第57話 氷結の洞窟
「…ここが…氷結の洞窟……?」
俺は、目の前に広がる、巨大な洞窟の入り口を、見上げて、呟いた。
洞窟の入り口は、大きく口を開けており、そこから、冷気が、吹き出してくる。肌を刺すような寒さに、俺は思わず身震いした。
空気中に、白い霧が立ち込め、辺り一面を、白く染めている。視界は悪く、洞窟の奥は、深い闇に包まれている。
洞窟の壁は、分厚い氷で覆われており、所々に、鋭い氷柱が、突き出ている。氷柱は、まるで巨大な牙のように、鋭く輝き、洞窟全体に、威圧感を与えている。
「ああ、ここが氷結の洞窟じゃ……」
店主は、頷いた。
「この洞窟には、アイスリザードだけでなく、様々な、氷属性の魔物が、生息しておる。気を付けるんじゃぞ」
店主の言葉に、俺は、身が引き締まる思いがした。
「よし!行くぞ!フィン、ブルー、スカイ、ガマ!」
俺は、仲間たちに、声をかけた。
「おう!」
フィンは、やる気満々だ。
「…キュイ!」
スカイは、洞窟の中を、興味深そうに、見上げている。
「…クゥン…」
ブルーは、少し不安そうに、俺の足元に、すり寄ってきた。冷気に震えているようだ。
「…クゥ…」
ガマは、俺の肩に乗って、洞窟の中を、キョロキョロと見回している。
俺たちは、店主を先頭に、氷結の洞窟の中へと、足を踏み入れた。
洞窟の中は、ひんやりとしていて、静まり返っていた。空気は冷たく、肺が凍りつくような感覚がする。
足元は、氷で覆われており、滑りやすい。一歩踏み出すたびに、キュッキュッという音が響き渡る。
天井からは、鋭い氷柱が、無数に、垂れ下がっている。その鋭利な先端は、まるで、今にも落ちてきそうだった。
時折、どこからともなく、水の滴る音が、聞こえてくる。その音だけが、静寂を破り、洞窟内に響き渡る。
「セプティム君、魔界のダンジョンは、初めてじゃろう?」
店主が、俺に、声をかけた。
「D級の昇格試験を受けた際に呪われし迷宮に1度だけ」
俺は、答えた。
「そうか。魔界のダンジョンは、危険な場所じゃ。魔物だけでなく、トラップや迷路も、多く存在する。油断は、禁物じゃぞ」
店主は、警告してくれた。
「わかりました。気をつけます……」
俺は、気を引き締めた。
俺たちは、洞窟の中を、慎重に、進んでいく。
しばらく歩くと……
フィンが、足を止めた。
「セプティム、見てみろ」
フィンが指差す先には、氷の床に、奇妙な足跡が、残されていた。
「…これは……?」
「…アイスリザードの足跡だ…」
店主が、答えた。
「近くにいるようじゃな……」
店主の言葉に、俺は、緊張が走った。
その時……
洞窟の奥から……
重々しい足音が、聞こえてきた。
ドスン…ドスン…
その音は、徐々に、大きくなっていく。
「…来るぞ……!」
店主が、低い声で、言った。
俺たちは、息を潜め、身構えた。
次の瞬間……
前方に、大きな空間が、現れた。
空間の中央には、凍った湖があり、その周りには、氷の柱が、林立している。
そして……
湖の畔に……
「…あれは……!?」
俺は、目を疑った。
そこにいたのは……
巨大なトカゲの姿をした魔物だった。
その体は、青白い氷の鱗で覆われており、鋭い爪と牙が、光っている。
背中には、大きな氷の翼が生えており、口からは、白い息を吐いている。
アイスリザード……!
それは、まさに、氷の魔獣だった。
「…ギィィィャァァァ……!!」
耳をつんざくような、咆哮が洞窟内に響き渡る。アイスリザードは、鋭い眼光で俺たちを睨みつけると、勢いよく湖から飛び出した。
巨大な体が、氷の床を砕きながら、こちらに向かって突進してくる。
「…まずい!戦闘準備だ!」
俺は、仲間たちに叫びながら、右手の魔力増幅指輪に力を込めた。指輪が熱を帯び、体中に魔力がみなぎる。
「…フィン、頼む!」
「…ああ、任せろ!」
フィンは、古代魔法の書物を素早くめくり、呪文を唱え始めた。
ブルーは、唸り声を上げながら、氷の刃を生成し、戦闘態勢に入る。スカイは、不安そうに鳴き声を上げながらも、俺の頭上を旋回し、動きを警戒している。ガマは、俺の肩にしがみつき、小さな体で震えている。
アイスリザードが、あと数歩で俺たちに近づいている。
今にも、激しい戦いが始まろうとしていた。




