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旅立ちの決意

 無邪気に笑うミーアの姿を見つめながら、レイアは少し強い口調でこう言った。


「皆、巳人を恐れているようですが、私にはこの子が悪い子には見えません。普通の幼児と同じです。帝国兵の非道な行いは間違っています」


 彼女の言葉に、強い信念が込められているのが感じられる。そして彼女は続けた。


「それにしても、今回は少し驚きました。リバティさん、意外と行動力があって優しいんですね」


 普段は金のことばかり考えていると思われているのだろう。だが俺も、人並みの道徳心くらいは持っている。


「でも、これから少し困りますね。もしミーアちゃんが街で巳人だと分かってしまうと、きっと騒ぎになるでしょう。帝国兵も探しに来るかもしれません」


 レイアがそう言うのも無理はなかった。街の人々は巳人に対して敏感で、恐れを抱いている。しかし、だからと言って、ミーアをずっと家の中に隠しておくわけにもいかない。可哀想だ。

 そこで、俺はある決意を固めた。その決意をレイアに話すと、彼女は驚いた表情を見せたが、好意的に捉えてくれたようだった。


「すみません、私はまだここでやるべきことがあるので、同行はできませんが、リバティさん、あなたを応援します。私にできることがあれば、いつでも連絡してください」


 レイアはまっすぐに俺の目を見つめてそう言った。初めて会ったとき、彼女は強くて冷たい印象を感じていたが、今はその強さだけでなく、深い優しさも感じられる。


 レイアに感謝と別れを告げた後、ふと気づいたことがあった。ミーアを運んでいる最中、長時間毒性のある血液に触れていたせいか、俺の『毒耐性』の加護が進化し、『毒耐性(大)』になっている。以前よりも、毒に対する耐性が強化された感じだ。微妙な加護だと思っていたが、鍛えればそれなりに使えるかもしれない。


 [名前] リバティ・クロキ・フリーダム

 [レベル] 20

 [クラス] ヒト

 [職業] 魔道具師

 [体力] 120/120

 [魔力] 90/90

 [魔法] 小火炎

 [加護] 毒耐性(大)


   ◇ ◇ ◇


 翌日、俺はこれまで世話になったオージンさんとリッグさんに感謝の気持ちを伝え、別れを告げた。短い時間だったが、彼らには本当に世話になった。そして、ミーアを連れて、静かに旅立った。俺から大切なもの(金)を奪ったサリオン王国には、もういられない。ミーアの身の安全も考え、共にこの国を離れることに決めたのだ。街を出るまで、ワンピースの裾からミーアの蛇の尾が少し覗いていて、俺はそれが気になってドキドキしながらも、何とか気付かれずにやり過ごした。

 そのままサリオン帝国をこっそり抜け出し、俺たちは西へ西へと進み続けた。かなり離れているが、海沿いに人の住む土地があるらしい。周囲は広がる野原、或いは深い森。時に天気が悪くなっても俺たちは進み続ける。

 しかし、中身はさておき、俺たちの見た目は8歳と5歳の子供の二人旅。迷子かお使い途中にしか見えない。そんなわけで、道中、何度か盗賊や人攫いに遭遇したこともあった。だが、レベル20の俺にとってそんな連中はどうということはなく、蹴散らした。それよりも大きな問題は、空腹だった。食料は持ってきていたが、幼児の足は思っていたより遅く、やがて尽きてしまった。そこでやむを得ず、野原や森に生えている食べられそうな野草を見つけ、丁寧に洗ってから、小火炎(リトルフレイム)の魔道具で火を起こし、持参した食用油と塩で炒めてみる。見た目はあまり良くないが、意外にも食べられた。香りは香ばしく、美味しいわけでもないが、腹の足しには十分だ。中にはたまに毒を含む野草も混じっていたようだが、俺の『毒耐性(大)』の加護により問題はない。毒の血液を持っているミーアも、毒には問題なさそうだ。

 そんな中で嬉しい発見があった。野草を採っていると、ふと目にした小さな白い花に見覚えがあった。それは、ジャガイモの花に似ていた。急いで地面を掘り返すと、見事にジャガイモに似た丸いイモが顔を出したのだ。そのイモを焼いて食べると、それはもう格別に美味かった。口の中でホクホクと広がる甘みと豊かな香り。久しぶりの満足感に、思わず頬が緩んだ。


「お兄ちゃん、このおいも、おいしいね」


 ミーアも大満足だ。食べ残したイモを大切にカバンにしまい込んで、再び歩き出す。俺たちはさらに西へ、西へ、てくてくにょろにょろ進んでいく。レベル20の俺はさておき、幼いミーアは歩き続けられるか心配していたが、蛇の尾を持つ彼女は歩くのではなく蛇行しているので、あまり疲れないそうだ。

 さらに何日か歩き続けると、海にたどり着いた。広がる青い海に、心が少しだけ癒される。波の音が静かに響き、潮風が心地よく肌を撫でる。そのまま海岸沿いに足を進めると、遠くに小さな集落が見えてきた。煙が立ち上る家々や、漁船が停められた小さな港が見える。俺たちは期待を胸に歩みを進めた。

春の七草も食べられますし、意外と食べられる野草はあります。秋はシイの実なども美味しいですよ。


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