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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第四章 回帰編

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強欲な魔王

「で? おめえは、そんな八百年前の昔話を聞くために、わざわざここまで来たのか?」


 少なくとも、ガルムが嘘を言っている様子はなかった。

 この世界において、エルマは遥か昔の存在であり、勇者トオルと共にここへ来たという事実もない。

 これ以上、過去を掘り下げても仕方ないだろう。

 俺は胸の奥に湧き上がる感情を強引に押し殺し、もう一つの用件を口にした。


「……頼みがある。これ以上、未人たちの毛を奪うのはやめてほしい」


「あぁ?」


 ガルムの顔が、あからさまに歪む。


「未人の話だぁ? おめえ、自分がどこで、誰に口を出してるか分かってんのか?」


「未人であろうと、人は人だ。何か理由があるなら聞かせてほしい」


「理由だと?」


 ガルムは低く笑った。


「簡単な話だ。未人共から魔力を搾り取る。勢力を広げるには、膨大な魔力が要る。あいつらは、そのための資源だ」


 獣のような笑みが、牙の隙間から覗く。


「で? そんな綺麗事を並べて、ただで俺様が首を縦に振ると思ってるわけじゃねえよな?」


 値踏みするような視線が、俺を舐め回す。


「代わりに――おめえは、何を差し出す?」


 俺は一拍、間を置き、あらかじめ用意しておいた答えを返した。


「俺の魔道具だ」


 ガルムの眉が、わずかに動く。


「未人から奪わなくても、このニブルヘイムに満ちる高密度の魔力を集め、蓄積できる魔道具を渡してやるよ」


「ほう……」


 ガルムの口元が、ゆっくりと歪んでいく。


「噂に聞く、アースガルドの魔道具ってやつか。そいつは――確かに、悪くねえな」


 一瞬だけ、ガルムの声音が柔らいだ。

 だが、その目に宿った光は、取引に応じる者のものではない。

 獲物の価値を量る、捕食者の視線だった。

 次の瞬間、ガルムの口元が歪む。


「……だがな。俺様は欲張りでよ。未人の魔力も、おめえの魔道具も――両方いただく。それ以外に、答えはねえ」


 そう噛みしめるように言い切った。


「それじゃあ、交渉にならない」


 俺が言うと、ガルムは愉快そうに鼻を鳴らした。


「最初から交渉する気なんざ、ねえんだよ」


 両腕を広げ、玉座の前に立つ。


「俺様は、すべてが欲しい。それが嫌なら、魔王らしく、力で止めてみろ」


 その言葉と共に、周囲の影が一斉に動いた。


 柱の陰、回廊の奥、天井近くの足場。

 戌人たちが姿を現し、瞬く間に俺たちを包囲する。


「待て。俺は争うつもりで来たんじゃない」


「はぁ?」


 ガルムは怒りを込め、威嚇するように声を張り上げた。


「俺様の部下を石にしたのは、おめえらだろうが。もうとっくに、宣戦布告は済んでんだよ」


 氷の玉座の間に、殺気が満ちる。

 重く沈む空気。四方から重なる、獣じみた低い唸り声。


 ――どうやら、対話はここまでだ。


 俺たちを囲む戌人は、軽く見積もっても百を超える。さらに城の奥、上階にも待機している気配がある。


「俺様の城に、たった三人で乗り込んでくるとはな」


 ガルムは嘲るように笑った。


「勇気があるのか、ただの馬鹿か……どっちだ?」


「馬鹿なのはガルム、お前にゃん」


 リリィが一歩前に出た。


「こっちは魔王が二人に、ミーアもいるにゃん。犬コロがいくら頭数を揃えたところで、勝てはしないにゃんよ」


「うるせえ!」


 ガルムの牙が、ぎらりと光る。


「確かにノースベルでは勇者に後れを取った。だがな……ここは俺様の居城だ。この城で、俺様が負けるはずがねえ」


 そして、俺を見据えて宣告する。


「安心しろ、魔科学術師(トリックスター)……てめえだけは殺さねえ。生かして捕らえて、俺様のために魔道具を作らせる」


「……ご主人様、戌人共を攻撃してもいいかにゃん?」


「ああ、許可する」


 リリィの問いかけに、俺は即答した。


「ミーアと二人で、戌人たちを止めてくれ。俺は、ガルムを止める」


「まったく、美味しいところを持っていくにゃんね」


 リリィは肩をすくめながらも、口元に獰猛な笑みを浮かべた。


「分かったにゃん。犬コロ共に、虎の恐ろしさを教えてやるにゃん」


 次の瞬間、彼女の魔力が爆発的に膨れ上がった。


 ――俺は、ガルムと正面から向き合う。


 蒼月の牙王(アズールファング)。その名に違わぬ、蒼銀の魔力が全身を包み込んでいる。

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