第53話 魔法道具屋の店主
図書館の司書に教えてもらった魔法道具屋は、ギルドから少し離れた、裏通りにひっそりと佇んでいた。店の外観は古びていて、一見、普通の民家のように見える。しかし、よく見ると、窓ガラスに、かすかに魔力が込められているのがわかった。
「ここが、魔法道具屋……?」
俺は、少し不安を感じながら、フィンの背中を押して、店の中へと入った。
店の中は、薄暗く、埃っぽい匂いがした。壁際には、所狭しと、棚が並べられており、様々な魔法道具が、雑然と置かれている。奇妙な形の杖、光る水晶玉、怪しげな薬瓶……どれもこれも、不思議な魔力を放っている。
「いらっしゃい……」
カウンターの奥から、嗄れた声が聞こえた。
カウンター越しに、店主の顔が見えた。
店主は、小柄で痩せた老人で、顔には深い皺が刻まれている。鋭い眼光と、長い白髭が、印象的だ。その目は、まるで、客の心を見透かすかのようだった。
「何か、探しているものは、あるかね……?」
店主は、鋭い眼光で、俺たちを見つめた。
「あの……Bランク昇格試験に向けて、魔法道具を探しているんですが……」
俺は、少し緊張しながら、店主言った。
「Bランク昇格試験か……なかなか、骨が折れる試験じゃな…」
店主は、小さく、頷いた。
「実技試験では、どんな魔物が、出てくるんでしょうか……?」
俺は、恐る恐る、店主尋ねた。
「それは、毎年、違うんじゃよ。だが、強力な魔物が、出てくることは、間違いない。上位オーク、吸血鬼、狼男……そういった魔物にも、対応できる、魔法道具が、必要じゃろう」
店主の言葉に、俺は、改めて、Bランク昇格試験の、難しさを、実感した。
「何か、オススメの魔法道具は、ありますか?」
俺は、店主の知識に、期待を込めて、尋ねた。
「そうじゃな……君には、これが、オススメじゃ」
店主は、カウンターの下から、小さな箱を取り出した。木製の箱は、年季が入っており、細かい彫刻が施されている。
箱を開けると、中には、銀色に輝く、指輪が、入っていた。指輪からは、かすかに魔力が感じられ、俺は思わず息を呑んだ。
「これは?」
「『魔力増幅指輪』じゃ。これを、はめると、魔力が、増幅され、魔法の威力も、上がる。使いこなせれば、Bランク昇格試験でも、強力な武器になるじゃろう」
店主は、指輪の効果を、説明してくれた。
「すごい……!」
俺は、指輪に、目を輝かせた。しかし、同時に、不安も感じていた。こんな強力な指輪、本当に俺が使いこなせるのだろうか……?
「でも、魔力増幅ってことは、魔力の消耗も激しくなるってことですよね?使いこなせなかったら、逆に、危険なんじゃ……」
俺は、不安を口にした。
「その通りじゃ。魔力増幅指輪は、諸刃の剣。扱いを間違えると、命を落とすこともある」
店主は、真剣な表情で言った。
「セプティム、でも、この指輪があれば、もっと強力な魔法が使えるようになるんだよ!試してみようぜ!」
フィンは、目を輝かせて言った。
「スカイ、他の魔法道具も見てきてくれないか?もしかしたら、もっと、セプティムに合うものがあるかもしれない」
俺は、スカイに頼んだ。
「キュイ!」
スカイは、元気よく返事をして、店内を飛び回って、他の魔法道具を探し始めた。
「ガマ、お前は、店主の匂いを嗅いでみてくれ。何か、手がかりになるものがあるかもしれない」
俺は、ガマに指示を出した。
「クゥ……」
ガマは、頷くと、カウンターの奥へ、鼻をくんくんさせながら近づいていった。
「フィン、お前はどう思う?この指輪、俺に合うかな…?」
俺は、フィンに意見を求めた。
「確かに、強力な魔法道具だけど……セプティム、お前は、もっと慎重になった方がいい。この指輪は、リスクも大きい。他に、何か、もっと安全な魔法道具があるかもしれない」
フィンは、心配そうに言った。
その時、スカイが、興奮した様子で、戻ってきた。
「…キュイ!キュイ〜!」
スカイが持ってきたのは、先端に大きなルビーがついた、銀色の杖だった。
「…これは…?」
「『火炎増幅杖』だって!火炎魔法の威力を、大幅に上げてくれるらしいよ!」
フィンの説明に、俺は、興味を持った。
「確かに、魅力的な杖だな……でも、俺は、火炎魔法だけじゃなく、他の属性の魔法も使いたいんだ……」
俺は、悩んでいた。
その時、ガマが、俺の足元にすり寄ってきた。
「…クゥ…クゥ…」
ガマは、何かを伝えようとしているようだ。
「ガマ、どうしたんだ?」
俺は、ガマに尋ねた。
「ガマは、店主の匂いから、彼がかつて、強力な魔物使いだったことを感じ取ったようだ。そして…彼は、その力を制御できずに、多くのものを失ってしまったらしい…」
フィンの説明に、俺は、驚いた。
「店主は……その過去を、後悔しているようだ。だから、君には、同じ過ちを、繰り返してほしくないと思っている…そう、ガマは言っている」
フィンの言葉に、俺は、店主の鋭い眼光の意味を、理解した。
「君には、試練を与えよう。もし、君が、その試練を、乗り越えることができたら……この指輪を、譲ってやろう」
店主は、真剣な表情で、言った。
「試練?」
「ああ。店の奥に、私が作った、特別な訓練場がある。そこで、君の実力を見せてくれ。もし、君が、魔力増幅指輪を使いこなせるだけの、力と、心の強さを持っていると、私が認めたら…この指輪を、譲ってやろう」
店主の言葉に、俺は、身が引き締まる思いがした。
試練……
一体、どんな試練なんだ?




