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転生インプ、異世界で最強魔物メーカーへの道  作者: エピファネス
第一章 魔物メーカー、ルナリアに立つ
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第4話 ダンジョンの主? その実力

「ダンジョンの主…?」


 俺は、怪訝そうな顔で、フィンと名乗るインプを見つめた。


 確かに、この廃墟と化したダンジョンにも、まだ主がいたらしい。


 しかし、目の前の小柄なインプが、この広大なダンジョンを支配しているとは、にわかには信じがたい。


「おいおい、その目はなんだい? 俺様の実力を疑ってんのか?」


 フィンは、俺の視線に気付いて、不機嫌そうに言った。


 その声は、ダンジョンに響き渡る轟音ではなく、ひび割れた壁の隙間を縫う風の音のように、どこか頼りない響きだった。


「いや、その…ちょっと意外で…」


 俺は、言葉を濁しながら、フィンの装備に目をやった。


 黒曜石で装飾された革鎧は、確かに高級そうだが、よく見ると、所々に傷や汚れが目立つ。


 腰に下げられた剣も、鋭く研ぎ澄まされているとはいえ、柄の部分は使い込まれて色落ちし、鞘には埃が積もっていた。


「ふん、まあ、俺様のことだからな。きっと、とんでもなく強い魔物を従えて、このダンジョンを支配してるんだろ? 怖いか?」


 フィンは、勝ち誇ったように胸を張った。


 …いや、多分、違う。


 俺は、直感的にそう思った。


 だって、このフィンってやつ…。


 俺と同じ匂いがする。


 それは、自信のなさや、虚勢を張ってばかりの、弱者の匂いだ。


「なぁ、フィン。お前、本当は、このダンジョンで、一人で暮らしてるんじゃないのか?」


 俺は、核心をつく言葉を口にした。


 フィンの動きが、一瞬止まった。


 鋭かった瞳の奥に、動揺の色が浮かび、強張っていた表情が、わずかに崩れる。


「な、なっ…!?」


 フィンは、言葉を失って、俺を見つめた。


 その反応を見て、俺は確信した。


 こいつ、俺と同じだ。


 孤独を恐れ、虚勢を張って、自分の弱さを隠しているんだ。


「なぁ、フィン。俺、魔物を作れるんだ。最強の魔物メーカーになるのが夢なんだ」


 俺は、フィンの瞳をまっすぐに見つめて、言った。


 最強の魔物メーカー。


 それは、俺が、魔導裁判所のあの薄気味悪い空間に迷い込んで以来、心の支えにしてきた、たった一つの希望だった。


「もし、お前がよければ、一緒に最強の魔物を目指さないか?」


 フィンの瞳が、大きく見開かれた。


 その瞳の奥には、驚きと、そして、かすかな希望の光が宿っていた。


「…最強の魔物、か…」


 フィンは、呟くように言った。


 彼の視線は、俺ではなく、床に散らばった、スライム生成の失敗作へと向けられていた。


「お前、魔物メーカーって、本当にできるのか?」


「ああ、できる…はずだ。まだ、この世界の魔物生成の仕組みがよくわかってないみたいで、ちょっと失敗続きだけど…」


 俺は、少し恥ずかしそうに答えた。


 フィンは、しばらくの間、黙って考えていた。


 そして、ゆっくりと顔を上げると、ニヤリと笑って見せた。


「面白そうじゃねぇか。いいぜ、付き合ってやるよ」


 フィンの言葉に、俺は思わずガッツポーズをした。


 最強の魔物メーカーへの道は、一人よりも、二人の方が、きっと楽しいに違いない。


「でも、その前に…」


 フィンは、俺の肩をポンと叩くと、基地の奥へと歩き出した。


「腹減ったな。何か、美味いもん、作ってくれよ」


 彼の後ろ姿は、どこか頼りなさげで、それでいて、どこか温かさを感じさせた。


 俺は、そんなフィンに、不思議な親近感を覚えた。


 こうして、イケメンインプ、セプティムと、ダンジョンの主(自称)フィンとの、奇妙な共同生活が始まったのだった。

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