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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第三章 強国編

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『魔』の競技

 偉大なる大会(ギンヌンガ・カップ)、四日目――。

 まだ開始前の時間だが、観客席はすでに満員。前日の激戦の余韻を引きずりつつも、誰もが新たな一戦の行方を見守ろうとしている。

 本日行われるのは、『魔』の競技。術式と魔力のぶつかり合いだ。

 だが、控室の片隅では、その厳粛な雰囲気とはまるで無縁な者が、床に転がっていた。


「あー……今日も一段とだるいっす……」


 くしゃくしゃの寝癖に、半開きの目。やる気のない幼児にしか見えないウルは、情けない声をもらしている。


「でも、今日はあちしの試合の日っすからね……気合い、入れてかないとー……」


 そう言いながらも、動きは鈍い。準備をするわけでもなく、ただゴロゴロと転がっている。

 これは、勢いとキレのある配信時とはまったく異なる、彼女の素顔だ。


「まあー……ぶっちゃけ、勝敗なんてどうでもいいんすよね。大事なのは、視聴者数が伸びるかどうかっす」


 もそもそと立ち上がり、髪を軽く直しながら、ぶつぶつと続ける。


「どう面白くするか、それがプロデュース力っす。……考えるのもだるいっす。あと、今回はさすがに編集している余裕はないっすね。これは困った……」


 対戦相手の実力を気にしている様子はなく、配信コンテンツの完成度のことだけを悩んでいるようだ。彼女の本当の相手は、カメラの先にいるのだろう。

 その時、よく通る司会の声が会場に響きわたった。


「間もなく、本日の競技が開始となるのでございます!」


 ウルは、あくびを噛み殺しながら渋々立ち上がった。


「まー、やるしかないっすね……」


 そして彼女は、おもむろにカメラドローンを起動した。ピピッという起動音とともに、前髪をかきあげる。


 テーレーテレレッテー、テレッテッテーレ、テッテッテーテレッテッテー♪


 いつものジングルが流れると、その瞬間――


「どーもっ、ウルです☆」


 さっきまで死んだ魚のようだった目が、ぱっちりと輝いている。


「今日はついに、あちしの対決の日っすよ〜! みんな、応援してくれるかな?」


 配信越しに、コメントが次々と流れ始める。


 ーーキャー! ウル様きたーーー!

 ーーもちろん全力で応援! 頑張ってー!

 ーー最近CM多いんだよな……


 配信ドローンがウルを追いながら、観客の熱狂の渦へと向かっていった。


「それでは皆様、偉大なる大会(ギンヌンガ・カップ)四日目――」


 シレーヌの声が、試合場全体を包み込む。


「本日は、『魔』の競技でございます! 両国の代表者、前へ!」


 その声とともに、照明が一斉に落ちた。次の瞬間、戦場中央が淡い光に包まれる。光は二つの影を浮かび上がらせた。


「ついに……私の出番がきたにゃんね!」


 尻尾をぴんと跳ね上げ、笑みを浮かべたのは――アースベル代表、魔王・リリィ。


「じゃあ、みんないってくるね」


 続いて現れたのは、見た目は幼女、中身は人気配信者――サリオン帝国代表、ウル。

 その姿に、会場がざわついた。


「アースベル代表は――ヘルヴァーナ・リリィ様!」


 デルピュネの紹介が響く。


「かつて人々を絶望で包み込んだ、『冥府の女王』の異名を持つ、ヘルヘイム最強の魔王なのです。その種族は寅人、職業は大魔道。魔力と身体能力を兼ね備えた、かつて最強の名を欲しいままにした存在なのです!」


 ーー出たー魔王!

 ーー冥府の女王キタコレw

 ーーリリィ様推しです! 頑張ってぇぇ!


「そして、サリオン帝国代表――ウル・カリヤ様!」


 歓声がさらに高まる中、デルピュネはもう一人の代表に目を向けた。


「異世界より転移してきた配信者とのことで……ええと私は詳しくないのですが……有名らしいです。彼女のこの姿は転移時の副作用によるものとのことで、見た目は幼くても実力は未知数なのです。職業は魔法使い! さらに、とても強力な加護の持ち主とのことです!」


 ーーちっちゃいウル様が尊い!

 ーーえ? この幼女が魔王と戦うの!?

 ーーウル様はどんな姿でもやる時はやる女!


 配信のコメントが溢れる中、シレーヌが両手を広げて告げる。


「さて、両者が出揃ったところで、『魔』の競技のルールをご説明いたします!」


 背後に浮かぶ魔法モニターに、この試合のルールが映し出される。


「本競技は、魔法のみで行われる対決でございます。攻撃魔法、補助魔法、幻術、召喚、精神干渉――すべての魔法は使用可能。ただし、物理攻撃は禁止なのでございます。相手を直接殴ることや、武器の使用も禁止されておりますのでご注意を! そして、魔法を使って対象を倒す、または行動不能にすることが勝利条件となるのでございます!」


 一体どんな魔法が飛び出すのか。観客の期待とともに、試合の幕が上がった。


「それでは――『魔』の競技、開始でございます!」

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