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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第三章 強国編

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自然法則の力

 俺は次々に転送魔法陣を複製し、自分の周囲に配置する。

 魔王になって身につけた『魔法陣複製ジオメトリック・スポーン』は、魔法が苦手な俺にぴったりな特技だ。

 本来、複数の魔法陣を操るには難易度の高い多重魔法が必要になる。

 魔王になってから、それなりに訓練は積んだが、俺が同時に維持できるのは、せいぜい二系統、しかも簡単な魔法に限られる。

 六重、七重の高度な魔法陣の多重化を難なくこなすエルマには遠く及ばない。

 だがこの『魔法陣複製ジオメトリック・スポーン』は多重魔法とは違う。これは、いったん展開した魔法陣を、詠唱なしで複製する特技だ。俺は一つの魔法陣を制御する感覚で、幾つもの同じ魔法陣が操れる。

 プログラミングの世界では決められた処理を複数並列で実行することをマルチスレッドプログラミングというが、これに近い。

 俺は、複製した複数の転送魔法陣を操作し、トオルに向けて次々と放つ。空間を切り裂くように、幾何学模様が走る。

 だが、やはり当たらない。理不尽なまでの速度差。

 トオルはこちらの意図を読み切っているわけでも、予知しているわけでもない。ただ純粋に、体の反応が、速い。

 俺がトオルに向けて魔法陣を飛ばした瞬間に、すでに奴の姿はそこにない。これでは何度打ち出したところで同じだ。

 もはや無意味な抵抗に思えるかもしれない。

 しかし、そこには一つの気づきがあった。


 ……トオルは、俺の魔法陣を消してこない。


 術者なら知っている。魔法陣に相応の魔法陣ををぶつければ、魔法陣を消滅させられる。おそらくトオルは……やらないのではく、できないのだ。

 確かに彼の身体能力は凄まじい。だが、おそらく魔力量はそれほど多くはない。

 ならば、俺は転送魔法陣の使い方を変えよう。攻撃ではなく、防御に。

 俺は転送魔法陣を引き寄せ、俺の周囲を多重に囲ませた。

 それを見たトオルが足を止めて笑った。


「魔法陣で囲ったのか。だーははは、ミノムシみたいだな」


 トオルは面白がるように笑う。だが、俺は応じない。

 笑っていられるのも、今のうちだ。奴が近づけない間に、俺は力を育てる。

 トオルを倒すためには、戦鎚ソードすら凌駕する、決定的な一撃が必要だ。山を砕く以上の威力が。

 トオルが鍛え抜かれた自身の体の力を使うなら、俺は自然法則の力を使おう。ありったけの魔王の力を注ぎ込んだ、魔科学の最強奥義。


「……至れ、アースベルのフェンスアール山。巨岩を導け」


 上空に転送陣が出現し、そこから巨大な岩塊が姿を現す。

 もちろん、これをそのまま落とした程度では、トオルは倒せない。だから俺は、その威力をさらに増幅させる。


「ホワイル──転送の門、百メートル上空に導け、此の地の巨岩 エンド!」


 上空に新たな転送魔法陣が展開される。

 巨岩が落下し、その魔法陣に触れた瞬間、再び高空へ転送される。

 そしてまた、落下。転送。落下。転送。

 トオルが呆れたように呟く。


「ユージ、それ……何やってんだ? 同じことの繰り返しじゃねえか?」


 俺は応えない。

 ただ黙々と、転送と落下のループを刻む。

 いま語るべきは、言葉ではなく、力の準備。


「つまらねぇな。近づけねぇってんなら……こういう手もあるぜ!」


 トオルは粉砕されたステージの瓦礫の一片を引き抜いた。

 拳大の石片を戦鎚ソードに突き刺し、そのまま豪快に振り抜く。砲弾のように石片が唸りを上げて飛んできた。


 まずい。あれを異世界に転送すれば俺の魔力が大きく削れる。

 そして、オート回避の発動もまずい。発動すれば、俺の体は吹き飛ばされ、魔法陣制御が維持できない。


「ロイナ! オート回避、停止してくれ!」


 ーー承知しました、マスター。


 俺は前方の魔法陣を移動させ、瓦礫を通過させる。


 ドゴッ!


「……がはっ」


 胸に鈍い衝撃。膝がぐらついた。

 それでも、俺は魔法陣を止めない。


「なんだ、ついに観念したのか?」


 トオルの声が挑発気味に響く。

 戦鎚ソードを振るい、次々と瓦礫を打ち出してくる。

 俺はすべて、受けた。魔法陣へ集中を絶やさないために。


 ーーマスター、警告。体力、三分の一を下回りました。


 ……分かってる。だが、ここで止めたらすべてが水の泡だ。

 トオルの超人の力で放たれた投てきは、大砲以上の威力がある。魔王の体力を確実に削り取っていく。


 ーーなんか一方的……

 ーー元首様、どうしちゃっただの?

 ーー飛び道具で攻撃なんて、トオルさんらしくない!


 まだだ……この身は盾。その向こうで、俺の血を代償に破壊の神が育っている。


「悪いな、これでとどめだ!」


 トオルが吠える。

 俺が開けた魔法陣の隙間へ、電光のごとき踏み込み。

 ……来い、トオル。

 この一瞬に、すべてを賭ける。

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