王のメリーと、リリィ。

 同行者は、結局この二人だった。

 ミーアもニブルヘイムに入るところまでは同行したが、前回と同じように、今はメープルタウンに預けている。


「しかも、せっかく犯人を特定できたのに、逆に国を追われることになるなんて……完全に裏(メー)


「いっそ国ごと滅ぼして、作り直した方が早かったにゃん」


「いや……プラティナスの力は、侮れない」


 俺は首を横に振った。


「おそらく、正面からやり合っても勝てないだろう」


「そうなのかにゃん? 普段は平和ボケした皇帝にしか見えなかったから、意外にゃん」


 一瞥しただけで因果を巻き戻す。あの力は、あまりにも異質だった。


「これまでの情報を整理すれば、プラティナスの正体は、高い確率で、ウルドを操っている大魔王だと思う」


 そう考えると、そのままプラティナスにアースガルドの支配を許しておくのは、あまりにも危険だ。


「だとすると、そいつには少なくとも三人の魔王配下がいるはずにゃん」


 リリィが指を立てる。


「大魔王クラスに昇格する条件の一つは、三人以上の魔王を従えてることにゃん。あのクセの強い魔王を三人も配下にするなんて、相当な手腕にゃん」


 そして、その配下の一人は、ほぼ間違いなくガルムなのだろう。


「よし『神託対話アプリ』の準備ができた」


 俺はノルンと対話するためのパソコンアプリを立ち上げた。

 これが二度目となるヴェルダンディとの対話を試みる。


『なんや、前回も冴えない顔してたけど、今回はさらにしょぼくれてるやないか』


 彼女は調子は相変わらずだが、鋭くこちらの状況を見抜いているようだ。


 俺は、ヴェルダンディに起きたことのすべてを伝えた。

 犯人と思われる存在を突き止めたこと。

 唯一無二の英雄を失ったこと。

 ウルドと接触し、ウルザルブルンの水を飲ませたが、結局、彼女自身の意思だったこと。


『この短時間でそこまで辿り着いたんは、正直ようやっとると思うで』


 ヴェルダンディは、俺を労うと共に、少し申し訳なさそうに続ける。


『せやけどな……ウルドのやつ、前から刺激が欲しい言うてたわ。もしあいつが原初の姿を取り戻して、人の世界を自由に動けるようになったら、そういう選択をしても確かに不思議はない』


 軽い口調は変わらない。

 だが、その言葉には陰りもあった。


『もっともな……そんなことを続けとったら、ウルド本人が長うもたへん。それは――自業自得や。本人も分かった上で、選んどると思うけど』


「……これから、俺たちはどうすればいい?」


 俺は率直に問いかけた。


『そうやな。正直、あんたの状況は察するに余りあるわ。それに約束通り、ウルドも見つけてくれた。せやから今回は――あたしも、ちょっとは手ぇ貸さなあかんな』


 ヴェルダンディも俺に少しは同情してくれているようだ。ノルンの一柱として、少しは責任を感じているのかもしれない。


『知っとると思うけど、あたしは「現在」を司る存在や。ウルドが過去を変えられるように、あたしは「今」を動かせる』


「……今を動かす?」


『せや。せやけど、そんな万能な話やないで。過去いうんは、すでに起きた出来事のことやろ? そして、現在いうんは、「どこを今として認識しとるか」いうポインタみたいなもんや。あたしがいじれるんは、そのポインタの位置だけや』


「つまり……どういうことだ?」


『今が指しとる時代を、少し前にずらしたり、少し先に送ったりできる、いうことや』


「過去にも……行けるってことか?」


『まあそうなんやけど、ただしな』


 そこで、釘を刺すように続ける。


『今を変えたら、そこに生きとる人間も丸ごとその時代の人間に変わる。あたしには全部見えるけど、当人たちは、今が変わったことにすら気づかへん』


「……それじゃ、意味がないんじゃないか」


『普通の人間にとってはな。けど、あんたは違う。あんたは、ウルドが過去をいじっても影響を受けへん体質や。いうことはや、あたしが現在を動かしても、あんたは影響受けず、変えた時代にそのまま行けると思う』


 確かに、俺の加護『状態異常無効(極)』なら、ヴェルダンディの言う通りなのかもしれない。


『そして、ウルドが変えられる過去は、前にも言うた通り、五分五分の出来事だけや。せやけど、あんたが過去に直接介入して、結果を必然にしてしもたら――その時点で、ウルドはもう変えられへん』


 つまり――こういうことか。

 俺自身が過去へ行き、分岐を潰す。

 過去を確定させるためのタイムトラベル。


『どや? 挑戦してみる気は、あるか?』


 ヴェルダンディは、いつもの軽い調子で問いかけてきた。

 他に手はない。やってみるしかないだろう。

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