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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第三章 強国編

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軍の競技の決着

 ハルトの能力と、その圧倒的な戦力差を理解した時、誰もがサリオン帝国側が優勢と考えた。

 しかし――


「……となれば!」


 ぴたりと沈黙を切り裂いたのは、ミーアの声だった。


「この難局を乗り越えるために、私たちが取るべき手は、これです……!」


 その手が空を切るように掲げられる。


「ハルトさんの指示が間に合わないほどの速さで、同時攻撃を仕掛けることです!」


 その言葉に、全員が息をのんだ。


「みなさん、総攻撃――お願いしますっ!」


 その瞬間、戦場が爆ぜた。

 寅人のサーベルとアムールが地を蹴り、風を裂くように突進する。鋭く研ぎ澄まされた視線はただ一人――帝国の指揮官、ハルトを捉えていた。

 同時に、後方では巳人のコブラとネイクが呪詛の詠唱を完了させていた。呪いの魔力が帝国側に降り注ぐ。

 これなら、さすがのハルトも指示が追いつかないはず――

 しかし、ソサーリによって展開された結界により、呪いの魔法らまるで煙を払う風のように一掃される。


「えっ!? また……っ!」


 ミーアが思わず叫んだその時、キャバリが音もなく前に出る。サーベルの大剣が振り下ろされる寸前、その軌道を見切って鋭く剣を差し込み――

 パリィ。

 高く澄んだ金属音と共に、大剣の勢いが逸れる。反動でバランスを崩したサーベルの懐に、ケイが鋭く突っ込む。


「ちっ!」


 サーベルは反射的に後方へ跳躍。だが――その瞬間を待っていたように、魔導士マギの詠唱が終わっていた。


暴風(ウィンドブラスト)!」


 魔法陣が閃光を放ち、巨大な竜巻のごとき風がサーベルを包み込む。空中で身動きが取れず、踏ん張る術もなく――


「ぬわぁぁ――!?」


 そのまま吹き飛ばされ、弧を描いて場外へ。


「おっとぉ! サーベル様、無念の場外退場です! ルールにより、再出場は不可能なのです!」


 場内がどよめく間もなく、ケイとキャバリは次なる標的――アムールへと攻撃の手を緩めない。

 左右から迫る刃。アムールは盾で応戦するが、剣撃の重さが違う。ハルトの加護を受けた二人の攻撃は、盾ごと彼を圧倒する。


「くっ……!」


 防戦一方のまま、アムールは剣撃に押しだされるように、徐々に後方へ。そのまま足を踏み外し、場外に転落してしまった。


「な、なんということだーッ! アムール様も場外! アースベルの主力・寅人戦士ふたりを一気に失ってしまったのです!」


 観客席から悲鳴と歓声が入り混じった声が飛び交う。


「どうして……ハルトさんの指示は、なかったはず……なのに、どうしてこれほどまでの力が――」


 呆然と立ち尽くすミーアの声が、戦場に虚しく響いた。

 その謎に、ハルト自らが答える。


「私の先導者の加護の効果を知れば、次に来るのは、反応が間に合わないような総攻撃だと予想していました」


 静かに、しかし自信に満ちた口調だった。


「ですので、その場合の対応は――この戦いが始まる前に、すでに全員に指示しておいたのです。指示は、必ずしもその場で出す必要はないのですから」


 ――完全に、読まれていた。


 すでにアースベル側の最大戦力である寅人の二人は退場。そしてミーアの石化邪眼も、鏡面の盾の前に封じられている。

 残された巳人たちの二人がかりの魔法も、ソサーリ一人の結界によって遮られ、届かない。

 帝国側は、鏡面の盾を前面に展開し、じりじりとアースベル陣地に迫ってきていた。

 このままでは押し切られる。

 ミーアは迷いの中で、ひとつの決断を下したようだった。


「皆さん……ごめんなさい!」


 彼女の瞳が光を宿し、次の瞬間――


『石化邪眼!』


 放たれた邪眼の光線が、なんと味方の巳人部隊とハンツを直撃する。仲間たちは石と化し、フィールドに沈黙が広がる。


 ――えっ、味方を石に!?

 ――ミーアちゃん、ストレスでおかしくなっちゃったの?


「……す、すみません……でも……今はこうするしか、なかったんです……! 解放――」


『ヒュドラ!』


 ミーアの身体がまた別の異形の姿へと変化する。毒蛇――ヒュドラ形態。

 その口から、膨大な猛毒の塊が放たれた。

 それは帝国軍の鏡面盾に直撃し、音を立てて金属を融かし始める。


「……これ以上は、私に近づけませんよ。近寄ったら、毒で全滅ですから……!」


 そしてヒュドラの毒霧が周囲を覆い始める。味方を石にしたのはこの毒霧の中でも被害を与えないためだろう。

 味方も巻き込んだ切り札を放ったミーアに、会場がざわついた。

 ――だが、


「この競技は団体戦。単独になった時点で、勝敗はついています」


 ハルトは動じなかった。


「マギさん、毒を吹き飛ばしてください」


「はっ! 暴風(ウィンドブラスト)!」


 魔法が放たれ、渦巻く暴風が毒の霧を一掃する。ミーアは風の強さに思わず目を閉じた。


「ソサーリさん、動きを封じてください」


「御意。束縛(バインド)!」


 魔力の鎖がミーアの身体を拘束。動きを奪った瞬間――


「ケイさん、シエルさん、バクラさん、今です!」


 その指示と共に三人が走り出す。

 盾を放り出したシエルとバクラが両腕を組み、土台となる。

 その上にケイが飛び乗り、跳躍。シエルとバクラの筋力を活かして放たれた大ジャンプ。

 ケイの身体が、ミーアの頭部へと一直線に向かう。

 ――そして。


「……っ!」


 ミーアが目を見開いた時、その冠は、すでにケイの手の中にあった。

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