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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第四章 回帰編

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俺だけが覚えている世界

 俺は、いったん頭の中を整理してみる。

 遥々ニブルヘイムまで来て、何の収穫もなかった――わけではない。

 俺は、二度にわたって『現実が書き換わる瞬間』を目の当たりにした。

 そして、その二度の経験から見えてきたことが二つある。


 一つ目。

 最初の現実書き換えは、トオル、レイア、そしてエルマが、魔王ガルムを追ってニブルヘイムに攻め入った時だ。

 そして二度目は俺自身がガルムを追い詰めた、その直後。

 つまり、魔王ガルムと、この現象は無関係ではない。

 それがガルム自身の能力かどうかは分からないが、きっかけになっていることは確かだ。


 そして二つ目。

 世界が書き換わった時、その変化に気づいているのは、常に俺だけだ。

 俺以外の全員は、書き換わった後の世界を『最初からそうだったもの』として生きている。

 彼らの記憶は書き換わった後の世界のものであり、違和感を覚える者は、誰一人いない。

 だが俺だけは違う。

 俺は、書き換わる前の世界の記憶を持っている。

 そして、書き換わった後の世界の記憶は持っていない。


 なぜ、こんなことが起きる?


 最初に浮かんだ仮説は、『俺だけが、何らかの術にかけられている』というものだった。

 だが、それはすぐに否定できる。

 俺には、『状態異常無効(極)』の加護がある。

 精神操作、記憶改竄、認識阻害――あらゆる状態異常は俺には通じない。


 ならば、逆か。


 全員が何らかの術の影響下にあり、俺だけがそれを無効化している。


 ……だが、そんなことが、本当に可能なのか。


 百人、千人という規模ではない。

 世界中の人間、魔王、そのすべてを対象にした魔法など、聞いたことがない。

 思考を巡らせるうち、脳裏に一つの像が浮かび上がった。


 白い少女。

 感情の欠け落ちた瞳。

 まるで、人ではなく、遥か遠くの景色を見るように、俺を見ていた。


 不意に背筋が冷たくなる。


「ご主人様、どうするにゃん? 空っぽの犬小屋で突っ立ってても、何も始まらないにゃん。いっそ派手に吹き飛ばして、すっきりしておくにゃん?」


「わわわ、それはどうかと思います。無意味な破壊は、望まぬ争いを生んでしまいますよ。すみません」


 ミーアがブルブルと首を振っている。

 確かにこれ以上ここにいても仕方がない。リリィが破壊活動を始める前に、ひとまず俺たちは、未人の街メープルタウンへ戻ることにした。


「おかえりなさい。大丈夫ですか? 浮かない顔ですね」


 街に戻った俺に声をかけてきたのは、聖王マリーだった。


「ああ……ガルムの城に行ったんだが、誰もいなかったんだ」


「そうですか。先日ノースベルを攻めたばかりだというのに、また別の場所に向かっているのかもしれませんね」


 そう言ってから、彼女は再び俺の顔を見た。


「ですが、もちろんそれはあなたの責任ではありません。それなのに……ずいぶんと、深いところで悩んでいるように見えます」


 マリーは俺を気遣うように申し出た。


「もし私でよろしければ、どんなことでもお話しください。恩人であるあなたには、少しでもお力になれればと思っております」


 その優しい言葉に、俺は彼女に話してみることにした。

 ガルムを追い詰めたこと。

 その直後、世界が書き換わったこと。

 そして、書き換わる前の記憶を保持しているのが、自分だけであること。


 すべてを話した俺を、マリーは否定しなかった。

 驚きも、疑いもせず、ただ静かに考え込んだ。


「……他ならぬあなたのお話ですから、虚偽だとは思っていません」


 そして、少し躊躇するように続けた。


「ですが、世界を書き換えるほどの力を、魔王ガルムが持っているとは……正直、考えにくいです。もし、そのようなことが可能だとすれば……この地に古くから伝わる存在……ノルンしかありません」


 ノルン――それは、運命を司る女神。

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