第48話 禁断の書
ギルドマスターから託された本は、ずっしりと重く、俺の心を不思議な高揚感で満たしていた。この中に、冥府の使徒を倒す鍵、そして世界の運命を左右する秘密が隠されているのかもしれない…。
「…見てみろよ、セプティム!この本、表紙に何も書かれてないのに、すごい魔力を感じるぜ…!」
宿に戻った俺たちは、早速、本を広げてみることにした。フィンは、興奮を抑えきれない様子で、ページをめくろうとする。
「…おい、フィン、ちょっと待て。乱暴に扱うなよ」
俺は、フィンの手を軽く制した。この本は、何百年も前から、ギルドに大切に保管されてきたものだ。
ページは、厚く、少し黄色ばんだ羊皮紙でできており、インクの染み込んだ文字からは、古の魔力が感じられた。
「…うわっ…これは…!」
恐る恐るページをめくると、そこには、見たこともない文字で、びっしりと文章が書かれていた。ところどころに、奇妙な図形や紋章が描かれており、まるで、この世のものではないような、不思議な力を感じさせる。古代の魔力が、俺の指先を刺激する。
「…これは…古代魔文字だ…」
フィンの声が、緊張で、かすかに震えている。
「…古代魔文字…?」
「…ああ…もう、何百年も前から、使われていない、古代の魔族の文字だ。俺は、少しだけ、読める…」
フィンは、そう言うと、真剣な表情で、ページに書かれた文字を、一つずつ、ゆっくりと、読み上げていった。
「…『七つの大罪』…『傲慢の魔神ルシファー』…その姿は、漆黒の翼を持つ、巨大な竜…その瞳は、燃え盛る炎のように赤く、全てを焼き尽くすような魔力を持つとされる…」
フィンの言葉に合わせて、俺の頭の中に、巨大な竜の姿が浮かび上がる。想像するだけで、背筋が凍るような、圧倒的な威圧感。
「…『嫉妬の魔女リリス』…その姿は、人間の女性に似た姿を持つが、その美しさは、見る者を惑わし、心を蝕む…彼女は、強力な幻術を使い、人の心を操るとされる…」
美しい魔女…しかし、その美しさの裏には、底知れぬ闇が、潜んでいるのかもしれない…。
「…『憤怒の巨人ベヒーモス』…その姿は、山のように巨大で、大地を踏み鳴らすだけで、地震を引き起こすほどの力を持つ…その怒りは、全てを破壊し尽くすまで、収まらないとされる…」
巨人…一体、どれほどの大きさなのか?想像するのも恐ろしい…。
「…おい、セプティム…これを見てくれ…」
フィンの指差す先には、一輪の花の絵が描かれていた。
しかし、それは、決して、美しいだけの、花ではなかった。
妖艶なまでに美しい、その花びらからは、毒々しいほどの、甘い香りが、漂ってきそうで、見る者を、惑わすような、不思議な力を感じさせる。
「…これが…色欲の妖花…アスモデウス…か…」
俺は、その絵から、目を離すことができなかった。七つの大罪…それは、想像を絶する力を持つ、恐るべき存在だった。
「…フィン、罪の器って、一体どんなものなんだ…?本当に、こんな魔物たちの力を封じ込めることができるのか…?」
俺は、不安を隠せないまま、フィンに尋ねた。




