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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第四章 回帰編

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マリーとメリー

 カッチカチ。


 白銀の大地に、躍動感のある黒い石像がずらりと並んでいた。

 優越感に浸って笑い声を上げながら、名乗りの途中。その油断した瞬間を切り取ったように、戌人たちは固まっていた。


「すみません、すみません……」


 ミーアが石像に向かって、ぺこぺこと頭を下げている。


「反射的にやってしまいまして……名乗りの途中で攻撃してはいけないという鉄の掟を、破ってしまいました……」


「いや、別にいいと思う」


 俺は即座に親指を立てた。


「ミーアの石化邪眼は強すぎるにゃん」


 リリィが肩をすくめる。


「邪眼は本来、魔王クラスや神クラスの一部しか使えない反則級スキルにゃん。それをミーアは魔王でもないのに使えるにゃん」


 ミーアの石化邪眼は、蛇系モンスターを喰らうことで能力を取り込む彼女の加護によって得たものだ。

 元は上級神の特技。強いはずである。

 そんな会話をよそに、もこもこと震える未人たちが、恐る恐るこちらを見ていた。


「いまの……何が起きたのです?」


 俺は石像を親指で示す。


「お前たちを追ってた連中の方が、明らかに悪そうだったので、俺の妹が石に変えた」


「ということは……」


 未人の目が、わずかに輝いた。


「助けて……くださったのですか? あなた様がたは、一体……?」


「ああ。通りすがりの魔王だ」


「私も魔王にゃん」


「魔王が二人!?」


 未人たちは、再び絶望した表情になった。


「もはやこれまで……未人(びじん)(メー)……」


「いや、俺たちは襲ったりしない」


「……では」


 恐る恐る、未人が聞いてきた。


「毛を、むしらない?」


「え、毛?」


「はい……魔王ガルムの戌人軍は、下(メー)ら未人を捕らえては、全身の毛をむしるのです……」


「……変態にゃん」


 リリィが即答した。


「いえ、別にそういう性癖というわけではなく……我ら未人は、毛に魔力を蓄える種族なのです。戌人たちは、その魔力を吸い取るために、その……」


「なるほど、そういうことか。でも、毛を奪われるだけなら、命に関わるほどじゃないんじゃないか?」


 俺がそう言うと、未人は首をブンブンと横に振った。


「何をおっしゃいます。下(メー)ら未人にとって、毛は命……尊厳そのものです」


 そして、ため息を吐いて深刻そうに続けた。


「それに……毛を奪われた未人は、このニブルヘイムの寒さに耐えられません……」


「ああ……それは、致命的だな」


 確かに、髪を少し短く切っただけでも、冬場は身に染みるほど寒かったりする。


「おかげさまで、下(メー)らの毛は守られました。ですが、助けていただいて、はいさよならでは、未人の名折れというものです」


 未人のひとりが、胸に手を当てて深々と頭を下げた。


「ぜひ、下(メー)らの街までお越しください。ささやかではありますが、お礼をさせていただきたいのです」


 未人たちの強い意志に、その申し出を断ることはできなかった。

 俺たちは、彼らに案内されるまま、未人の街へ向かうことになった。


 未人の街――メープルタウン。


 万年氷の大地を切り開くように、丸みを帯びた建物が並んでいる。

 家々は石や氷で作られているが、その外壁は毛皮や織物で覆われ、まるで巨大な動物たちが身を寄せ合っているかのようだ。


 通りを行き交う未人たちは皆、豊かな毛並みを誇りにするように整えている。

 寒冷地でありながら、街には活気があった。


 そんな街の中心、ひときわ大きな集会殿へと通された。

 そこで俺たちは、この街を治める存在と対面することになる。


 聖王、マリー・バフォメット。


 腰に届くほど長く伸びた、純白の毛。気品を感じさせる立ち姿の女王だった。


「あなた方が、我が民を助けてくださったのですね」


 聖王マリーは、俺たちの前で静かに膝を折り、深々と頭を下げる。


「心より、感謝申し上げます」


 その姿に、俺はどこか見覚えがあった。

 ――そうだ。


「……あなたに、よく似た魔王と会ったことがあります」


 俺がそう告げると、マリーは小さく微笑んだ。


「おそらく、それは私の姉でしょう」


「姉……?」


「はい。未人の魔王、メリー・バフォメット」


 その名が口にされた瞬間、すべてが繋がった。


「私は、この街と民を守るため、聖王となりました。そして姉は、他の魔王たちに対抗する力を得るため、魔王になる道を選んだのです」


 静かな声だったが、その言葉には強い意志が滲んでいた。

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