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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第四章 回帰編

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魔王が灯す火

 聖王と、魔王。姉妹でありながら、選んだ立場は違う。

 同じ血を引き、同じ民を想いながら、それぞれのやり方で民を守ろうとしている。


 マリーの計らいで、俺たちはもてなしを受けることになった。

 卓に並んだのは、魚料理と肉料理が中心だった。霧に覆われ、ほとんど光が差し込まないこの地では作物が育たず、野菜は貴重品らしい。


「本来、未人は野菜を好む種族なのですけれどね」


 マリーは少し困ったように微笑んだ。


「肉でいいにゃん。むしろ肉であるべきにゃん」


「わわわ、この凍てつく世界でも、動物たちは生きているのですね。素晴らしい命の輝きです」


 リリィは満足そうに肉を頬張り、ミーアは肉を見て何かに感動していた。


「はい。まだこの辺りには魚もいますし、寒さに適応した大型の獣も生息しています。ですが、さらに北へ行くと……生き物はほとんど見かけなくなります。その代わりに、魔力の密度はさらに上がっていきます」


「そこには魔力の源のような何かがあるのか?」


 俺が尋ねるとマリーは小さく首を振った。


「それは分かりません。寒さが限界を超え、誰も生きていられないのです」


「原初の世界の、根源的な何かが眠っていそうにゃんね。興味深くはあるにゃん」


 そんな話をしながら食事を終えると、マリーは静かに席を立った。


「よろしければ、このあと街をご案内いたしましょう。未人たちが、どのように暮らしているのか、ご覧になってください」


 そう言って、彼女は先に立って歩き出した。


 寒さの厳しい土地だからこそ、彼らの文化は寄り添うことを中心に発展していた。

 家は互いに近く建てられ、広場には自然と人が集まる。相手に何かを分け与え、助け合うことは、彼らの生活の一部だ。


「戌人に襲われた者たちは、今も怯えて暮らしています」


 マリーがそう言って案内したのは、街の奥にある一棟の建物だった。

 そこは未人たちの静養場。

 中では、毛をむしられた未人たちが互いに身を寄せ合い、毛布にくるまって小刻みに震えていた。


「寒い……寒いよぉ……」


 か細い声が、ぽつりと漏れる。


「私たちは、体の毛に魔力を蓄えることで、この寒さに耐えることができます」


 マリーが静かに説明する。


「ですが、その毛を失えば、魔力を留めることができません。寒さを凌ぐには、こうして身を寄せ合い、わずかな体温を分け合うしかないのです。火を焚こうにも……この地では、薪の確保すら容易ではありません」


 確かに、これは放っておけない。俺は小さく息を吐いた。


「……状況は把握した。少し待ってくれ」


 即席で魔道具を組み上げる。

 空間内に満ちる魔力を吸収し、小火炎(リトルフレイム)の魔法を常時維持する構造。

 いわば、魔力駆動式のストーブだ。

 ニブルヘイムは魔力が豊富だ。この方式なら、薪がなくても安定した火力を保てる。


 俺はそれを四基ほど作り、静養場の各所に配置した。

 やがて、凍え切っていた室内に、じわじわと暖気が満ちていく。

 未人たちの震えも、少しずつ収まっていった。


「……まあ、なんということでしょう」


 マリーが目を見開く。


「術者がいないのに、魔法の炎が絶えず灯っています……このような魔道具、初めて見ました。これが噂に聞く、アースガルドの魔王の魔道具なのですね」


「いや、これはそこまで大したものじゃない。単純な魔道具だけど、これで、毛を失った未人たちも、当面は大丈夫だろう」


「重ね重ね、ありがとうございます……本当に何とお礼を申し上げればよいか」


 深く頭を下げるマリーに、俺は軽く手を振った。


「アースガルドの魔道具って、ここでもそんなに有名なのか?」


「ええ。ニザヴェリルの魔道具を凌ぐと聞いていますよ。それに……アースガルド皇帝の奇跡の力も」


 皇帝……今は俺の師匠ということになっているプラティナスのことだ。だが俺は彼のことを全く知らない。


「皇帝の奇跡の力って、どんなふうに伝わってる?」


「時を戻す力、と聞いております。噂では、割れたグラスを元に戻したり、生まれたひよこを卵に戻したり……」


 知らなかった。それが本当なら、確かに奇跡だ。


「まるで、ノルンのような力ですね」


 マリーが畏れを抱くように付け加えた。


「ノルン?」


「はい。この地に語り継がれる、運命の女神たちですわ。もちろん、あなたの魔道具もですよ」


 俺は思わず頭をかいた。


「けど、根本の原因のほうも、何とかしないとな」


 俺は静かに続ける。


「戌人に毛を刈られる状況そのものを、止めないとな。俺は魔王ガルムに用があるから、ついでに、未人の毛を刈るのをやめるよう、直接言っておくよ」


 マリーが、はっと息を呑んだ。


「……本当に、魔王ガルムのところに行かれるのですか」


「ああ」


 俺は即答した。


「ところで、ガルムは今どこにいるんだ?」


「それなら案内役をお付けしましょう」


 そう言って、一歩前に出た未人が、胸に手を当てて名乗る。先ほど俺が助けた未人だ。


「下(メー)でよろしければ」


 マリーは深く頭を下げ、厳かに告げた。


「くれぐれもお気をつけて。ノルンの導きが、あなた方にあらんことを」


 こうして俺たちは、魔王ガルムのもとへ向かうことになった。

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