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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第四章 回帰編

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心優しい英雄の最期

「ハルトさん、気を確かに……!」


 その叫びは、ヤドリギがハルトを貫いた瞬間に放たれた。

 レイアは張り巡らせていた結界を、力任せに霧散させる。


「……三秒前に、この未来は見えていました。それでも……結界の維持を解除するのに、時間がかかってしまった……」


 聖女として、未来を視る者として、彼女は自分の判断の遅れを強く悔いている。


「神々のおわす天の頂より――

 慈悲の光よ。この者を包み、癒しを与えたまえ」


 祈りと同時に、レイアは限界まで魔力を解き放つ。

 治癒の神聖魔法が、ハルトの身体を包み込む。


「ホワイル

 コール・トランスファー・ポーション

 エンド!」


 俺も無限ポーションを取り出し、ためらいなく中身を注ぎ込む。


 だが、これらが効果を発揮しないことを俺も、おそらくレイアも理解していた。

 回復魔法も、ポーションも、免疫力を高め、自然治癒力を引き上げる手段に過ぎない。自然治癒で回復できないような致命傷は、どれほど魔力を注いでも癒えることはない。


「……男の子は、無事ですか?」


 かすれた声で、ハルトがそう尋ねた。

 彼が最も気にしているのは、自分の胸を貫いた致命傷のことではなく、先ほど、命を懸けて庇った少年のことだった。

 少年は泣きじゃくりながら、ハルトを見つめていた。


「ああ。無事だ」


「それは……良かった」


 俺が答えると、ハルトは、わずかに口元を緩めた。苦しみに耐えながらも、その笑みはどこか満ち足りているようだ。


「私は、もう十分に生きました。元の世界なら……きっと、とうに死んでいたでしょう」


 声はかすれ、息をするたびに途切れる。それでも、ハルトは言葉をつなげた。


「ここに来て……もう一度、自分のやるべきことができた。本当に、良い人生でした」


 彼は、貧しく不便な暮らしを強いられていた国に商会を立ち上げた。

 役に立つ品を流通させ、便利な仕組みを広め、人々の生活を大きく変えた。

 理不尽な独裁を裏から崩し、新しい国の形を整えた。

 それでも、決して驕らなかった。

 誰かを救うためなら、いつもそうしてきたように――自分のことは、最後まで後回しにした。


 ハルトこそ、本物の英雄だった。


 ――そして。


 皆が言葉を失い、悲嘆に暮れる中で、ハルトは静かに、その生涯を閉じた。


 それが、俺の目の前で起きた、紛れもない現実だった。


 呆然と立ち尽くす俺たちを、少し離れた丘の上から見下ろしている視線があった。

 見覚えのある白い髪の少女。


 ――ウルド。


 その姿を認識した瞬間、俺の中に一つの希望が灯った。

 過去を書き換えられる存在。

 都合の悪い事実さえ、なかったことにできる女神。


 ならば――ハルトのこの死さえも、取り消せるのではないか。


 俺は迷わずに動いた。


 ちょうどその時、レイアが必死の回復を続けるため、俺の転送魔法を制限していた結界を解き放っているところだ。


 今しかない。


 俺は即座に魔力を展開し、転送陣を描く。

 足元の感覚が消え、視界が反転する。


 次の瞬間、俺は丘の上に立っていた。

 突如、目の前に現れた俺を、白い髪の少女は驚きもせず、ただ静かに見つめている。


「お前が……過去を司る女神、ウルドなのか?」


 俺は、冷静に問いかけた。


「ウルド……」


 少女は小さく首を傾げる。


「その名前、聞いたことはある。でも……それが私の名前だったのか……確信はない」


「過去を変えているのはお前なんだろう?」


 少女は、感情の起伏を見せることなく、淡々と言葉を続ける。


「あの人が、私に、形を与えてくれた。だから――お返しに、私は力を使ってあげるの」


「あの人とは、誰なんだ? ガルムか?」


 俺は即座に問い返す。


「……彼は、名乗っていた。大魔王ニーズ、って」


「大魔王……」


 魔王の、そのさらに上の存在。

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