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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第三章 強国編

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マッキィのテーマパークと魔王城

 ヴァナヘイムとの戦いから、もう一年が経った。

 魔王となった俺は、その肩書きにふさわしい力の使い方の訓練と、魔王向けの魔道具の開発に取り組んでいた。できることの幅は飛躍的に広がったが、使いこなすにはそれなりの工夫が要る。

 そして、俺たちの国、アースベルの人口も順調に増えていた。今の人口は――


子人(ねじん) 648人

申人(しんじん) 552人

寅人(いんじん) 380人

巳人(みじん) 169人

酉人(ゆうじん) 20人

戌人(じゅじん) 1人 (エルマ)


 合計で、1770人となった。

 特に子人の増加は顕著だった。子人の国からはさらに多くの移民が来てくれていて、それに加えて出生率も高い。既に申人の数を超えてしまった。

 また、酉人たちもアースベルの住民に加わった。あの神の軍勢の一部だった者たちが、戦いの後、アースベルの空気を気に入って、住み着いたのだ。数はそれほど多くはないが、自由な気質の酉人たちはこの土地にすぐ馴染んだ。

 今のアースベルには、六種類の種族が共に暮らしている。

 実は、これは、本当に稀なことだ。

 この世界の街は、たいてい一種族か、二種族程度で構成されている。外見や身体能力、文化の違い、それを理由に線を引いて、棲み分けているのが普通だった。でも、俺たちは違う形を目指している。

 もちろん、まだ課題は山ほどある。子人たちは寅人に苦手意識を持っているし、サリオン帝国から移住した者たちは巳人を恐れている。

 それでも、みんなそれぞれに、この国の魅力を見つけて暮らしている。


 そして、その日。アースベルに、もうひとつの観光名所が誕生した。

 子人の天才魔道具師、マキアート・デズミー――通称マッキィが、ついに手掛けていたテーマパークを完成させたのだ。


「やあ、リバティ。ボクの夢の国、ついに完成だよ!」


 マッキィが満面の笑みで俺に手を振る。

 澄んだ空の下、陽気な音楽が流れ、カラフルな塔や塔の間を滑空するように配置されたレール、くるくると回る巨大な輪。

 魔法と俺の科学が絶妙に融合したアトラクション群は、まるでおとぎ話の中に足を踏み入れたかのような風景をつくり出していた。

 彼女に頼まれて、俺の方でも観覧車の概念とか、ジェットコースターっぽい動力構造とかを図にして渡していたけど――これは、想像以上の出来栄えだった。

 このテーマパークは、国名と彼女の名前を合わせてこう名付けられた。


 アースベル・デズミーランド。


 中央にはひときわ目を引く、塔のシンボル……いや、城がそびえていた。


「そうそう、リバティ。君の魔王城もここに用意しておいたよ! 明日からそこに住んでね!」


「……って、え?」


 いきなり過ぎるだろ。しかも、完全にアトラクションの一部になってるじゃないか。


「この魔王城の存在が、デズミーランド全体のイメージに繋がってるんだ。そして、そこに本物の魔王が住んでいたら、より魅力的でしょ?」


 俺、これからテーマパークに住むのか……でもまあ、見てみれば案外ちゃんとしている。

 城は黒曜石のような深いツヤのある外壁に、ややシュールな装飾が施され、尖塔には魔力で光る紋章が浮かんでいる。

 その外観は禍々しさというより、威厳とロマンが同居していた。ま、俺がここに常駐するかどうかはさておき、魔王城があるのも悪くはない。


 その日から、アースベル・デズミーランドは、俺たちの国の『もうひとつの顔』になった。

 各種族の住民たちが、自分たちの故郷に宣伝してくれたおかげで、様々なヒトの種族が訪れてくれる。

 その日も、デズミーランドにはたくさんの来場者が訪れていた。観覧車の前では子人の親子が手をつないで順番を待ち、フードトラックの前では寅人のカップルが焼き菓子を買っている。特に近郊のサリオン帝国からは、多くの申人が訪れている。

 俺は魔王城のテラスに座って、その光景を眺めていた。

 ここは、ただ楽しいだけでなく『種族の違いを越えて一緒に笑える』そんな新しい夢の国なのだ。

 のどかな眺めにふと考えながら、俺は平和な日常を満喫していた。


 そんな俺の平和ボケを見事に打ち破ってくれたのは、サリオン帝国から来たハルトだった。

 いつもは落ち着いた眼差しの彼が、その日は珍しく、焦りを隠せない表情をしている。


「リバティさん!」


 急ぎ足で駆け寄ってきた彼は、肩で息をしながら俺の前に立つと、あたりを警戒するように周囲を見回し、声を潜めた。


「サリオン帝国で大変なことが起きました。……ここだけの話として聞いてください」


 その目は真剣だった。いつものような余裕は感じられない。ハルトは覚悟を決めたように切り出した。


「――オージンさんが、行方不明なんです」


 その言葉を聞いた瞬間、俺の背中を冷たいものが走った。

 平和の象徴とも言えるような、サリオン帝国の現皇帝。そして俺の大恩人。そんなオージンさんに一体何が起きたのだろうか……

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